じっと手を見る:窪美澄:納得いかないですが

「じっと手を見る」(057/2020年)

大好きな窪の作品です。今まで気が付かなったけど、同世代の作家さんなんですね。作品の世界観から、勝手にあと20歳くらい若いと思ってました。同じ時代を生きてきた人が描く、自分とは異なった価値観で動く世界にどんどん引き込まれます。

恋愛小説です。女性主人公の日奈、まあ、めんどくさい女です。男性主人公の海斗、こいつもめんどくさい男です。二人とも「故意」を感じさせないのが超めんどくさい。悪意が無いのもめんどくさい。実に真っ当に生きているものめんどくさい。とにかく、めんどくさい。でも、悪い人じゃないんですよ。それが更にめんどくさい。

サブキャラの面々は、まあ、普通の人たちです。良いとこもあるし、悪いところもある。主人公二人がまともだから、通常より悪いところが目立っているだけで、通常はこういう人たちが主流派なのでしょう。

読んでいて、温かい気持ちになれる作品ではありません。苦いですね、甘くないです。完璧な不幸でもありませんが、幸せに直結している人は出てきませんね。

主人公二人の職業である介護士という立場も効いてます。あとは死を待つだけのご老人の存在が、それ以外の人たちの生き様を「マシなもの」に見せているかもしれませんが、そのご老人が不幸ってこっちが勝手に決めつけているだけです。

この結末に、僕は納得してません。個人的には最高のバッドエンドでした。でも、作品的には最高です。心、揺さぶられます。納得しないことも有りなんだと思い知らされました。これは作者との「闘い」なんだ、な~んて言うとカッコいいですが、ま、作者の掌の上でコロコロと転がされているだけなんですよね。あ~これからも転がしてください!


この記事が参加している募集

#読書感想文

187,975件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?