見出し画像

幻坂:有栖川有栖:これが小説の醍醐味

「幻坂」(81/2021年)

こんな有栖川有栖に出会えるなんてビックリです。そして出会って良かったです。いかに自分が大阪という都市に関する知識がないか、思い知らされました。そして、大阪の「間違った」イメージを今後塗り替えていきたいなと思わさせてくれました。

これが小説の醍醐味です。何かを知るためにする読書では味わえない出会いがあります。もともと大阪の新しい魅力を探そうなんて思っていませんでした。ただ有栖川の作品を読みたくて手に取った次第です。

元来、本を読む前には出来る限りの情報は遮断するタイプなので、今回も、タイトルからして幻想的な中にもしっかりとした謎解きがある作品なんだろう、くらいの気持ちで読み始めたのですが、予想を大きく裏切られました、良い方に。

大阪の天王寺七坂が舞台のホラー的なファンタジックな短編集です。天王寺七坂、全く知りませんでした。あんなエリアにあるのですか!驚きです。大坂には10回以上は行っていますが、ほぼ仕事なので、足を踏み入れたことのない地域。今度、この坂のために大阪、行きたいです。

七つの坂にまつわる物語7編と、江戸時代の松尾芭蕉が登場する話と鎌倉時代の藤原家隆にまつわる話の全9篇。「清水坂」「愛染坂」「源聖寺坂」「口縄坂」「真言坂」「天神坂」「逢坂」は心霊現象を扱った今の時代の話です。お気に入りは猫が大活躍の「口縄坂」。とても怖いです。猫は甘く見ちゃいけませんね。

でも、残念なのはそれらの坂を見たことも歩いたこともないことです。もちろん丁寧に手に取るように描写してくれていますが、やはりそれは作り事。リアルを知った上で、もう一度、この坂を作品の中で歩いてみたいです。

こういう出会いがあるので、やはり読書はやめられません。


この記事が参加している募集

#読書感想文

189,141件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?