嘘:北國浩二:嘘とは

「嘘」(157/2020年)

本当に嘘をついていたのは誰なのか?

この嘘は許されるのか?

人は自分に対して嘘をつけるのか?

以上が本作品の三大テーマかと思います。一番目は作品内での疑問、二番目は嘘全般に関する疑問、最後は人間というものに対する疑問です。一番目はネタバレになるので回答しません、二番目は「許される」と思います、三番目は「つける、というよりも、人は嘘をつき続けていないとサヴァイブ出来ない」というのが、この作品読了後に導いてた僕の回答です。

憎んでいた父が認知症に、その世話で何年ぶりかに田舎に戻り変わり果てた父にあった娘は水の事故で息子を亡くした過去を持つ。そんな女のもとに、記憶をなくした少年とアクシデントで出会う。その少年は苛烈なDVを受けていたことが判明する。

そして、女は少年に「あなたは私の息子」と嘘をつく。そして、嘘が嘘を呼ぶのだが、その家族は嘘を乗り越えて「リアル」になる。

様々な嘘が隠されています。酷い嘘、優しい嘘、生きるための嘘、相手を蹴落とすための嘘。結局は嘘を発する人が全てなのですよね。その人の信念が、心がキレイならば、嘘もキレイなのです。そしてキレイになった人は、嘘を真実に変える力を持つのではないでしょうか。

色々と考えさせられる物語です。認知症の実態、哀しさも、実に細かく書いてあって勉強になりました。皆が徐々に不幸になっていく病気なのですね。早く効果的な治療薬が開発されてほしいです。

この嘘、切なく、素敵だと僕は思いました。

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