新任刑事:古野まほろ:色々と凄い作品です

「新任刑事 上」「新任刑事 下」(058,059/2020年)

凄いポイント、その一。刑事という映画やテレビ等で限りなくディフォルメされた職業のリアルな姿を感じることが出来る。これは凄い。刑事に限らず、所謂ギョーカイもので描かれる職業像は「ウソ」だらけである。そのウソの中にチョットだけでも本当が入っていれば良しとするのが普通でしょう。本作品、もちろんフィクションなのでウソはたくさんありますが、それを凌駕するリアル攻撃、特に提出書類に関しての記述は感動的です。すみません、刑事という仕事、完全に誤解していました。そして、刑事のみならず、「警察」という会社で働く人たちの業務、本当にご苦労様です。

その二。この騙しテク、素晴らしい。10年間逃げ続けて、あと三か月で時効を迎える犯人と、面子をかけて追い詰める警察組織の物語。犯人は一番最初に登場しているので、読者はある程度の物語の流れは先読みしつつ、どうやって「どんでん返し」してくれるのかを期待しながら読み進める。そして、その期待を軽く超える、想像以上の「返し」が待っています。まさか、ですよ。読み終わった瞬間に、最初の章を読みたくなること必至なので要注意です。いや、騙された・・・ここに答えがあったとはね。

その三。そこはかとなくユーモアがあるんです。警察小説でおなじみの、過酷、苛烈な政治的闘争が底流に流れているのですが、それを包み込む優しい雰囲気。舞台が地方の小県に設定されている意味も大きいと思います。これ、警視庁でやったら、ちょっとウソ過ぎるでしょ。実にバランスが良いんで、読んでいて気持ち良いです。

ってことで、Must Read案件です。

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