ぬしさまへ:畠中恵:妙にリアル
「ぬしさまへ」(76/2021年)
超人気シリーズです。第一弾「しゃばけ」ですが、調べたところ10年前、2011年3月9日という日に読んでいたんですよね。あと二日前に、この「妖」に出会っていたとは。不思議なものです。
江戸ものミステリです。妖怪の血を引く若旦那が、自分を取り巻く妖怪たちと共に事件の謎に迫ります。妖怪が出てくる時点で完全なファンタジーのはずなのですが、妙にリアルなんです。江戸という世界観に対する憧憬というか、妄想というか、そんな思いが妖怪という存在と入り混じります。「ゲゲゲの鬼太郎」と少し違うのが、人間と妖怪の対立関係が描かれていないことでしょうか。
短編集です。殺人事件が多いんですよね。「ぬしさまへ」「栄吉の菓子」「空のビードロ」「四布(よの)の布団」は人殺しに絡んだ事件を解決します。「仁吉の思い人」は切ないラブストーリー。「虹を見し事」は若旦那が珍しくピンチに。
お気に入りは「仁吉の思い人」。1000年の時を経て、まさかハッピーエンドになるとは思いませんでした。仁吉にとっては悲恋ですが。。。
妖怪を媒介としているので軽やかに読めるのですが、実はどの作品にもかなりの「悪」があります。人間の悪、些細なことからどんどん濃くなってく闇。救いようのない邪な心。本当に怖い化け物は人間ですね。
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