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きたきた捕物帖:宮部みゆき:幸せです

「きたきた捕物帖」(35/2022年)

本当に幸せです、宮部みゆきの新作が、新シリーズが!…読める喜び。生きてて良かった。

いつものランニングコースが物語の舞台だ!ということで先ず爆上がりです。小名木川沿いを良く走るのですが、その界隈で起こる様々な事件、文庫に掲載されている古地図と現在の地図をシンクロさせながら、タイムトリップしながら世界観満喫です。それを宮部みゆきが書いてくれるんですから最高です、たまりません。

宮部テイストを個人的に解釈すると、その一つは物凄く残酷で苛烈な現実の厳しさ、辛さ、悲しみをさりげなく忍び込ませることだと思っています、時代モノにしても現代モノにしても。もちろん正面きって書いている作品も多々ありますが、本作とか、江戸時代の悲惨な部分を巧みにさりげなく、あたかも当然のように書き込んでると思います。それが圧倒的な現実感を醸し出し、他の時代モノにある「所詮ファンタジー」的なノリを消し去っていると思うのです。

主人公、北一のキャラが本当に良いです、もう泣いちゃいます、これも宮部テイストの一つかと。実に地味、地味すぎます。並みの作家じゃ、この地味キャラを主人公にするなんて無理でしょう。でも、宮部には出来るんです、魔法です。地味だからこそ、読者の思いを存分に注入できるんです、その読書を愉しみ、最高です。もう職業設定ところからして感動です。

そんな北一が恩人である親分を喪ったところから物語はスタートします。何となく「中途半端」な立場で、巷の祟り事件や、誘拐事件、結婚にまつわる詐欺事件や死体遺棄事件に係わっていきます。

ポイントは北一が必ずしも解決するわけではないところ。もちろん、解決への重要な部分を担うエピソードもありますが、ただ傍観しているに近しい場合もあります。その濃淡のバランスが本当に心地よい。

そして、もう一人の「きた」、喜多治の活躍も楽しみです。彼は飛び道具的な活動、一種のマジカル担当なので!

この読書の幸せをたくさんの人に知って欲しいです!


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