僕のなかの壊れていない部分:白石一文:過剰な思いに潰されそうになる、快感

年間、文庫本で、小説ばかり、約150冊を読み続けているGGが、今年は読んだ本の読書感想文を書いていこうかと

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「僕のなかの壊れていない部分」(011/2020年)

主人公の男性の様々な「思い」が、圧倒的なボリューム、スピード、プレッシャーで読者に襲い掛かる。これでもか、これでもか、これでもか。でも、嫌な気持ちにはならなかった。なぜだろう。共感しているわけでもないのにね。解説で窪美澄が言及しているように、「血まみれの何か」がある。決して快適な読書にはならない。苦しいというか、悩ましいというか、モヤモヤする。でも不快ではない。もちろん、スカッとしたストーリーで、感動したり、興奮したい人にとっては、ちょっと…かもしれないけど、でも、この読書は確実に楽しいと思う。

主人公は出版社の編集者。その恋人(?)3人は、カリスマ・スタイリスト、バーの子連れママ、金持ちの奥さん。そして、主人公の友達のような、知り合いのような、不思議な2人、フリーター、大学生。みんな、どこか壊れている。そもそも、壊れていない人とか居ないと思うけど。で、誰が一番壊れているということが問題じゃない。そこは比較しても意味がないというメッセージを感じる。そして、壊れていることに対して、どう対応するか、そこがポイントかと。作品の中では、犯罪に走る人もいるし、修復を試みる人のいるし、そのまま放置する覚悟を決める人もいる。

犯罪はいけないけど、壊れた部分に対応することで、「壊れていない部分」がはじめて分かるんだな。その部分が、その人のコアであり、最も大切な͡͡͡͡͡͡͡͡͡コトなんだろうな。

さて、僕の「壊れていない部分」、把握しないと、ヤバいな。


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