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ドライブに行こう

自分の部屋で何かしらの作業をするときはダイニングとして設計されているスペースに置かれた作業机を使い、壁に向かってPCを開いていることが多い。画面の他に見えるのは机に置かれた飲み物のほかは汚い字で走り書きされたメモ書きくらいで、ほとんどは壁を見つめるだけになる。少し目を逸らせば外の景色が見えるが、東京23区の郊外のこの場所からだと埼玉との境にある小高い丘くらいしか目立ったものは見えない。たまにすっきり晴れた冬の朝には富士山も少しだけ見えるが、自分が幼い頃から見てきた、明石海峡と淡路島とそこにかかる橋と比べると、景観の悪さは否めない。

弟がドライブに誘ってくれたので、素直に見たかった海に行くことにした。東京の西側から行きやすい手頃な海辺は浜松町の竹芝埠頭や少し足を伸ばして横浜や江ノ島など神奈川県の相模湾沿岸だろうが、あえて千葉の稲毛海岸へ向かった。せっかく車で行くなら、車の方が行きやすい場所がよかったからだ。免許を取って半年経った彼は一度神戸の実家まで車で帰るなど、運転には慣れていた。車は少し古い年式の国産のクーペで、5MTだった。久しぶりにマニュアル車を見かけた。一応、私も限定なしの免許を持っているので、昼食を取ったのち運転させてもらうしてことにした。

若干勾配のある駐車場で交差点間際に出口があることから、公道に出るときはとても緊張した。久しぶりのクラッチ操作に慣れず、過剰気味にエンジンをふかしてしまったり、速度とギアの感覚が抜けていて渋滞で減速しながら走るときにギアが入らなかったり、単純に発進しようとしてエンストしかけるなど、とにかくヒヤヒヤした。免許を取ってからAT、CVTの車は頻繁に運転してきたので車幅感覚には比較的自信があり、それなりにまともに車は動かせると思っていたものの、そもそも動かすことができないとなると一気に自信がなくなった。帰り道は運転してもらった。

大学生の頃に免許を取ったときは、問題なく運転できていて、教官からもあまり叱られたことがない気がしたので、この数年で操作や感覚を思いきり忘れていたのだと思う。それでもしばらく経って慣れてくると、徐々に昔やっていた感覚が戻ってきて、スムーズに動けるようになった。

稲毛海浜公園のヨットハーバーの駐車場に車を止めて、海沿いをしばらく散策した。曇っていたのであまり遠くまで見渡すことはできなかったが、東京のビル群と思われる影と木更津あたりの工場らしい姿は変わらずにあった。これからの時期は海水浴などで海辺へ出かける人も多くなり、特に江ノ島なんかは非常に混雑して、テレビなどでも取り上げられることが多いが、稲毛海岸はそこまで混むことがないので人混みが嫌いだけど海が好きな方にはおすすめのスポットである。

普段地下鉄に乗って通勤をしており、車に乗るときは基本的に自分が運転するので、他人に運転してもらうというのも少し新鮮であった。また、車の運転は普段何気なくやっているが、MTになるとそれなりに体力がいる。特にクラッチを踏む左脚がだんだんと疲れてくる。運転しなくて良いとなるととても気が楽で、帰り道くらい助手席で缶ビールでも開けてもよかったなと振り返りつつ、それはまた今度のお楽しみに取っておくことにする。

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