89 こごみの味~ 個性的であるということ ~


はじめに

今日の教育コラムでは、「こごみ」と呼ばれる山菜にまつわる思い出話を少ししながら、一人一人の個性についてお話ししたいと思います。
みなさんは「こごみ」という山菜は食べたことがあるでしょうか。また、お好きでしょうか。私の故郷は、山菜がとても身近に手に入る場所でしたから、春になると食卓には山菜料理がよく並んでいました。
春の山菜と一口で言ってもたくさんありますが「ウド」「ワラビ」「ふきのとう」「タラの芽」「こごみ」の五つは、それぞれの独特の風味や苦味と香りがあり、春という季節そのものを食しているようで、私個人としては、ベスト5に認定しています。なかでも「こごみ」については、祖母の思い出がたくさん詰まっているせいもあって特に大好きです。

思い出の味

あれは、私が四年生に進級した時のことです。祖母が、春山で採ってきたばかりの新鮮な「こごみ」を庭先で、竹かごから出しながら見せてくれました。それから、こごみの根元をはさみで切り、くるっと巻いた上の部分にはさまった汚れを取り除きながらこんな話をしてくれました。

「こごみはね、何億年も前から地球にあった植物で、すごく厳しい環境でも生き残ってきた種類でね、生きた化石と言われているんだよ。そうそう、こごみの頭は丸まっているだろう。これはね春先の山は、よく雪や霜が降りるだろう。そうすると葉が傷みやすいから、丸め込んだまま生えてくるんだよ。雪や霜に負けないように頑張っているんだね。」

と手を動かしながらわかりやすく話してくれました。その後、塩を入れたお湯でこごみを軽く湯がいて、かつお節をたっぷりかけて、醤油をさっとかけまし、皿のわきにマヨネーズを添えて出してくれました。少しシャキシャキした歯ごたえで、ほんのりねっとりしていて、かつお節の風味とよく合うこのこごみ料理が本当にうまかったことを覚えています。

黒緑のお湯

食べ終わった皿を下げている時のことでした。ふと、湯がいた後の鍋を見てみると、こごみの灰汁でお湯が黒緑色になっていました。何とも言えない色だったことをよく覚えています。
山菜は、個性的な風味があります。この風味を殺してはいけません。そのためには、湯がくにしても揚げるにしてもひと手間も、ふた手間も必要になります。

大人になって

祖母の山菜料理の思い出は、当時の私ではなく、大人になった私に大切なことをいつも思い出させてくれます。
それは、個性を伸ばすためには、旬(学びのタイミング)、下ごしらえ(学ぶ姿勢や気もち)、風味の活かし方(個々のスタイルや思考)が大切であるということです。まさに個性の芽生えが、さらに色鮮やかになるのが10歳から16歳ごろの子どもたちなのです。
お盆の時期になると今はもう出会えない、祖母のあの山菜料理の味が頭をよぎります。それと同時に大切なことを確認できたように思います。学期の後半をむかえる夏休みの終わりから秋口にかけては、学習の内容もその学年ごとに少しずつ高度になっていきます。
子どもたちの個性を大いに伸ばしていくためにも、気を引き締めて日々の指導に当たらなければと思う今日この頃です。

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