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アイルランド抵抗歌

アイルランドというと、どんなイメージがあるだろう?ギネスビール、ウイスキー、ケルト文化。特にアイルランドの音楽は日本人にも馴染みが深い。バグパイプ、ティンホイッスル、バンジョーを使用したどことなく懐かしい音楽は(必ずしもケルト民族の伝統的音楽というわけでなくても)ゲームやアニメ、映画等で多用されている。アイルランドやスコットランドの音楽は日本人にとっても耳触りが良い。蛍の光はスコットランド、庭の千草はアイルランドの曲である。

日本人にとってどことなく懐かしい、牧歌的で陽気なイメージのあるアイルランドの音楽だが、あまり知られていない側面もある。それが抵抗歌(Rebel Song)だ。

アイルランドの歴史上、特に有名なのがジャガイモ飢饉だろう。アイルランドの人々の主食であったジャガイモの疫病により大飢饉(Great Famine)が起こり、アイルランドの人口は餓死や移住を余儀なくされたことで半減し、未だに飢饉以前の水準に回復していないと言われる。なぜこんな事態になったのか。つまりはイギリス(イングランド)の貴族がアイルランドを半植民地として扱い、アイルランド人民を農奴の如く働かせて、疫病や飢饉、貧困対策を怠り、飢饉が発生しても残り少ない農作物を輸出させ続けた。日本でいえば時代劇の悪代官のような振る舞いでアイルランドから収奪を続けたのである。

それ以前からアイルランドは常にイングランドの支配下にあり、特にアイルランドに元々多いカトリック信者はイングランドから移入したプロテスタントに迫害されていた。そして散発的にアイルランド人による反乱が起こっては鎮圧された。迫害と隷属と反乱の歴史がアイルランドにはある。

しかしアイルランド人、特にカトリックを中心とする、アイルランドの自由を求める人々は不屈の闘いを続けている。今でもIRA(アイルランド共和軍)は有名だ。支配と分断と闘いの歴史の中で生まれたのが抵抗歌である。

内容は反英感情であったり、IRAやアイルランドの独立、統一、自由のために闘う者への賛歌、戦死者を悼む挽歌、戦士の心情など。新旧あるが、日本人が聴いても耳に馴染むポップなメロディーのものもあり、歌詞は過激だが不条理と闘う者の心意気がよく伝わってくる。その点で日本の軍歌とは全く違う。日本の軍歌は完全な支配者の側の視点が、または軍歌とは思えない陰惨なものか、両極端である。

僕はアイルランドの抵抗歌を聴き、歌う度に思う。抑圧され虐げられたものにしか、その気持ちは分からないし、また真に自由を求め闘うことの意義も分からないだろう、と。

次回から僕の好きな抵抗歌を、稚拙ながら和訳と共に紹介したい。

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