わたしたちは銀のフォークと薬を手にして:島本理生:女子、女性、女の気持ち

「わたしたちは銀のフォークと薬を手にして」(063/2020年)

女子、女性、女と書くと全く別物に思える。

この作品には「幸せな女性」と「かわいそうな女子」と「普通の女」が存在していると思った。

一番刺さったのが、主人公の妹。かわいそうな女子なんだよな。昔は幸せな女子だったはず。でも、本人、悪気はないんだろうが、ま、悪気がないからタチが悪いのだが、周りに対して負のオーラを振りまきつつ、気が付いた時には自分が単にかわいそうな人になっている。

不幸じゃない、かわいそうな人、これは辛い。不幸は自覚が出来、自分の力で覆すことも可能だが、かわいそうは他者の評価なので、自力でどうにも出来ない部分もある。他人から見て不幸だけど、自分では幸せと思うことは可能だ。でも、他人からかわいそうと思われている場合、得てして自分では気がついていない。

妹はこの状態から抜け出すために暴挙に出た。でも、周囲は、もっとかわいそうって思っているに違いない。この苦しい局面から抜けだせる可能性は低いと思う。でも可能性を見出しただけ良しとしよう。

ちなみに、本作における妹の占める割合はごく僅かだ。本筋は姉、主人公の素敵なラブストーリーである。あまりにも素敵すぎてどうしようかと思っていたところに、このサブキャラの妹がいることによって、心が落ち着いたのが正直な感想だ。

それにしても、素敵の剛速球、たまにはいいな。姉が最終的に「幸せな女性」になって、本当に良かった。

で、姉の友人二人は「普通の女性」でした。これまたホッとします。

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