見出し画像

212 日大アメフト部の廃部


はじめに

日本大学アメリカンフットボール部は、日本大学競技スポーツ部に所属しているアメリカンフットボールチームの一つです。赤いユニフォームのこの強豪チームは、フェニックスの愛称で呼ばれています。
アメリカンフットボールの大学日本一を決める甲子園ボウルでは、出場・優勝回数が多い「日本大学と関西学院」の試合は、「東の日大、西の関学」と呼ばれ、赤と青のユニホームが激突する名勝負とされてきました。1955年から続く両校の対決は、両校ともに2017年までに26回の優勝を重ね続けるといった、一歩も引かぬ名勝負ばかりでした。
そんな日大のフェニックスが不死鳥という名を捨てる瞬間が、廃部という形でどうやら訪れそうです。

結果として廃部なのか廃部という結末なのか

日大の不祥事は、ここ数年にわたり続いています。アメフト部はその中心的な存在で、それにかかわる多くの人々が不幸な結末に至っています。
中でも、アメフトを一生懸命に取り組みたいと考えていた学生には、無期限の公式戦への出場停止や部活動の停止、そして廃部といったように夢を絶たれたのではないでしょうか。
違法薬物の広がりを指摘されながらも、調査し対応してこなかった大学の対応は事の重大性を深刻なものへと変えてしまいました。
そして、今回、伝統ある部活を廃部にすることで問題の終息を試みているわけですが、この選択により学生は再起するチャンスを奪われたことになります。まさにフェニックスの終焉といったところです。
こうした強豪チームの廃部というと野球の名門PL学園の野球部の廃部が頭によぎります。両者に言えることは、強さを求めること、成果主義にとらわれすぎた先に待っていたのは廃部ではなかったのかと思えてきます。

育成年代で重要な視点

育成年代と呼ばれる世代への指導として重要なことが3つあるとされています。一番大切なのは、スポーツに関わらずですが「豊かな人間性」を育んでいくという意識をもつことです。これは正しい価値観を身に付け、理性的な判断ができる大人になれるように関わることが大切であるということです。

①選手の成長に焦点を当てる関わりを考える
それぞれの選手にとって何が最善であるかを考えることが重要です。それぞれの選手を可能な限り成長へと導くことが育成における目標といえます。つまり、チームとしての成績ではなくて、子どもたち個々の成長を第一に考えることがまずは重要なのです。

②可能性を広げる関わりを考える
様々な可能性を手にするためのベースを身につけるという意識で指導することが大切です。学校や家庭で学習する内容のような、将来的に必要となる力や物の見方を身に付けることを最大限に優先させなければいけません。学業を犠牲にしてまで取り組むような過度なトレーニングを重ねていけば、子どもたちは疲労し、学業に差し障るようになります。そうしたことは望ましくないのです。ましてや薬物を利用しなければならないほどのハードな練習や寮を抜け出したくなるような深刻な体罰はあってはならないわけです。

③それぞれの競技への適切なアプローチ
育成指導者は選手としてどうなるかどうかだけを見ていてはいけないのです。子どもたちには、先の長いそれぞれの人生があることを意識しなければいけません。つまり、プロ選手になってもなれなくても、選手後の世界を生き抜く力を身につけていなければならないわけです。

自分からやろうとする気もち

「自ら考え行動する」という言葉を自主自立と自主自律という言葉で表すことがあります。「自主自立」とは、自分のことは自分の力で行い、他人に依存しないことを意味します。また、「自主自律」とは、他人や周りからの干渉や制約を受けずに、自発的に自分自身で考えて行動し、自分自身の規範意識に従って己を律することを意味します。
この自主性と自律性を兼ね備えるということがどれほど難しく、すべての学習の進め方や生活に関わってくるかを、社会生活を重ねている私たち社会人には痛いほどわかります。
今回の日大の不祥事を見ている、自分自身の規範意識を正しく育むことの重要性がいかに高いのか、そして、その規範意識を育てることこそが、小さいころの教育の本質の一つなのだと思うわけです。

これから

顔をさらされ、名前をさらされ、そして部活を廃部へと結果として導いてしまった学生たちをこれ以上たたき続けることよりも、教育の本質をいかに追及していくかを大学経営者が深々と見つめ直すように指摘することの方が重要だと考えます。
SNSなどで、アメフト部に関わる過去や現在の人々を誹謗中傷する行為が散見されますが、そうした行為は人を傷つけるだけで教育的な効果はありません。日大のアメフト部が自分たちの力で蘇る機会と場を奪うことで、大人がまた、自分の都合で彼らの大切な学びなおしの機会を消し去ってしまったのではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?