アメリカン・ブッダ: 柴田勝家:未来が新しいという概念が壊れていく

「アメリカン・ブッダ」(121/2020年)


柴田勝家、初読です。これまた凄い作家ですね。SFと民俗学の融合。未来ではなく今、そこにありそうで、もはや「懐かしさ」すら感じさせる6つの短編。過去が古く、未来が新しいという概念が壊れていく感覚、ゾクゾク、ワクワクします。

最初のヤツからぶっ飛んでます。生まれてすぐVRゴーグルを着けて死ぬまでそのまま(身体の成長に合わせて大きなものに変えていきますが)という集落を描いています。それが雲南省にあるんです。映画マトリックスとは違うのんびりとしたサイバーワールド、驚愕。

神隠しとリニアコライダーのシンクロ。「記憶」を物質としてとらえると、全てがクリアになる快感、恐怖。

歴史とは、そして宗教とは。敗者を、異端をひたすら抹消していくことによってのみ成立するという合理性、納得。

南方熊楠の活躍、堪能。

物語は社会を壊すから、物語を徹底的に排除するディストピア。つまり、物語が全てを作り上げるという真理を発見、白眉。

そして表題作。これもVR系。現実世界から逃避した社会に対して、仏教を信じたインディアンが全てを解決する剛腕、憧憬。


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