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447 義務教育学校が増えている理由

はじめに

今日の教育コラムでは義務教育学校というものについて少しお話してみたいと思います。教育現場にいる人にはなじみがある言葉かもしれませんので、こうした学校の様子がよくわかる映像がありますので、リンク先を紹介しておきます。

義務教育学校の創設

文部科学省の今後の日本の教育の姿としていくつか検討されてきている内容の中に義務教育学校があります。
この中で、現行の小・中学校制度を基本としつつ、それらの連携や一貫教育を推進するための諸方策についての委員意見を整理したものがあります。
そこで登場するものが、現行の小・中学校制度とは異なる、新たな学校制度の一つ、義務教育学校制度です。

これまでも、義務教育を中心とする学校種間の連携や接続などを測る取り組みは気の遠くなるような時間をかけて行われてきました。
しかし、課題に気づいても小学校は小学校、中学校は中学校というように場所も離れ、人材の交流も限定的な物にとどまっている状態でした。
なかでも、小学校から中学校に進学しただけでがらりと変わる学校の様子にギャップを感じる中一ギャップの問題は、ここ数年不登校につながる問題としても関心が高まっています。
また、小学校4年生から5年生への進級に合わせて学習が難しくなるであるとか、テストが多くなる、宿題が増える、受験が気になりだすなどといった変化から生じる問題に直面している児童も新たに増えています。
いずれにしても、義務教育の9年間を一貫したカリキュラムで教育するシステムについては、研究開発学校や構造改革特別区域などで、膨大な時間をかけて実践研究をしてきているのです。メリットもデメリットも見えているはずですので、それを具体的にどのように判断して活かしていくかが問われているわけです。

実践の現場

平成28年、2016年から導入された「義務教育学校」は一人の校長の下,一つの教職員組織が置かれ,義務教育9年間の学校教育目標を設定し,9年間の系統性を確保した教育課程を編成・実施する学校のことを指します。心身の発達に応じて,義務教育として行われる普通教育を基礎的なものから一貫して施すことが学校の目的とされています。
義務教育学校の教育課程は、国の学習指導要領に準じて行われますが、学校や地域の実態に応じて9年間の枠組みの中で柔軟な編成を行うことができます。これにより、従来であれば中学校段階の教育の特徴とされてきた教科担任制や生徒会活動などを、小学校高学年段階から導入するなどの工夫を行うことができます。

広がりを見せる義務教育学校

義務教育学校の推移

令和元年には国立が3校、公立が91校と義務教育学校が100校近くになりました。その後も増え続け、令和2年には126校となりました。この背景には、少子化に伴う学校の統廃合が進んでいることも関係しています。
少子化で子どもが少なくなった学校では、問題の解決のために自治体独自の取り組みとして小中学校の9年間を一貫させた教育を行うようになりました。これが2016年度から正式に制度化されたわけです。現在では、200を超える義務教育学校があります。

メリット

個人的には次の3つがメリットですが、中でも③の自由なカリキュラムの編成ができるという点に大きな魅力を感じます。
【3つのメリット】
①「中一ギャップ」「小中ギャップ」の解消
②小中の交流がこれまで以上に促進される
③自由なカリキュラム(教育課程)の編成ができる
「4-3-2」や「5-4」などの柔軟な学年段階の区切りを設定することが容易になります。一貫教育の軸となる新教科等の創設や学年段階間での指導内容の入替え、前倒し等、一貫教育の実施に必要な教育課程上の特例を設置者の判断で実施することも認められています。

義務教育学校がこれからも増えていくことになると思いますが、その運用と実態が重要です。名ばかりの少子化による緊急的な処置のような学校運営ではこの新制度の意味がなくなってしまいます。

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