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229 雪国


はじめに

日本は南北に長い列島です。冬と一口に言ってもそのイメージは様々です。雪国で育った私にとっては、雪のない地域で過ごす冬ほどありがたいものはありません。
道路に雪がないだけでも気が休まりますし、家の玄関先を毎日雪かきをして通り道を作らなくて済むと思うだけでも朝ゆっくり起きることができます。
深々と降る雪は、静かに積もりそして、かいたばかりの駐車場一杯にまた同じだけ雪を積み上げていきます。
今日の教育コラムは、雪の多い地域の生活についていくつか入試問題を通して少しお話しする中で、日本の地理的な学習の中でも気候についてお話してみたいと思います。

春の黒い雪

雪国の春の訪れは、遅くなります。卒業式にまだグラウンドに一杯の残雪がなんてことはよくあることです。
少しでも、早く田畑の手入れをしようと思っても、雪がいつまでもたまっていては農作業は進みません。すると作物の種まきが遅れて生育に影響が出ます。残雪がたくさんある年は、特に雪国の雪の表面が真っ黒な炭をかぶっている景色が広がります。私には、白銀の美しい雪景色とは違って、逆に黒い雪が春の訪れを感じる喜ばしい景色に映ります。
個の黒い粉は、雪を一日でも早く消すために、雪国の農家の人がまいたものです。木炭の粉や黒い土を一生懸命に雪にまくことで、雪の表面を黒くして、太陽の熱を吸収しやすくしようとしているのです。
また、雪国のカインズホームに行くと木炭などが成分の黒い粉が「消雪促進材」という名前で売られていることがあります。こうした風景も雪国ならではのことかと思います。また、農家によっては秋の収穫の時期が終わると雑木や雑草を灰にして、黒い土と混ぜてお手製の「消雪促進剤」を作っておく方もいます。
雪国ならではの風景というとスキー場やかまくら、雪の室などは有名ですが黒い雪は少し珍しいものかと思います。

雪国の校舎

雪国の暮らしは社会の授業でも取り上げられますので、家の玄関が2階にあるとか屋根が三角で瓦が少ないなどのお話はみなさんもご存じかと思います。では、学校のつくりについてはどうでしょうか。2つほど紹介してみたいと思います。
雪国のそれも田舎の方の小さな学校のお話です。体育館はどこにあるかと聞かれたら、決して校舎の外やグランドを探してはいけません。
体育館は、校舎の2階や3階にある学校が大半です。教室の上の階を体育館にしているのは、建物が立っている土地面積を節約しているのです。
土地はたくさんあるわけですからそんな節約しなくてもと思うかもしれませんが、雪かきをする手間が省けるのでそうしているのです。
特に児童数の少ない学校では、職員も少ないですから雪かきは大変な作業になります。ですから、校舎の2階や3階に体育館が入っているそんな学校が多いのです。
もう一つは、屋上に特徴があります。屋上には誰も上がれないし、学校生活で使うことはないのですが、屋上の周囲を柵で覆っています。これは、「雪っぴ」を防ぐためです。「雪っぴ」とは、屋上などにつもった雪が、横にはみ出して落ちそうになっているかたまりのことです。校舎のわきや玄関の上から「雪っぴ」が落ちて頭にでも当たった日には命にかかわります。
ですから、そうしたことでけが人がでないように、屋上には「雪っぴ防止柵」がとりつけてあります。
「雪っぴ防止柵」は実は校舎だけではなく駅や歩道橋、商店街などいたるところに設置されています。特に道路に面した建物はこうしたものがないと走行中の車両をいためるだけではなく、大きな事故にもつながる落雪を巻き起こしかねないのです。

気候の比較

下のグラフ気象庁の資料を基にしています。これを見ると1年間の雪が降ふった日数がわかります。
北海道や東北地方、日本海側の都市で雪が降る日数が多いです。また、東京や静岡で雪が降る日数が、広島や高松、福岡よりも少ないこともわかります。東京よりも広島や高松、福岡の方が暖かいというイメージだけで降雪量を予想してはいけません。

出典 気象庁より

日本海側で雪が多く、太平洋側で雪が少ないのは、日本列島の地形と日本海を流れる対馬海流が大きく関係しています。日本に雪を降らせるのは、天気図でいうと「西高東低」と呼ばれる状態になっている時です。
日本列島の西側に高気圧、東側に低気圧があるとき、シベリアから日本に向かって、北西の方角から乾いた冷たい季節風がふいてきます。
この風が日本海をわたるとき、日本海は暖流の対馬海流が流れているため、水温よりも気温の方が低くなり、日本海から熱と水分を吸収して雲ができるのです。これが、天気予報でよく耳にする「湿った季節風」です。
この雲が日本にやってきて日本海側の地域に雪を降らせるのです。また、湿めった季節風は日本海側と太平洋側とに分ける高い山脈にぶつかります。
風が山脈をこえるときにも、空気にふくまれていた水分が雪となって日本海側に降るのです。
風が山脈をこえて太平洋側までやってくるころには、水分がない乾いた風になります。このため、太平洋側では、雲ができずに晴天となります。
東京や静岡は、日本海側との間に標高2000mをこえる山脈が高くそびえていますし、日本海からの距離が長いので、雪雲がとどきにくいのです。

例外として

場所によっては日本海側と太平洋側を分ける山脈や山地が低いところがあります。岐阜県と滋賀県の県境に近い「関ヶ原」や兵庫県の篠山盆地や広島県の三次盆地、中国山地の盆地があるところでは、雪雲が低い山を乗りこえて、名古屋や広島、高松など太平洋側や瀬戸内海の地域にまで雪を降らせることがあります。九州でも湿った風をさえぎる高い山がないので、雪が降ることがあるというわけです。

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