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フーガはユーガ:伊坂幸太郎:いつも以上に過酷な環境における伊坂クオリティ

「フーガはユーガ」(134/2021年)

本作品は「児童虐待」をテーマにしています。過酷です、卑劣です、許せません、でも現実なんです。この作品に描かれた以上に悲惨な事件がノンフィクションで発生しています。主要登場人物は児童虐待をサバイブしている、してきた人たちです。主役の双子の、そこそこ頑張っているんだけど、そんなに弱くないんだけど、いざ虐待を続けてきた父のを目の前にした時の感情を読んだ時、いたたまれなくなりました。悲しいというか、なんというか、もう辛いです。

幸いなことに、自分は児童虐待を受けたことがないと思っています。本当に恵まれた環境で生きていくることが出来ました。色々なことに感謝です。でも、もし、この作品のような環境に嵌ってしまったら、どうすれば良いのでしょうか。多分、自分ではどうにもならないのでしょう。誰かが見ている、誰かが気付いてくれるを待つしかないのか…絶望的です、でもサバイブするのです。苛烈です。

でも、本作品では希望を残してくれいます。双子の秘めたるパワーに、人は光を感じます。もちろん、フォクションです、嘘です、小説だから。でも力を感じるのです。それが小説なのです。

そして、普通に面白い、いや、普通以上に、とても面白い。所謂双子モノなんだけど、「この手」があったとは。サスペンス・ミステリとしてもハラハラドキドキです。更に、伊坂一流の仕掛け、主人公の語りにはウソが混じっていると主人公の時々言わせるというミスリードがたまりません。

ちょっと厳しく過激な表現もありますが、伊坂の児童虐待に対する怒りの感情の結果なので、そこは共有すべきかと思います。目を背けてはいけない問題なのだから。


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