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身長が変わり続けたゴジラ~『ゴジラ-1.0』水上戦では目線の高さが同じに
山崎貴監督の『ゴジラ-1.0』に出てくるゴジラの身長は50.1mらしい。初代の『ゴジラ』(1954年)の50mとほぼ同じサイズ感である。
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ゴジラは邦洋を合わせるとこれまでに30本以上の映画が公開されているが、近年では新作公開の度にゴジラの身長が大きくなったり小さくなったりしているのは有名な話だろう。
ハリウッドゴジラの身長を『シン・ゴジラ』(2016年)が追い抜き、それを『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019年)が更新するというゴジラの大きさインフレが起きていたわけだが、2023年、『ゴジラ-1.0』ではそのトレンドを破って原点回帰の50.1mという設定となった。
VFXに定評があり、『ALWAYS 続・三丁目の夕日』でもゴジラを登場させた山崎貴監督は、もちろん理由なく小さくしたりなどしない。スポーツ報知でのインタビューでは下記のように語っている。
ゴジラはビルの高層化に伴って年々大きくなっていますが、実は小さい方が生々しさや現実感があって怖い。50メートルくらいだと見上げた時に目が合う感覚もあるし、ゴジラと人間を一緒に撮ることもできる
なるほど・・・!距離が近いから目が合う、別の被写体と一緒に撮影できる、どちらも作り手ならではの視点と想像力である。
加えて監督の言うように、ゴジラは高いビルが増えるにしたがって身長が伸びていったという歴史がある。この変遷も面白いので、かんたんに紹介したい。
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初代ゴジラの身長50m設定は、15作目にあたる『メカゴジラの逆襲』(1975年)まで続いた。変わらなかった(変えなくてもよかった)のには理由があって、当時の日本には、大正時代に制定された市街地建築物法の、「百尺規制」と呼ばれる建築物の高さ制限があったからである。
つまり、多くの建築物が百尺(約30m)より低い。ゴジラの巨大さを演出するには、50mという身長で十分だったのだ。
そんなゴジラの平穏に、半ば強制的な成長期がもたらされる。1964年の東京オリンピックを控えた日本には建築ラッシュ期が来ており、それまでの高さ制限が徐々に緩和されていったのだ。1968年には、日本で初めて“超高層ビル”という用語が使用された、高さ147mの「霞が関ビル」が誕生した。
同年公開の『怪獣総進撃』では、キアク星人の円盤に激突されて早速同ビルが壊れているので、日本の特撮チームの仕事は本当に早いと感心してしまう。
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まだ建物に対してゴジラが大きい
そうしてゴジラの身長が大きくなり始めるのは、平成ゴジラシリーズ(VSシリーズ)からである。シリーズの1作目、平成と言いつつ昭和に公開された1984年の『ゴジラ』では、一気に30mも伸びて身長は80mになった。東京オリンピックから20年後のことである。
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身長が伸びたにもかかわらず、周囲の建物よりも圧倒的に小さいのが分かる。ゴジラよりも、日本の高度経済成長の速度の方が早かったのだ。しかし今となっては、周囲の建物よりかなり小さいゴジラというビジュアルがなかなかレアとなり、これはこれで面白い。
その後『ゴジラVSキングギドラ』では、ついに大台の100mに乗った。続く平成シリーズの5作では100mに統一され、しばしの身長安定期に入る。
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わが地元の札幌テレビ塔(147m)の横を歩くゴジラ
そしてVSシリーズの最後の敵となった、デストロイアとの決着がついてから4年。『ゴジラ 2000 MILLENNIUM』(1999年)を皮切りにミレニアムシリーズが始まるが、なんとこの作品でゴジラの身長は縮んで55mになってしまった。
特殊技術の鈴木健二さんは、高層ビルに合わせて相対的にゴジラを大きくするのではなく、大きさを描き方で出せると考え、リアルな恐怖感を求めてあえて初代に近い55mと設定したそうだ。
確かに『ゴジラ 2000 MILLENNIUM』には、ビルの屋上にいる阿部寛さんがゴジラと対峙して、両者目を合わせながら激高する名シーンがあるが、これはゴジラの身長が55mだったからできた演出だろう。
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ミレニアムシリーズは、身長が60mになったり、また55mに戻ったり、最後には100mに急成長したりと調整が多く入る時期となった。
「平成」と「ミレニアム」の間に、隠れた名作(と私は思っている)エメリッヒ版『GODZILLA』(1998年)があるが、この作品のゴジラは前傾姿勢が強く、もはや恐竜である。一応紹介しておくと身長は60mだそうだ。
そして現在、ハリウッドではモンスターバースシリーズと銘打ってゴジラ作品が3作、そして4作目の『原題:Godzilla x Kong: The New Empire』の製作が進んでいる。間には、記憶に新しい庵野秀明監督の『シン・ゴジラ』も久々の日本産ゴジラ映画として公開され、日米間でゴジラの大きさインフレが発生する。
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日本ゴジラの最大を8m更新した、108mのギャレス・エドワーズ版ゴジラ。
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それを10.5m更新する『シン・ゴジラ』が118.5m。尻尾が長いのが特徴だ。
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さらにそれを1.3m更新し119.8m。ここまでくると誤差レベルだが、次作『ゴジラvsコング』(2021年)では、ハリウッドが最高記録保持に満足したのかゴジラの身長は変わっていない。
そして『シン・ゴジラ』ぶりの日本産ゴジラである『ゴジラ−1.0』だ。
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山崎貴監督がゴジラの大きさを50.1mに設定した理由は先述の通りだが、近年の記録更新合戦の傾向から考えると、非常に面白い路線変更だと私は思う。もちろん終戦直後の1945~47年という時代設定上、高層ビルがないからというのもあるだろう。
そして見せ場の1つであるゴジラとの水上戦では、船員とゴジラとの目線の高さがほぼ同じになっている。山崎監督も「目が合う感覚」と言っていたように、長いゴジラ映画の歴史の中でも、この目線と距離感はおそらく初めてではないだろうか。
監督の言葉をヒントに、身長とそれに伴う目線の高さという切り口で『ゴジラ−1.0』を観てみると、また新しいゴジラへの恐怖感を味わうことができる。鑑賞がこれからという方も、2回目以降という方も、ゴジラ過去作を観返したくなった方も、ぜひ試してみていただきたい。
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▼今回触れた作品リスト
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