みんなの秘密:林真理子:秘密の垂れ流し

「みんなの秘密」(78/2022年)

1998年の吉川英治文学賞受賞作品。携帯電話を普通の感覚で持ち始めた時代ですね。ちなみに同時受賞は「死の泉」、皆川博子、個人的には2005年1月に読んでいました。不思議な感じがします。
林真理子、あまり読んでいないですね。どうしても80年代のコピーライター的なノリだと思ってしまい、避けていたのかも。これを機に直木賞受賞作は読もうかな。

閑話休題、登場人物が主役として次の短編に出てくるタイプの連作集です。
爪を塗る女→悔いる男→花を枯らす→母の曲→赫い雨→従姉殺し→夜話す女→祈り→小指→夢の女→帰宅→二人の秘密、全部で12人の主人公が登場します。よくあるタイプの構造ですが、ここまで徹底的に数珠つなぎにするパワーが、林真理子が林真理子である理由なのかもしれません。

基本、色恋沙汰の秘密ばかりです。軽いものから思いものまで、老若男女、様々な秘密があります。ポイントは12個の秘密に相互関係が無い事かもしれません、秘密の垂れ流しなんです。二人で秘密を守る、死ぬまで誰にも…といった重さが無いのです。人それぞれが秘密を抱えていて、その秘密を林は書き続けます、12人分も。秘密とは、自分が秘密だと思う事が秘密であります。

20世紀の恋愛観が懐かしいです。不倫ばっかり。不倫は文化とは良くいったものです。文化的活動なので、別にしなくても生きていけますが、豊かな文化的な暮らしをするためには、ちょっとは「嗜む」べき案件じゃないの、って、20世紀生まれていない人が読んだらどう思うんだろ。

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