IT企業勤務から、今注目の”ピラティス”のインストラクターへ
注目度がどんどん高まってきているピラティス。
その中で、産前産後のピラティスに注力するインストラクターでありながら、ママさんの「日々」をサポートするプライベートスタジオhibiの代表を務める西岡千尋さんに、ピラティスインストラクターという仕事についてお話をうかがいました。
以前は一般企業に勤めていたところから、ピラティスのインストラクターに転身されたんですね。
そうなんです。身体を整えてあげて、「ありがとう」と面と向かってお礼の言葉をいただけることがとても魅力的で。もともと得意だった身体を使うことを仕事にしたかったというのもありますし。
前のお仕事は、「誰かの役に立っている」という実感があまりなかったんです。毎日とても忙しくしていて、面白い部分もたくさんありましたけど、自分でもモヤついていて。そこで、自分の好きな身体を使うという原点に立ち戻ろうと思ってやってみたら、「あ、こっちだったかも。」という感じでした。
ピラティスのインストラクターにはどうやったらなれるんですか?
ピラティスインストラクターになりたい方は、資格コースで学んで試験に合格する必要があります。日本にはピラティス団体というのがたくさんあって、それぞれで資格を取得できるようになっています。ちなみに私が講師の資格を持っているのは「BESJ」という団体のものです。
BESJでは、ピラティスを考案したドイツ人男性のピラティスさん、その直弟子のイヴ・ジェントリーさんという女性が作った”プレピラティス”というスタイルを取り入れています。
サンタフェでスタジオを開いたイヴさんは、それまでいたニューヨークとはお客さんの層が違ったので、ピラティスさんに教わったコンセプトはそのままに、もう少しカンタンな動きのプレピラティスを新たに考案します。
この動きを細かく分解し、クライアントの身体や目的に合わせてムーブメントを変化させるスタイルのプレピラティスをBESJでは取り入れています。私はBESJのピラティスインストラクターになりたい方のための、資格マスタートレーナーとしても活動しています。
確かに、ピラティス団体をパッと調べただけでも10個ありました。
そうなんですよ。結構多いんです。
いろんな流派があると、講師になろうと思った時に、どこの団体の資格を取るかってところから悩みそうです。
悩む人は割と多いみたいですね。資格を取った時は、BESJはまだそこまでの知名度がなかったので、有名な団体の資格を取った方が就職しやすいよっていうアドバイスもあったりしたんですけど、私はあまり悩まずにここまで進んで来られました。
西岡さんは産前産後のピラティスをメインに教えているそうですが、妊婦さんは妊娠中のいつからピラティスをして良いんですか?
「安定期」と呼ばれる妊娠16週以降で、お医者さんの許可が下りた方であればどなたでもOKです。
厚労省からも「妊娠中の身体活動・運動で早産および低出生体重児のリスクを増加させない可能性が明らかになってきた(※1)」と発表があったように、妊婦さんは運動を推奨されることが増えている傾向にあります。
このスタジオに来る妊婦さんも増えてきていますし、ほかにマタニティプールに通うなどして運動している方もいらっしゃいます。
生徒さんは土日に来ることが多いんですか?
土日に来られる方も多いですけど、やっぱりママさんたちは平日のお昼時にたくさんいらっしゃいます。とはいえ、私個人のレッスン本数としては1日の中でレッスンを入れ過ぎないようにしようとは意識していて。例えば、土曜は多くても6本くらいとか。その方が1本のレッスンを大切にできるんです。
レッスン1本で何分ぐらいなんですか?
50分が基本で、80分の方もいます。
それで6本って、結構な気がしますけど(笑)。
8本のレッスンをやってからダンスの練習を2時間とか、このスタジオで4本やってから別のスタジオに移動して4本やった後に、遊びに出掛けたりもしますよ(笑)。
凄い…肉体的に大変そうです。
でもピラティスをしていて良かったのは、人の身体を見させてもらいながらも、メンタルの方にもすごく気を配っているので、その人自身をよく見てあげられるということと、お仕事を通して自分の人としての成長も感じられるということです。
ピラティススタジオ自体が今とても増えてるそうですね。スタジオ開設サポートのビジネスもあるぐらい。ピラティスマシンがお高めなので、設備費用がかさむということみたいです。
確かにそれはありますね。この”リフォーマー”というマシンも大体100万円くらいしました。
100万円…!
アメリカ産なので購入の際は円安が怖いんですよ。
確かに。
この”リフォーマー”がアメリカ産で、上の階の”チェアー”というマシンは韓国産のものを使っています。本当は同じアメリカのメーカーが良かったんですけど、アメリカ産があそこのドアを通らない可能性を感じて(笑)。
韓国産”チェアー”は大体20万円ぐらい。アメリカ産だと、その倍の40万円~50万円くらいですかね。
ピラティスマシンは、業界ではアメリカ産のものが主流です。アメリカサイズのマシンだと、日本の物件に合わないことも多く、日本ではなかなかマシンピラティスができなかったというのがこれまでベースでした。
日本では先にマットピラティスが流行り始めたんですけど、それはヨガが先に浸透していたので、マットを使うヨガの施設そのまま、マットピラティスなら参入できるというスタジオさんが多かったからではないかと思います。そうして徐々にマットピラティスから広まっていって、この2~3年でマシンピラティスにも注目が集まり始めたって印象ですね。
このピラティスマシン、“リフォーマー”と“チェアー”はそれぞれどういう風に使うのか見せてもらえますか?
リフォーマーは、バネの負荷を変えることで強度や感覚を変えることができるピラティスマシンです。仰向けで寝て動けるというのも特徴の一つ。基本的に動きをサポートしてくれたり、強化したりするのに使います。
チェアーはちょっとだけ小さくて使用するスペースが狭い分、チャレンジングな動きもできるのが特徴です。
立つ・座る・寝る・階段という生活動作に近い動きを練習することができます。
日常の身体の使い方の改善を行うのは重要で、産後の方にもチャレンジしてもらっています。
頑張ったら、チェアーは自宅にも置けるぐらいの大きさですね。
そうですね、自宅に置かれてる方もいますよ。
スタジオは窓が大きいし、見える景色も良い感じです。
メゾネットになっているので、上の階と下の階がそれぞれで使えるんです。窓が大きいと日がたくさん入るので気持ち良いですよね。口コミでもよくそんなお声をいただきます。
スタジオを開くときに、スポーツアロマも絶対やりたかったので、ここならピラティスとアロマの両方ができるな、というイメージが湧いたんです。
スポーツアロマとはどういったものですか?
元々はスポーツ選手のコンディショニングのために作られたアロマトリートメントの技術で、鎮痛作用や筋肉をほぐすことが得意なアロマになります。
どこか身体の不調や痛みがあって困っているママさんに、スポーツ選手に使っているレベルのコンディショニングを、そのまま使ってみませんかという感じでオススメしています。
ピラティスを50分やった後に30分だけスポーツアロマを試してみたりとか、30分動いて+50分をしっかり目にアロマしてみるとか、いろんな形でお使いいただいています。アロマトリートメントをする時は、2階にベッドを出してやる感じですね。
自分だったら寝てしまいそう…
寝てしまう方もいらっしゃいますけど、どちらかというと、喋る方が多いんです。お客さんとはすごくたくさん話しますよ。このお仕事は、意外と動くより話すって感じ。
実は、私の夫にはいろんな実験台になってもらっていて。ピラティスをやらされ、スポーツアロマの資格を取るときにも練習台をたくさんさせられ、いろんな施術を体験したその夫が言うには、結果スポーツアロマが最高だそうです。
ピラティスはつらいらしいです(笑)。
旦那さんは身体を動かすお仕事とかではないんですか。
IT企業のサラリーマンです。
それは凄い説得力のある感想ですね…
▼産前産後ピラティスのより詳しい話はこちら
(写真:若槇由紀)
(※1)妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針~妊娠前から、健康なからだづくりを~,厚生労働省,2021
https://www.mhlw.go.jp/content/000776926.pdf
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