見出し画像

ねこのばば:畠中恵:生と死の間に妖怪は生きている

「ねこのばば」(86/2021年)

妖怪と人間がタッグを組んで事件を解決していく「しゃばけ」シリーズ。「茶巾たまご」「花かんざし」「ねこのばば」「産土」「たまやたまや」、タイトルだけ見てるだけで楽しくなってきてしまいます。が、どれも底辺に流れる哀しみ、生きることの残酷な面を微かに感じさせるところがこのシリーズの力強いポイントなんだと思います。

江戸時代、今より人の死は日常だったのでしょう。医学のレベルの問題で仕方ありません。現代社会だと医学によって人は救えること前提で考えてしまいがちです。でも、それは本当に最近のことです。生と死の間を妖怪が跋扈していても不思議はない感じがしてきます。

突然訪れる死、不条理な死、その現実を受け入れるための緩衝材としての妖怪。死と言わず、辛い出来事や災難に対しても同じこと。人生、楽しいことばかりではありません。でも、妖怪で少しは気が紛れるのではないでしょうか?

お気に入りは「花かんざし」。一番切ないお話です。理屈では整理出来ない悲しい物語。病弱な若旦那、一太郎は体が弱い分、精神的にタフであろうとしている姿が健気です。

「茶巾たまご」の貧乏神もナイスキャラクターでした。「たまやたまや」のお春も可愛らしくて良いですね。殺人事件に溢れている作品ですが、そこまでシリアスにならずに読めるのは嬉しいです。





この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?