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任天堂激怒?!コロプラ特許侵害事件

初めに

コロプラが任天堂に潰される!?

.......そんな話を最近Twitterで見ますね。

はい、私もそのとおりだと思います。完全に任天堂さんはコロプラを殺しにかかってますね。

おそらくですが、任天堂さんがコロプラを許すことはないでしょう。私としても許すべきではないと思いますし、特許の使い方としては理想的、完璧だと思っています。

さて、記事の名前を見て察しておられる方も多いとは思いますが、今回は「任天堂VSコロプラ騒動」についてつらつらと思うところを書いてみます。

1.「任天堂vsコロプラ」

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この記事を見ている多くの人は、何があったのか知っているとは思いますが、補足的に事件のあらましを追っていきます。

事件の始まりは2017年12月22日。

任天堂株式会社は株式会社コロプラが運営する『白猫プロジェクト』に自社の5つの特許が使用されているとして、特許侵害訴訟を起こしました。

いわゆる『任天堂VSコロプラ』騒動ですね。

ただ、よくよく調べてみると、どうやら任天堂は2016年9月にコロプラに警告を行っていたようです。コロプラは任天堂に対し、特許権を侵害していないこと説明したそうですが、話が纏まらず、訴訟に至ったそうです。

裁判において、任天堂側の主張は、特許を侵害しているとして「特許侵害による損害賠償請求」と、「アプリ『白猫プロジェクト』の生産、使用、電気通信回線を通じた提供等の差止」を請求しました。

コロプラ側は特許がそもそも成立していない、という「特許無効の抗弁」を行い、これに対抗しようとしたようです。

そして、この裁判は今もまだ続いています。では、なぜ今になってまた注目されたかというと、2021年4月21日に、任天堂側が「特許侵害による損害賠償請求」の額を大幅に釣りあげたからです。

その額なんと…96億9900万円

いやぁ~、とんでもない額ですよ。当初の賠償額が44億円だったことを考えると2倍以上の増額になってますね。

ちなみに、2021年2月12日に44億の損害賠償額を49億5000万に引き上げたりしているので、この増額は2回目になります。

あと、このつり上げの提案は裁判所側から行われたらしく、ほぼほぼコロプラに勝ち目はなさそうですね。裁判所も怒ってるのかもしれません。

なお、どんな特許なのか気になる方は、noteの最後まで飛んでください。参考資料として特許のURLを纏めています。


2.何が悪かったの?

裁判が起こった!!賠償額が引き上げられた!!というのは理解してもらえたかと思います。

では一体どうして裁判になったのか、損害額が引き上げられたのかについて今から説明します。

まず今回の訴訟は「特許侵害訴訟」というものです。特許について、なんとなーく凄いもの、と認識してる人は多いと思います。その”凄いもの”(今回は技術ですね)を勝手にコロプラが使ったため、問題になっているのです。

特許というのは独占排他権です。独占禁止法があるからそんなの認められないんじゃないの? という方も見受けられまが、独占禁止法は特許による市場独占を例外的に認めています(21条)。

独占排他権なので、特許を持っている会社と、その会社から許可を受けた人しか特許を実施できません。こーれが非常に強力です。

そもそも特許というのは、国が認めた発明にしか付与されません。つまり、これは国からお墨付きを得て市場を独占している、ということです。国から許可は受けているので、基本的に特許が勝手に使われることはないです。

しかし、稀にこの特許を勝手に使われる事件が発生します。この時に起こる裁判が「特許侵害訴訟」ですね。今回はコロプラが勝手に任天堂さんの特許を使ったため、訴訟が起こったわけです。

では、どうして損害額が引き上げられたのか。

それは…コロプラの自業自得、としか言えませんね。

今回の場合は、コロプラが不当に裁判を延長し、その延長している間も「白猫プロジェクト」を運営した、ということで損害額が上乗せされたようです。二度目になりますがこれは「裁判所」の提案で任天堂さんが上乗せしているので、もうコロプラにまず勝ち目はないです。コロプラが潰れる、っていうのが現実的になってきました。


3.もう一歩、知的財産に踏み込んで

今から少し、専門的な話をします。

特許……ひいては知的財産についてのお話です。

特許を何となく知ってる人は多くても、詳しく知っている人は少ないと思います。ですので、何をすると侵害訴訟が起こるのか、という話をしようと思います。

先ほど特許を勝手に使ったから訴訟を起こされた、と書きました。では、特許を侵害(勝手に使う)したら、すべての会社は訴えられるのか?

いいえ、違います。基本的に裁判までいくことは稀です。

特許にはどの会社も非常に敏感です。特許を使う会社は、自社の特許が侵害されていないか常に市場を監視しています。また特許を持たない会社も他者の特許を侵害していないか、気を張って商品開発しています。

そして、特許を侵害されたとしても、まず初めに「警告書」というものが送付されてきます。これは「特許を使ってるな?やめてくれ!!」というものです。もし、ここで辞めれば。少しの注意で終わりです。善意(法律用語です。”知らずにやっていた”という意味になります。)で侵害をしていた場合はここで止まるのが殆どだと思います。

また、日本会社は裁判を非常に嫌っており、裁判は起こしても起こされても負け、という話があります。たとえここで辞めなくとも、内々で話を通せばライセンス契約(特許権者から許可を得て、特許を使用する)してくれる場合もあるかもしれません。

しかし、もし完全に無視、あるいは反抗的に嚙みつくと恐ろしいことになります。今回のコロプラも、警告書に噛みついて”任天堂の特許なんて侵害してねーよ!!”なんて言って、裁判になってしましました。

何がいいたいのかというと、仮に特許侵害をしてしまった後でも、謝ればそこまで大きな問題にはならない、ということです。(もっとも、日本だけの話ですよ? 訴訟大国アメリカだと……)

理想は特許を侵害しないことですが、人間誰しもミスはします。大事なのはその後どうするか、なのです。

また、知的財産権というのは非常に強力です。

特許に限らず、独占禁止法で例外的に認められる権利は、総じて知的財産権と呼ばれます。特許のほかには、著作権、実用新案権、意匠権、商標権などがあります。これらのいずれも、独占禁止法の例外として、独占が認められている権利になります。

これらの権利を守ることは、企業の命運を握るほど大切です。何せ、どれも国から許された独占排他権なので、他人に使われたら訴訟できます。

そう、知的財産権を侵害されると裁判で金を取れるのです。


先ほども述べましたが、日本企業が裁判を嫌います。加えて金を取られることを考えると、他人の知的財産権は使いません。少なくとも、まともな企業は。

何でしたら、特許には罰則という規定があります。罰金として特許侵害をしたものは1000万円または10年の懲役、もしくはその両方が課せられ、法人従業員等が特許の侵害を行った場合、法人にも3億円以下の罰金刑が与えられることがあります。

使われないし、使われても裁判で侵害を止めることができる。

これが知的財産権の強みなのです。


4.コロプラの今後と反省

白猫の旗上げの辞職、Switch版白猫の差し止め、ドラクエウォークからコロプラを削除しているところを見るに、任天堂さんは激怒も激怒。まず和解はしねぇだろうなぁ、コロプラを潰すつもりかな、と思っています。

あと個人的な見解ですが、裁判を不当に延長していることから、今回はコロプラが悪意(法律用語。特許であることを”知って”侵害していたことを指します)で実施したと考えています。つまり、わざとやった、ということですね。

そして、私が今回の事件で一番感銘を受けているのは、この任天堂さんの対応です。

馬鹿野郎には徹底的にお仕置きをして、他に同じようなことをしようと考えている輩を震え上がらせる。

……まさしく理想的、王道的な特許の使い方です。

優しい企業などは、ここで和解してつけあがらせてしまうのですが、こと任天堂さんの知財部(余談ですが、任天堂法務部は2007年あたりに任天堂知的財産部と名前を変えていたりします。)はあっぱれですね。ぜひ見習わせて貰いたい姿勢です。

またコロプラは、VR関連で任天堂さんの開放特許を荒らしまわっているだとか、パテントトロールになりそうだとか不穏な噂を聞くのでこの先もどうなるのか、注目してぇな、と思ってます。


さて、お話の締めとして、どうすれば挽回できたのかという考察をしてみようと思います。とりあえずパッと思いついた3つほどを述べますね。

①とにかく謝る

1つめは言わずもがな、ですね。もし悪意であっても、まず警告書が届いたときに素知らぬ顔で謝れば、懐深い任天堂さんですから許してくれたと思います。

②裁判で和解に持ち込む

裁判を不当に延長などせず、どこかで折り合いをつけていればここまでもつれなかったと思います。『白猫プロジェクト』はサービス停止することになったかもしれませんが、100億近い賠償を行うことはなかったと思います。

③自社技術で改良発明を行い、クロスライセンスに持ち込む

特許を無断で利用して、商売をすることは許されません。

しかし、特許を元に研究、開発を行い、新たな発明を行うことはできます。

その発明を特許にして、任天堂さんに”どうですか? うちの特許使ってみませんか?”そう提案して、任天堂さんの特許を使わせてもらう。そういうこともできたはずです。

今回、コロプラは任天堂の特許をそのまま使用するという手に出ました。ご法度ですね。けれども、任天堂さんの特許を元に新しい発明をしていたら……違う道もあったかもしれません。


終わりに

最近諸事情でnoteを使うことになり、とりあえず試しに書いてみるかぁ〜、とこの記事を書いてみました。

何故、コロプラの話を書いたか。それは、たまたまトレンドに入っていて、多少なりとも話せそうだった。そんな安直な理由だったりします。

もし、知的財産について細かく聞きたい!!というコメントが多ければ、少しそっちの話をわかりやすく書くのもありだと思ってます。

あと、いくつかTRPG関連で上げておきたい記事があるのと気が向いたらまた何か書こうと思います。そんなところで。

なお、あくまでこのnoteは私の感想です。
間違いなどがあれば優しく指摘していただけると嬉しいです。


余談ですが、現在(2021年、4/22)コロプラは大幅に株価が転落しており、年初来安値を更新したそうです。なんでも”現在前営業日比7%超安で東証1部の値下がり率トップ”だとか何とか。うーん、恐ろしや……

参考文献

特許公開公報

特許3734820号(ぷにコン):https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2006-068385/04219473E139355248AE531B09994B3981FF78145EB5EC5E399E41C1F9423B84/11/ja

特許4262217号(チャージ攻撃):https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2006-304863/4FA87FC9787B88E6460D5224C4BCB93671C41F89D3CFA86D3E943B8548A2AF12/11/ja

特許特許3637031号(シルエット表示):https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2003-290550/01DC2D2EE1F13D5E4CC0D7C9C38709DF438D2DB1612BE81108EC83B079A4B689/11/ja

特許4010533号(スリープモード):https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2003-157129/15D393BFFE712002C0970AC7A3C5F1BDDEECEBB40200ED2CFEE20CDEABD76812/11/ja

特許5595911号(フォローシステム):https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2012-005854/91F9E28489C2207FB5A706AAB85CE54F12B73F011583E3B82E51AB607AE5E672/11/ja

特許6271692号(通信システム):https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2017-104558/7EC265DFF6CC75E3F609AEC2C8A513BD36A457739AA00D5F8992DB252C53885E/11/ja

TRPG。中でも特に『捏造ミステリーTRPG赤と黒』が非常に好きです。