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58 国際理解(international understanding)


はじめに

国際理解を深めるための教育は、学校現場でも様々な場面で行われています。こうした教育を国際理解教育という言葉で表します。国際理解教育は教育の一つの分野として、その目的も次のように明確になっています。

【国際理解教育の目的】
「国際化した社会において、地球的視野に立って、主体的に行動するために必要と考えられる態度・能力の基礎を育成すること」

この目的に対して、子どもたちの国際理解がどのように育まれているかを見ていくためには、次の3つの視点でその成長を見ていくことができます。
・異なる文化をもつ人々を受容し、共生することのできる態度や能力が育っ
 ているか
・自らの国の伝統や文化に根ざした自己の確立ができているか
・自らの考えや意見を発信し、具体的に行動する態度や能力が身についてい
 るか
この3つが育っていると、自分というものをしっかりもって、他者を受容し共生しながら、発信し行動できるようになるわけですが、こうした力が国際社会では重要であると言い換えることができるわけです。

エピソード

私が、国際理解を深めたり、国際理解教育に関心を高めたのはある体験がもとになっています。
あれは、確か今から25年ほど前のことです。トルコのコンヤと呼ばれる街に学校をつくるという活動に参加した時のことです。現地に小さなささやかな学校が完成し、そこで2週間子どもたちに学校での過ごし方や勉強を教えるために初めてトルコを訪れました。もちろん、私のつたな過ぎる片言の英語はほとんど通じませんでした。
ですから、笑顔と身振りと気合と情熱と得意のイラストで何とかかんとか子どもたちと意志疎通を図りながら,他のメンバーと一緒に短い期間ではありましたが、精一杯に教えきりました。現地では学校に寝泊まり、時間があれば地元の子どもたちに街を案内してもらいました。子どもたちと過ごした時間は今でもかけがえのない思い出です。
帰国する前日、いつも同じランニングの白いシャツに短パンで、裸足で学校に来ている男の子が夕方に学校を訪ねてきました。その男の子はいつも私に優しくしてくれていた子でした。私の手を握って一生懸命に自分の家の方に引っ張っていってくれました。
街の向こうに沈む夕日のオレンジ色が、質素な家々を美しく染めていた風景がとてもきれいでした。しばらくそんな景色を眺めながら歩いていくと彼の家族が家の前で出迎えているのが目に留まりました。簡単な挨拶をして、学校に戻ろうとすると、彼が今日は僕の家族と一緒に夕食をとろうと、誘ってくれました。
嬉しい反面,申し訳ないような気もちが心のどこかにありました。机の上に用意されていたのは,煮込み料理とパンのような小麦の生地を焼いたものでした。とてもいい香りのするその料理は,羊の肉をじっくり煮込んだものの上にヨーグルトがかかった料理で,お母さんの得意料理だと彼が嬉しそうに説明してくれました。
ほろほろとほぐれるほど煮込まれていて,ヨーグルトとこんなにも合うのかと思うほどおいしい料理でした。ソースがおいしくて,薄いパンに付けて食べたらもうとまらない旨さでした。
食べ終わり,いつもリュックに入れてあった日本昔話の本をお礼にプレゼントし,お別れをしました。学校に戻って寝袋に入り、天井を見つめてしばらく、朝日が昇るまで考えたことが「貧しさ」への捉え方でした。彼と彼の家族の心のこもったもてなしが、自分の曇った目を覚まさせてくれました。

知ることからはじまる

国際理解と一口に言っても、この世界が抱える解決のできない大きな問題の数々を見ればわかるように、その過程はとても難しいものだと言えます。
視野を広げ、多くの人と出会い、共に時間や空間や食事を共にして初めて気がつくことがあるように、子どもたちが国際社会について学び続けていくことは、とても多様で多面的な学びを必要とします。
そのためにも世界を知るという経験を様々な形で増やしていってほしいと思います。きっとそのことが国際理解を深めていく大きな基盤となるように思います。夏休みという貴重な時間を用いて、ボランティア活動や国際交流に取り組むことで、そうした機会を作り出してみてもいいかもしれませんね。

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