信長の原理:垣根涼介:自分信長化計画

「信長の原理」(127,128/2020年)

なんだ、この歴史小説は。なんだ、この信長は。読んでいるうちに自分の頭が信長に浸食されていく。ひたすらひたすら、丁寧に丁寧に信長の思考をトレースしていく文章を、最初は当然ながら目で読んでいるんだけど、それがいつの間にか、自分が考えていることを文字化しているだけのような気分になってくる。

逆だよ、逆。もちろん分かっている。あくまでも垣根の描いた信長であり、垣根の想像する信長が、きっとこう考えていただろうという事を書き連ねているだけである。でも、いつの間にか、文字が境界線を飛び越えて、徐々に忍び込んでくる。そして、いつのまにか、僕は信長になっている。

信長の家臣についても、垣根は同じアプローチで書いている。中でも、やはり明智光秀の描写はグッとくる。大河ドラマ「麒麟が来る」と勝手にシンクロさせて読んでいるから、また面白い。中でも吉田鋼太郎、じゃなくて松永久秀はハッとさせられた。

それにしても、本能寺の変の「動機」って、何て素晴らしいテーマなのだろうか。日本の歴史史上、一番エンタテインメント要素が濃いのではないだろうか。本当に明智には感謝したい。

で、原理、2:6:2の法則、なんて恐ろしく、なんて効率的なんだろうか。この偉大な数値を、まさか信長から教えてもらえるなんて、感動です。いや、まさかです、ここまでクレバーな解説は。

だから読書は止められません。

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