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穴あきエフの初恋祭り:多和田葉子:新しい読書へ

「穴あきエフの初恋祭り」(109/2021年)

うー、難しかった。7つ短編集、気のせいかもしれませんが、最初の作品から徐々に徐々に難解になっていく気がしました。それは作者の狙いなのか、それとも読書である自分の未熟さなのか。多和田の作品は「献灯使」しか読んでいないので、彼女のテイスト、流れを良く知らないから、難解に思えるのかもしれませんが、そういう読書の脳みそがピリピリして心地よいです。

一番ピリピリしたのは「鼻の虫」。文庫で14頁の本当に短い作品です。人間は皆鼻に寄生虫のような虫を飼っているという設定。なんだか将来本当のことになりそうで、やっぱインチキみたいな微妙な線を突かれてちょっと動揺する。

その設定の上に、さらに何ともいえない女性が登場します。彼女は何ともいえない会社で何ともいえない業務をこなしています。少しダークな雰囲気、デストピアの一歩手前みたいな世界観。

これ、どう読めば良いのか。正解は無いと思います。作者の表現したいことを「当てる」のが読書ではないと思います。「国語の勉強」を読書のノウハウと思ってしまうからいけないのでしょう。理解しないで良いのです。もちろん、理解したいです、その文章を、作者の思いを。でも、それが出来ないこともあるのです。出来なくても良いのです。そうしないと新しい「読書」に出会えないから。

正直、本作品の「おと・どけ・もの」とかは読んでいて不安しか残りませんでした。でも、その不安を感じることが出来て、何か自分の中で動いたモノがあるかもしれません。でも、良いのです。だって読書が好きなんだから。

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