童の神:今村翔吾:〆が良い。それに尽きる。(ネタバレ有)

「童の神」(97/2020年)

〆が良い。それに尽きる。以後、ネタバレかな。















やっぱ、勝てないんだよ。彼らは、負けるんだよ。どんなに「正義」であっても、中央には屈するしかないんだよ。本当に悔しい。でもね、この悔しさが本作品の醍醐味なんだな。勧善懲悪の痛快ストーリーじゃないところに痺れるんだよね。ちゃんと希望は残してくれている。ただ、この平安の時代から、今に至るまでで、この「希望」は実現されたのだろうか。当時よりは良くなっているとは思う。がしかし、が現実だろう。そんな問いかけも、本作品の「重み」の一つだと思う。

どんなことでも表裏がある。支配する人がいれば、支配される人がいる。支配されることによって、皆が苦しい思いをするわけではなく、状況が良くなる人もいる。

古からの民「童」と新しい支配者「京人」の対立が軸ではあるが、そう単純な構図ではない。それを「裏切り」と呼ぶのか「政治」と呼ぶのか、立場によって解釈は異なるのがリアルである。

ただ、主人公、桜暁丸の「希望」だけは間違っていない。ここだけは正しい。でも、正しいからこそ、難しいのだ。

夏休みの一冊として超オススメです。


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