城をひとつ:伊東潤:詐欺ではなく作戦です

「城をひとつ」(073/2020年)

歴史ものはあまり得意ではないのですが、たまに読むとやっぱ血が騒ぐ。本作は15世紀から16世紀、戦国時代の闇を駆け抜けた「謀略一家」四代にわたる物語です。

北条家に仕える大藤家はスパイというか、大型詐欺師というか。商人や僧侶や農民になりすまし、相手方の懐に入り込み、相手を騙して北条家に有利な状況を作り出すことが仕事の一族です。その騙しっぷりが劇画チックでドラマチック!騙される方も馬鹿よのぉ。

で、その攻防戦のキーが「城」なのです。世の中、城だらけなのですね。巻頭の地図を見て、よく行く場所が城のある場所だったことに気づき、今度行くときは注意したくなりました。特に千葉、埼玉、茨木あたり、要注意です。城を攻める、城にこもる、城を捨てる。とにかく城を取り合いが戦いの基本であることに今更ながら驚きました。

そして、城を攻める前の情報戦ですね、大藤家の仕事は。武将たちの心を様々なアプローチで操る詐欺師軍団。まさに影の軍団です。いかに死人を出さずに勝利するか。馬を使ったり、米の取引で駆け引きしたり、まあ、勝つためならば手段を選ばない「戦争屋」の冷たい戦いはまさにエンタテインメントです。

そして、最後のエピソードは「負ける」ために策を練ります。いかに上手に負かるか、プロフェッショナルの技が冴えます。


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