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340 「23区規制」


はじめに

日本には、大変に不可解な規制があります。本来であれば、経済の自由競争の原理から言えば、多くの人がその価値に気づき求めるものが残り、その反対の物は淘汰されていくわけです。
その規制というのが通称「23区規制」と呼ばれるものです。この規制により全国で唯一、大学の学部・学科の定員が増やせないようになっています。居はこの規制について少しお話してみたいと思います。

規制の目的

23区規制があることで、大学の学部・学科の新設が自由に行えません。その影響は学生の学校選択に影響が出ます。
また、定員の減少により大学経営の自由も縛られることになります。この規制は、いうならば地方大学をつぶさないための配慮なのです。多くの学生は、首都東京という国際的にも社会的にも様々な面でつながりが多く見られる環境において様々なことを経験しながら大学生活を送りたいと考えています。学生の学びと成長の機会を奪うのみならず、大学の国際競争力だけではなく一人の人間の人生を大きく左右する要因となっているのです。

規制の経緯

この規制の根拠となっている法律は、地方大学・産業創生法です。平成30年から10年間は、原則として定員を増やすことができません。しかし、一方で地方大学の一部、特に東京近郊の私立大学では定員増を図っている大学が目立ちます。23区規制により、地方創生を行い東京の大学の定員を増やせなくするという、大学の力を利用した他力本願の姿勢が見えてきます。
あくまで生き残る価値のある大学は残ればよいですし、価値のない大学は淘汰されていっても構わないわけです。ある種の護送船団方式といった事態になっていて、その影響を23区の大学が引き受けているような構図なのです。
この法律が一部改正され、内閣府と文部科学省は東京23区内の大学による情報系学部・学科の定員増を近く可能とします。
現在、未来に渡り不足が懸念されているデジタル人材の育成を目的としたこの改正ですが、それ以外の学部・学科については2027年度まで抑制される規制が残ります。

問題点

大学間の健全な競争を妨げていること自体が問題なのですが、こうした地方の大学への配慮は、長い目で見た時に地方の大学の自浄作用や再生能力を奪うことになります。
生徒の選択の自由を抑制することで、物理的に都市部への一極集中を防ぐわけですから地方大学の多くは手厚い保護を受けているに等しいわけです。
保護され続ければ、個々の大学の改革やマネジメントの工夫は進みません。すると、年々減少していく18歳人口が日本の大学全体の経営力を奪っていきます。
実際に、都内の大学に通う多くの学生の内、首都圏出身者が最も多いことは事実で、23区規制が地方からの学生の流入を抑制しているかどうかは怪しいのです。もともとこの規制は、東京一極集中を抑制させようと全国知事会が要望を出したことに端を発します。もともと、大学の設置されている地域に偏りがあったことが問題なのです。日本の学部生の約4分の1が東京に集中していて、その内18%が23区に集まっています。
大阪、愛知、京都といった都市部でも10%に満たないわけですから、偏りの大きさが見て取れるはずです。ですから、地方の18歳人口が減少しているにもかかわらず、地方から23区内の大学への入学者数は横ばいで、若者の東京集中に歯止めはかかっていません。

賛否両論ある話題ですが、大学の定員の規制により地方創生を促すという他力本願的な考え方に疑問が残ります。そして、より力のある大学が適切に生き残っていくために23区規制が必要かどうかも大きな疑問が残ります。

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