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やがて君になるアナリーゼ

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『や君外沙て』

『や君外沙て』

『やがて君になる外伝ノベライズ 佐伯沙弥香について(入間人間)』

読了して思うのは、「七海」と「佐伯」は交わらないという、"自然の摂理"にも似た感慨だった。もしも言葉にするなら、七海燈子は「唯我独尊」、佐伯沙弥香は「融通無碍」。やり方は違えど、それぞれがそれぞれに、"個"を引き受ける強さを持っている。持ってしまっている。佐伯の七海を想う眼差しは変わらず、七海はそれに"応えない"と応えることで、「

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~やが君~ 感想戦

~やが君~ 感想戦

書こうか、書くまいか迷ったもの、流れにうまく収められなかったものなど書いてみます。なお、言葉にするのは時間が掛かる方だと自覚します。"初期衝動を失わない範囲で"書き換えることを厭いません。ブックマークの際には、ご海容ください。では以下、"言わば"~じゃない方を。(※ネタバレ注意)

原作を隈無くみると、随所にメタファーが散りばめられているのが、よく解ります。"侑"の紋章である『クラゲ(メンダコ?)

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"天窓" ~やが君②~

『やが君』を貫く"通奏低音"。それは『贖罪(=加害者意識)』。
この作品に加害者はいない。だがそれは"優しさに満ちた世界"とは違う。ここに在るのは『被害者』のみである。加害なき『被害』というのは存在するのだろうか。

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"『而二不二』ではないもの" ~やが君①~

『皆が持っているバッグだから、欲しいに決まっている。』
『皆が持っていないバッグだから、欲しいに決まっている。』

あの男には、そんな当たり前のことがどうしてわからないのか。
(『対岸の彼女』角田 光代 著 より一部抜粋 )

「やがて君になる(仲谷 鳰)」はとても小さな作品である。
そして、大いなる佳作である。

高校の、入学から初秋にかけての数ヶ月。
それは恐らく、人生において最も濃密な"数ヶ

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