消人屋敷の殺人:深木章子:一度は「書かなければならない」案件

「消人屋敷の殺人」(067/2020年)

直球勝負の本格ミステリ。嵐で孤立した屋敷が舞台です。やはり、本格ミステリ作家としては、一度は「書かなければならない」案件なのでしょう。もちろん、屋敷の見取り図付です。

孤立した屋敷で電話線が切られる。超王道で深木は挑んできます。敢えてありきたりな要素を満載した上で、いかに今までのミステリとは異なった作品に仕上げるのか。かなり大変な作業かと思います。パクリとか言われる可能性も高いし、ネタは有限だし。でも、ミステリ好きの既視感を利用したトリックとかも繰り出せるので、この案件は尽きないのでしょう。たくさん読んでるからこそミスリードされる、悔しいけど、楽しいです。

どんなトリックで攻めてくるのか、真っ向から疑って進む読書です。今までの読書経験から、様々なパターンを思い浮かべながら読むのですが、今回、本作品で気が付いたことがあります。

疑いながら読んでいるのですが、物語の世界に引き込まれると、疑うことを忘れているのです。ミステリのトリックを探すことより、ミステリの世界に入ることの方が面白いし、興奮するからだと思います。そして、疑うことを忘れたころに、一気にドドーンと、作者は読者に「解答」をぶつけてくるから、衝撃も大きくなるんです。

ずーっと疑いながら読んでいれば、きっと少なからず解答に近づいているはず。そこで答えを明かされても、衝撃は小さいはずです。が、優れた本格ミステリは違うのです。

本作、大きく分けて4つのポイントがあります。どれもお馴染みの「仕掛け」ではありますが、実にうまく作用してます。そしてオマケで過去の謎解きも付いてくるので、存分に楽しんでください。

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