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レオナルドのユダ: 服部まゆみ:ターゲットは『モナリザ』

「レオナルドのユダ」(43/2021年)

歴史上の事実を骨として、そこにフィクションを巧みに肉付けした歴史ミステリ。そのメインターゲットは『モナリザ』です。

舞台は15~16世紀、日本は室町時代ですね。レオナルド・ダ・ヴィンチとその弟子たちを取り巻く物語です。ダ・ヴィンチの生涯をこのような形で触れることが出来るなんて、知的興奮度高めです。超天才と呼ばれた男に対する憧れとか、妬みとか、賞賛とか、誹謗中傷とか。何百年も前から、人間の取る行動に、多分変わりはないのでしょう。

そんな中で、徐々に本作品のメインターゲットがハッキリしてきます。モナリザのモデルは誰なのか。

ウィキペディアで検索しただけでも諸説あるみたいです。邪馬台国の謎にように、諸説を戦わすには格好の素材なのでしょう。モデルが誰なのかという切り口以外にも、様々な謎が語られてきています。そこに服部まゆみも参戦したわけですね。過去には「切り裂くジャック」で同じアプローチをした服部です、今回もギリギリのラインを攻めているのでしょう。現実と虚構の狭間で僕だけのダ・ヴィンチが活き活きと動いています。

絵画を文字で表現するという無理筋を、敢えてやってしまうところが絵画小説の醍醐味だと思います。「絵」をどうやって浮かびあがらせるのか。絵を頑なに文字で表現することに注力するも良し、画家の生き様から想像させるも良し、時代背景、文化の状況、市民の生活等を描いたうえで全体からイメージさせるのもありでしょう。とにかく、作者の文字と読者の脳のコラボレーションで楽しむ絵画鑑賞、面白いです。

エンタテインメント的な謎解き、ミステリの部分もあって、実に楽しめる内容になっています。またこれで、コロナ明けにパリに行く理由が一つ増えました。


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