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剣樹抄:冲方丁:理不尽も理である

「剣樹抄」(129/2021年)

江戸前期もの。水戸光圀をこういうスタイルで物語の軸に置くとは「ひねくれもの」の冲方らしい、非常にドキドキする。明暦の大火の陰謀に立ち向かうという虚実入り混じった設定も、特殊能力を持った「捨て子」たちを幕府の隠密集団「拾人衆」として機能させるという「お江戸X-MEN」的なポップな展開も、あの「水戸黄門」の若かりし頃の活躍とコラボさせることでねじ伏せる剛腕、ヤバいです。

かなり過酷な事実も書かれています。身分の低い人間は所詮道具に過ぎない、死んでも代わりがいくらでも出てくるといった考え方です。もちろん主人公サイドはこのような考え方に反発していますが、どこか受け入れているところも残してあるところが切なくて良いです。

生きていくだけで大変な時代です。生まれながらにしての「差」を否定していたら生存出来ません。生きていくために、世の理不尽も理であると認識しつつ強くなる主人公たちの様に心うたれます。

まだ途中かと思います。この先、どこに進むのかは光圀次第かと思いますが、もっともっと強引に史実に絡めてほしいかも。なんなら「拾人衆」のメンバーが将軍になってしまう!とか、主人公・了助が実は宮本武蔵の親戚だったくらいのブっ飛びがあっても良いかも。



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