カンヌ国際映画祭の歩き方
2024年の5月にカンヌ国際映画祭へ初めて来た思ったのは、日本人の観光客がほとんどいないということだ。本家「歩き方」を含め、確かにネットにも情報があまりない。昨今の円安の影響もあるかもしれないと思ったが、毎年来ているという映画関係者の方に話を聞くと「いつもこんなもん」だそうだ。
映画祭は基本的にビジネスの場でもあるので、一般の観光客では入ることのできないエリアもあるが、カンヌどころか、初の映画祭体験となった筆者の感想としては「もっとみんな来たらいいのに」である。
南フランスで開催される12日間(今年は5月14日~25日)の映画祭。情報がないなら自分で残しておこうと思い、この記事を書くことにした。ぜひ来年以降の参考にしていただきたい。
映画祭のメインエリア
カンヌ駅
カンヌは上記の通り、フランスの南東部に位置する都市である。行き方自体アは大手旅行サイトにも情報が充実しているので、そちらをご参照を。パリからももちろん行けるが、筆者はニースの空港からバスを使ってカンヌ入りした。
メイン会場
駅から南に6~7分歩いたところに映画祭のメイン会場である「パレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレ(Palais des Festivals et des Congrès de Cannes)」がある。
2024年の第77回カンヌ国際映画祭のメインビジュアルは黒澤明監督の『八月の狂詩曲』となっており、メイン会場の装飾含め、街中に日本の映画ビジュアルが溢れている光景は感慨深い。
メイン会場のメインスクリーンとも言える「GRAND THÉÂTRE LUMIÈRE」の前に、報道でよく見かけるレッドカーペットが敷かれている。
カンヌ内にはいくつかの会場とスクリーンがあり、メインのコンペティションに出品されているような作品の初お披露目(プレミア公開)などの際は、レッドカーペットのあるこの会場で上映となる。
映画祭公式サイトで上映スケジュールが一般公開されているので、好きな監督や俳優の作品が上映されるタイミングに合わせてメイン会場に赴けば、高確率でその姿を見ることができる。
野外スクリーン
そんなメイン会場から海岸沿い5分ほど歩くと見つかるのが、ビーチに設置された大きな野外スクリーンだ。このスクリーンもカンヌ映画祭公式のもので、観光客を含め誰でもが出入り自由、しかも無料で映画を鑑賞することができる。
5月のカンヌは日が沈むのが遅く、上映は暗くなる21時半から(年によって異なるかもしれないのでご注意を)。宿泊場所がカンヌから離れているなら、交通機関はあらかじめチェックしておくと良いだろう(タクシーももちろん走っているし、本数は少ないがバスもある)。
筆者は21時に行って、すでに座席が7割近く埋まっている混雑状況だった。人気作品の回はもう少し早めに行った方が良いかもしれない(入れなくても、近くで野次馬的に観ることは可能、そうしている人も多い)。
ちなみに2024年のオープニング日の上映はダニー・ボイル監督の『トレインスポッティング』(1996年)の4K修復版。日本人として嬉しいのは20日の『紅の豚』だろう。スタジオ・ジブリに「名誉パルムドール」贈られる関係で、今年はジブリナイトが開催されるのである。
映画祭の雰囲気を楽しむには最高のロケーションである。
「監督週間」会場
ビーチのスクリーンから更に海岸沿いを数百メートル行った先に、「監督週間」の部門に選出された作品を上映する会場がある。
「監督週間」とは、政治や商業を抜きにして、作家性や芸術性の高い作品を称揚するため創設された上映週間であり、2024年は日本からも山中瑶子監督の『ナミビアの砂漠』と、アニメーション作品『化け猫あんずちゃん』が選出された。
旧市街
カンヌはそこまで大きくない街なので、メインのスポットを見て歩くだけだったら2日~3日もあれば十分足りるだろう。ただ、世界三大映画祭の一つであるカンヌの現地の雰囲気を感じたり、映画祭とは関係なく、雰囲気のある旧市街に行ったり、カンヌを一望できる展望スポットに行ったりするだけでも楽しめる街である。
映画祭で上映された映画を観る
とはいえ、せっかく世界三大映画祭の一つである「カンヌ国際映画祭」に来たのなら、やはり映画が観たい。そこで無料開放ビーチ以外にも観られる方法をご紹介したい。
映画祭におけるプレミア公開(世界的な初のお披露目)という役目を終えた作品は、順次フランス国内で公開が始まっていく。要するに、映画館に行けば普通にやっているのである。
今年、筆者が確認できただけでも、映画祭のオープニング作品であったカンタン・デピュー監督の『Le Deuxième Acte(The Second Act)』、メインコンペに選出されたクリストフ・オノレ監督の『Marcello Mio』、ジョージ・ミラー監督の最新作『マッドマックス フュリオサ』は、いずれも映画祭の期間中に公開されていた。
関係者しか観られないカンヌ国際映画祭の公式作品を、現地で観るのはまた格別で素晴らしい経験だ。カンヌ内の主な映画館は、映画祭のイベント会場として使用されているので、映画祭の期間中も普通に上映しているカンヌからほど近い映画館を下記にいくつかリストアップした。
カンヌ近郊映画館リスト
(ざっくり、カンヌ駅から近い順に掲載)
Cinéma Cinetoile Rocheville
Cinéma Cannet Toiles
Cineum Cannes
日本のシネコンにイメージが近い映画館。IMAXのシアターもある。
Le Casino Cinéma d'Antibes
Cineplanet Antibes
Cinéma Espace Centre
CINÉMA CGR Cagnes-Sur-Mer
日本のイオンシネマにイメージの近い、郊外の大きな商業施設の中にある映画館。Dolby Atmosのスクリーンもある。ファミリーが多い。
映画鑑賞の際の注意点
映画のスケジュール表などに、「VF」や「VO」などの表記がある。「VF」が「フランス語吹替版」で、「VO」「VOst」「VOSTFR」などの表記が「音声がオリジナル言語のフランス語字幕」である。肌感覚だが「VF」の割合が非常に多いので、「字幕版」をご覧になりたい方は注意してほしい。
ミニシアターだとそもそも公式サイトがない場合もあり、スケジュールは映画館に直接見に行くか、設置されているチラシでチェックするケースもある。
日本では会話・スマホ厳禁な映画館だが、フランスの映画館(少なくとも筆者の行った上記の映画館)は、みんな上映中に普通に話すしスマホを触る。「むむむ」と思うかもしれないが、気にしていては映画を楽しめないので「郷に入っては郷に従え」の精神で鑑賞するのが重要だ。
カンヌ近郊のバス
カンヌ近郊を周遊するには、基本的にバスが大変便利である。都心の電車のように、かなり路線が多くあるので最初は注意が必要だが、2,3回乗ると感覚が分かってくると思う。
目的のバスが来たら、手を上げて止まってもらう(上げないと止まってくれない)。バスは前から乗り、ボンジュールと挨拶、目的地を告げて先にお金を支払う。フランス語は発音が難しいので、目的地を言うのに自信がなければ、紙のメモやスマホに打ったものでも問題ない。現金も使えるが、タッチ決済の付いたクレジットカードの方がスムーズで便利だ。あとは日本のバス同様、次が降りる駅となったらボタンを押し、バスの真ん中から降りればOK。
時間通りにはなかなか来ないので、映画の上映に間に合うようにいくには十分に余裕を持って行動すると良いだろう。
おわりに
実際に来てみて素晴らしいと感じたからこそ、関係者のみのクローズドな祭典にしてしまうのは非常にもったいない。一般の観光客としても来ても、敷居が高いものではなく、全員が楽しめるフェスである。
毎年、同じ時期の開催となるので日本ではGW明け。混雑を避けて旅行をしたいという方、映画好きな方、なんかよく分からんが行ってみたいかもという方には、ぜひとも足を運んでみてほしい。
※とはいえ関係者エリア内がどうなっているか、気になるという方は併せてこちらの記事もどうぞ。
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