345 後期特別選抜
はじめに
今日の教育コラムでは、山梨県立高等学校における「長期欠席者等を対象とした後期特別選抜」が令和7年度入試から施行されることについて、少しお話してみたいと思います。
関心を持たれた方は、次のリンク先と資料を見ていただければより理解いただけるかと思います。
導入の趣旨と状況の変化
長期欠席者等としているのは、不登校を経験した生徒だけでなく、ヤングケアラーや病気など様々な理由で、中学校を長期にわたって欠席しているケースが存在しているためです。
不登校は、長期化する中で学校へ戻ることが困難になっていく傾向があります。それは年単位になることも珍しくなく、そうすると義務教育の内容を十分に習得できないだけではなく、授業に参加しないことにより内申点が付かなくなり、通常の高校入試の方式では、内申書の持っている持ち点により物理的に入学が困難になります。
こうした、生徒は例え地元に志望する高校があったとしても今までの選抜方式では出願することすらできなかったわけです。
しかし、今回の長期欠席者等を対象とした調査書を用いない新たな入試制度ができたことで、この特別選抜の方式を使えば状況は変わります。
具体的に
山梨県以外に愛知県や埼玉県でもこのような「長期欠席者等を対象とした後期特別選抜」は実施されています。全国的には少ない処置となっています。
山梨県内の高校入試の実情を見ていくと、独自入試を実施する甲陵以外の公立高校の入試では、基本的に自己推薦などの前期募集と中学校長が作成する調査書と学力検査で選抜する後期募集があります。
この後期募集では、調査書が学力検査と同等に重視されています。そのため、成績が付きにくい評定値が無いなどの状況になりがちな不登校の生徒にとっては、調査書の評価が著しく低くなってしまいます。そこで、調査書を除いた、学力検査に重心を置いた入試をすることで、入学を可能にしていくというのがこの特別選抜なわけです。
山梨県では、すべての公立高校でこの特別選抜を導入します。募集定員が増えるのではなく既存の定員の中に2〜4名程度を下限とした特別枠が設定されるイメージです。
特別枠での受験が可能なのは年間30日以上欠席した生徒等となっています。この中には、保健室やフリースクールへの登校で出席扱いとなっている生徒も含み、中学校長が出願を認める書類を出すことが条件となります。
自分が行きたい学校に行ける
年間で、30日以上の欠席がある中学生が10万人を超え、学校に来ても教室に入れない、いわゆる保健室登校などの不登校傾向の生徒が30万人を超えている今、どこで学ぶかよりも何を学んだのか、そしてどのくらい身に付けているのか、そしてどのように今後学んでいきたいのかが重要だということが明確になってきています。
山梨県のこうした取り組みは、未来を切り開きたいと考えている多くの生徒にとって、選択肢が広がるものであることは間違いないでしょう。運用の中で様々な課題も見えてくるでしょうが、この取り組みが全国にどのような影響を与えていくかは、こうした今後の高校入試の変革にかかっているのも事実です。
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