ヒトごろし:京極夏彦:カッコ良すぎ

「ヒトごろし」(135,136/2020年)

文庫1,500頁越え、まさか新選組とは思わずに踏み込んだこの長い道のりの中で、「幕末嫌い」な私は土方歳三のファンになりました。ただし、この京極作品の中の土方なので、きっと、他の作品の土方に出会っても心動かされないのでしょう。ここにいる土方は「ヒトごろし」だからです。

彼は人を殺すために生きています。ただ生きているのではなく、猛烈に考えます。どうすれば人を殺せるかを。そんな人間がたまたま幕末に生まれてしまったので、新選組に入っているだけです。もし彼が、今の日本に生まれたら、フランスの外人傭兵部隊にたどり着いているかもしれません。もし彼が、古代ローマに生まれていたら間違いなく戦士をやっているでしょう。

土方の理性的な判断は単純にカッコイイです。自分のために考え抜いて、やりたいことを決定し、周囲の状況も的確に判断しつつ、どう生きてていけば己の目的に到達できるのか、ずっと考えています。

そんな土方から見た幕末の日本、すごく理解出来ました。彼のブレない立場から描かれる江戸末期から明治維新、なるほどです。日本という国の行く先と自分の将来が、これほど緊密に絡んでいる状況ですよね、大変です。国家の大きな流れに乗るのか、その流れを変えるために動くのか、すごく自分に近い問題だったのですね。

でも、土方は、こんな激動の中でも、人を殺すことのために生きています。それはそれは、カッコ良いです、良すぎ。

本当に長いので、万人にオススメ出来る作品ではないですが、僕のように、あまり幕末に興味がない人は読んでみると良いと思います。他の幕末作品にも興味が出ていました。この土方歳三は、どう描かれているのだろうか、とても気になります。やっぱ、カッコいいかな~

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