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チェンソーマン感想(ネタバレ)

ツイッターで騒がれる三大漫画(キン肉マン、僕ヤバ、チェンソーマン)のうちの一つチェンソーマンを8巻まで読んだ。ジャンプ漫画のフォーマットをある程度踏襲しつつもおよそジャンプ的とは言えない独自の展開や表現を多用する漫画で面白かった。作者の前作「ファイヤパンチ」を読んでないがこっちも面白そうなので今度読みたい。

チェンソーマンは悪魔を倒すために悪魔と合体した少年が戦うという「デビルマン」を髣髴とさせるストーリーだが、ある意味内容も漫画版デビルマンのような展開の速さと壮絶さを受け継いでいるように思える。

個人的に特徴的だと思ったのは「キャラクターの登場と退場のスピードが異常に早い」ことだ。そもそも話の展開が異常に早いがそれはこのキャラの退場スピードに寄るところが大きいように思う。今の所8巻の時点では主人公とその周辺の数人は生存してるものの、それ以外の登場人物は敵も味方も含め凄いスピードで退場しまた新たなキャラが補充される。しかも強ければ生き残るというワケでもなく、作中最強とされたキャラがその巻の終わりにあっさり死ぬ、そもそもカッコよく登場したキャラがよくわからない理由で数ページ後にアッサリ死ぬ、ととにかく何かしらの理由ですぐ死ぬのである。普通ジャンプで連載する少年マンガは一度登場したキャラを大事にして長いスパンで描いたり一度退場しても再登場しそうなものであるが、本作では重要なポジションのキャラでもある程度描いたら「えっそんなところで?」というタイミングであっさり殺して退場させてしまう。特に悪魔や魔人は切られても大丈夫みたいな描き方なので、どのタイミングで死ぬのか生きてるのかよくわからない。ぶっちゃけ後でWikipedia読んで「あっこの時点で死んだんだ」とわかるくらいわかりにくい。

とはいえキャラを使い捨てしてるワケではなく、各々のキャラの内面を短いページで的確に描くので、それなりに感情移入させたところで容赦なく殺すのである。なるほどこれは特に特定のキャラに感情移入しやすい読者にはダメージが大きいだろう。この感じはそれこそ「ゲームオブスローンズ」に近いかもしれない。とにかくすぐ死ぬのでもはや登場人物いつ死ぬかトトカルチョ(いわゆるデッドプール)が出来るんじゃないかと思えると事か似ている。

ちょくちょく「アフタヌーンっぽい作風」と言われる本作だが、確かに作者は絵柄としても作風としても沙村広明に近い所がある。そしてやはり本人が影響を受けたと公言している五十嵐大介の影響を見過ごすことはできないだろう。そんな作家がジャンプで連載し、打ち切られず人気を得てると言うのも凄い話だ。ジャンプ編集部と言えばアクタージュの騒動等であまりいいイメージがないが、少なくともエンタメとしての嗅覚や判断力に関しては日本最先端を行ってるのは間違いないだろう。最近は20巻くらいで終わらせるし。

これは「進撃の巨人」にも言えるが、読んでて思うのはとにかく作者の「引き出しの多さ」である。恐らく作者の頭の中には無数のストーリー展開や表現の方法が存在し、その中から厳選したものを当てはめてるように感じる。これは数多くの映画や漫画その他作品に触れ研究しないと出てこないものだろう。なんとなくだがタランティーノやジェームズ・ガン等映画オタク系の作る映画に近いものを感じる。無数の参照元からDJ的に引用しそこにオリジナルの味付けをし見たこともない怪作を作り上げる感じが似てる……気がする。

ついでに言うとこの手の作品は語るのが結構難しい。と言うのも背景に膨大な情報量があるせいでどこに焦点をあてて語ればいいのかわからないからだ。あれも言及したいこれも言及したいと思ってるうちに核として語る要素を見失ってしまうのである。例えば「ミッドサマー」がそうだったがあまりに画面(ページ)に提示された情報が多いために逆に語りにくくなってしまう、そういう作品が最近多いように思う。(ミッドサマーもシネフィルの監督による作品だ)

話がそれた。チェンソーマンのエピソードはどれも面白いが、個人的にはレゼが登場する5~6巻が一番面白かった。このエピソードはストーリーがシンプルな上にその前後エピソードに比べあまり登場人物がおらず、ラストもほろ苦い終わりという個人的にグッときた話だった。「俺の事が好きな人が好きだ」というデンジのモノローグも良く、「チェンソーマンはどういう話?」と言う問いに答えられるチェンソーマンの魅力が全て備わった話だと思う。7,8巻のデンジが狙われる回も良いが個人的には読んでてちょっと疲れた。ただ作者的には気合入れてたし多分評価も高いと思う。僕のツイッターのタイムラインが阿鼻叫喚になってる8巻以降の展開は気になるが、とりあえず単行本まで待とうと思う。(正直な所TLの騒ぎに乗じて読んだがTLの騒ぎほどにはノレなかった。だが騒がれてるのは8巻以降の展開らしいのでまだ様子見している)

そんなわけで先の見えないジェットコースター的展開(とマキマさん)に振り回されるのが楽しいチェンソーマンだが、今後も楽しみである。打ち切りの心配はなさそうだし作者の技量的にも出てきた伏線、謎(特にマキマさんの野望)もキッチリ描き切った上で終わらせてくれるだろう。展開はしんどいらしいが楽しみな作品だ(終)

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