夜の谷を行く:桐野夏生:有益な読書

「夜の谷を行く」(041/2020年)

「連合赤軍事件の山岳ベースで行われた『総括』と称する凄惨なリンチ」がテーマということで、かなりビビッて読み始めたのですが、想像とは全く違ったテンションで始まって驚く。

12人が死んだ、いや、殺された。酷い。でも、この作品の初めの「日常的」なノリは何なんだ。正直、怖い。

このころの学生運動って、自分からは遠い。親は関わっていないし、僕は幼稚園にも行っていない年齢だし、周囲に関係してる年代の人がいない。もちろん、仕事の上で知り合う、その年代の人はたくさんいるが、まさか、その人たちに、学生運動に関して問うことは、普通は出来ない。

そんな中、本作品で、改めて当時の学生運動についての知識を得たことは、実に有益だ。特に、主要メンバーではない人からの視点ということが、理解の上でとても助かる。また、主要メンバーも、実は大したことなかったらしいということも、重要に思う。

知らないことを知りたいから、日々、本を読んでいる。味わったことにない感情になりたいから、読んでいる。自分とは違う人になりたいから、違う生き方に魅せられるから、読んでいる。

いつ、自分がリンチする側にまわるかもしれない、そんな気持ちになれたことに感謝する。

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