ホワイトラビット: 伊坂幸太郎:あーあ、ため息が出るほど面白い
「ホワイトラビット」(085/2020年)
今回は短い時間の行ったり来たり、という仕掛け。それも複数の人の視点から。そして、それらの行ったり来たりや視点の切り替えを、丁寧に説明してくれる謎の人がいるんですよね、作品内に。そのチョットとぼけた存在感も実に良い。
物語の主軸は「人質立てこもり」事件。そして、そこに関わるのが「誘拐専門」会社。更に、いつも通りの「犯罪者」チームがいつの間にか巻き込まれるという展開。ここで出てくる誘拐専門会社が実に良い。ま、誘拐というよりは「脅迫」会社ですね。身代「金」は要求しない。モノの移動は、自分たちの身元がバレる危険があるから。モノではなく「行動」を要求する。そのリアリティが一見トボケたトーンの作品に「凄み」を出している。ファンタジーの中に潜んだ残酷な事実、これぞ伊坂マジック。
登場人物の立場が目まぐるしく入れ替わるトリッキーなストーリーは読んでるだけでドキドキです。途中で前の方を読み返し、状況を確認した上で読み進める。作品は時系列で進んでいるわけではないので、ページを戻ることで自分なりにストーリーを時系列に構成しなおす。
って書くと、面倒な作品だなぁと思うかもしれませんが、そんなことはありません。結末に向かって、全てはシックリおさまります。様々な伏線が気持ちよく回収される、これぞ伊坂マジック、パーフェクト!
本当に面白い。ネタバレになるので何も書きませんが、とにかく面白い。あー、面白い。
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