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【石川篇】日本全国の支援団体と就労支援で繋がりたい「全国出張プロジェクト」

プロジェクトの背景

こんにちは。
NPO法人ダイバーシティ工房で、アウトリーチ事業部マネージャーを務めています、さとゆーこと佐藤です。

ダイバーシティ工房では、2022年7月から翌年3月にかけて「全国出張プロジェクト」と称し、
全国各地の子ども若者支援に取り組まれている団体さんの活動を直接見に行く取り組みを開始しました。

プロジェクトを通して、全国の団体さんの活動を勉強して私たちの本拠地・市川市の地域づくりへ還元したり、
むすびめに来られる全国の利用者さんへの情報提供・連携に活かすことが目的です。

「むすびめ」とは
こどもと家族の総合相談LINE窓口です。
生活をする上でのちょっと誰かに話したいこと、知りたいことどこに相談していいかわからないことについて、情報をお伝えしたり、一緒に考えたりする無料のLINE窓口です。内容や年齢にかかわらず、だれでもつかうことができます。
誰かの手を借りたいなと思った時に、ちょっと相談してみると、新しい繋がりが見つかるかもしれません。
生活の困りごと、悩みごとを、ちょっと話してみませんか?

今後こちらで記録を公開しながら、日本全国の支援団体から得た学びを共有したいと思います。


過去のレポートはこちらです。


ファンの多い佛子園さんへ

今回、石川県は佛子園さんを訪問させていただきました。
以前、むすびめでスタッフ向けのオンライン研修をしてくれた方が「輪島KABULETわじまカブーレ」でリモートワークをされていて、調べてみると、母体の佛子園さんは「輪島KABULET」のみならず、他にも多数の福祉・就労施設や飲食・温泉施設を手掛けておられました。

弊法人内にもファンが多く、今回の就労に関することでもお知恵をいただけるのではないか?ということで視察させていただきました。

たくさんある施設の中から、以下の6施設を拝見することができました。

1日目「B's行善寺」
2日目「三草二木 西圓寺」「美川37café」「エイブルベランダBe」「キッズベランダBe」
3日目「Share金沢」

今回の視察メンバーは、普段は学習支援を中心に取り組みながら、地域との関わり方について深く関心を持つ者同士の編成になりました。
今後私たちも地域の中で実現していきたい『暮らしの中に溶け込む福祉』のあり方の学びを市川に持ち帰るべく訪問させていただいた、3日間のレポートを共有します。


支援する側、される側が決まらない空間

初日はまずB's行善寺にて、理事の速水さんからお話を伺いました。
まずはB's行善寺がどのような施設なのか?というと、
保育園、児童発達、放課後等デイサービス(放デイ)、フィットネスジム、お花屋さん、カフェなどで構成される「B's」と、
天然温泉、お蕎麦屋さんとともに、高齢者通所介護・短期入所施設、障害者就労施設の2つの側面を持つ多機能コミュニティ拠点の「三草二木 行善寺」で構成された施設です。
また、周辺のまちなかには、知的障害者の方向けのグループホームが点在しているということでした。

「行善寺」入り口。風情があります
地域住民や近郊の大学生が自由に活用できる「住民自治施設」

子どもからお年寄りまで、文字通り誰でも気軽に集まれる場所になっています。
就労継続支援の場でもあるので、障害をもつ方々が接客や清掃を行うスタッフとして働いている姿があちらこちらで見られました。

施設内を巡ってみると、
近所の方々の卓球大会の賑やかな声が聞こえたり、ある場所を覗くと、「どうぞ入って!」と元気よく声をかけてくれる人がいたり。

歩いていると、建物の中に入るのをためらっていた私を引っ張って中まで案内してくれたスタッフの方がいました。

その壁のない対応をしてくださる姿を見て、速水さんが「(障害をもったスタッフは)私たちが超えられないものを軽々と飛び越えてくれる」と話していた言葉の意味を実感しました。

施設内では、利用者もスタッフも区別なく過ごせるようユニフォームがなかったり、あえて貼り紙や標識を少なくしたりしているため、誰かに声をかけることを通して、自然と会話が発生するような仕掛けがしてあるのだそうです。

お花屋さんの中にあるカフェで一休み。  ケーキと、ハーブのドリンクをいただきました。

カフェでおいしいケーキをいただいた後、速水さんから再び行善寺のあり方についてのお話をじっくりと伺うことができました。

多くの場合、入所施設という場所は集団で活動するため、起きる時間から食べるものまで色々なことを利用者自身が決められない場合が多くあります。

私がふだんの生活で自ら選択していると感じられることも、施設の中の生活だとそうはいかない。速水さんのお話を聞いていると、この違いについてや、「普通の生活」とは一体なんなのだろうかということを考えさせられました。

B's行善寺では、そんな不自由さを象徴してしまうような「施設らしさ」を極力なくし、一人ひとりが自由に過ごせる空間が作られているのだということを、その風景を目の当たりにしながら実感しました。


寺、温泉、ジム、カフェ、駅

三草二木さんそうにもく 西圓寺さいえんじ」は、後継ぎがいなくなり廃寺となったお寺をリノベーションしてできた、天然温泉+マッサージ+アロマテラピーなど、「湯治」トリートメントのあるコミュニティーセンター。

こちらは「西圓寺」。風景とロゴのコントラストがおしゃれ

フィットネスジム、カフェもあり、私たちが訪れた際は、フィットネスジムで近隣のお年寄りの方々が集まってエクササイズをされていました。

また、こちらでも就労継続支援B型・生活介護・高齢者デイサービス・放課後等デイサービス・児童発達支援を兼ねているので、障害をもつ方がスタッフとして利用者として過ごす姿が見られました。

工房スタッフも、足湯で一服

美川37Workとして就労継続支援A型による駅舎の指定管理をされている美川駅構内にあるコミュニティースペース「美川37caféみかわみんなカフェ」も拝見しました。

駅の待合室なので、カフェで飲食しなくても過ごすことができます。
駅の中とは思えない、北欧ヴィンテージのおしゃれなテーブルやいすが置かれ、ゆっくり過ごしたくなる雰囲気です。
ギャラリースペースもあり、近所の学生が集まってきたり、音楽ライブが開催されることもあるのだとか。
カフェメニューは、美川の特産品にこだわっており、近隣の加工食品メーカー、精肉店の食材と名を用いたメニューも揃えられ、地域もこのカフェをすごく応援してくれるのだそうです。

「美川37Cafe」の中。駅内部にこんな空間があるなんて

放デイ・就労継続支援B型・児童発達支援を行う「ベランダBe」は2拠点あります。

アートプログラムを実施する「エイブルベランダBe」では、子どもたちがデザインしたTシャツの製造・販売もしておられるようで、障害をもつ方々がスタッフとして、プログラムの準備を進めているのを拝見しました。

自然活動プログラムを実施する「キッズベランダBe」は、素敵なログハウスの建物。中を通り抜けると、小川と竹林に囲まれた広い庭が!遊具もあり、思いっきり走り回れる空間でした。


色々なものを掛け合わせて空間をデザイン

Share金沢シェアかなざわは、障害児入所施設を軸に、サービス付き高齢者向け住宅、学生向け住宅、学童、ウクレレクラブ、ドッグランなど、色々な施設・団体が集まっている、1つの小さな町のような場所です。

経営企画室長の奥村さんによると、
もともとは行善寺の児童入所施設の移転先として始まりましたが、広大な敷地を活かして、学生・お年寄り・地域の住民が集まる仕掛けを作っていった成り立ちがあるそうです。

「西圓寺のように、地域に開かれた入所施設にしたい」という思いでスタートしたものの、西圓寺とは地域性も異なるため、温泉1つで人々を集められるというわけではありませんでした。
そこで約11,000坪(!?)の広大な敷地を活かして、学生向け住宅やサービス付き高齢者向け住宅、ドッグラン、ライブハウスなどをつくったり、外部の団体・個人事業主などを誘致したとのこと。

ライブハウス モックCafe & Bar

例えば、金沢は学都なので、もともと大学生が多い。学生さんには、家賃を相場の半分にするかわりに、月目安で30時間ほどは施設内の子どもたちや高齢者と過ごすために使ってくださいとお願いしたり、
マッサージ師さんには、事業所を建ててかつ家賃も無料にして自由に運営してもらうかわりに、入所施設の子どもたちのマッサージをやってもらったりするなど、できるだけ継続的に関わってもらうために「お金を介在させない関係性づくり」を大切にしているそうです。

学生がいて、スタッフがいると、10~60代の年代の人はいる。
だったら、サービス付き高齢者向け住宅を作れば、70歳以上の人が来てくれて、どの世代の人もいる場所になる。
アルパカがいれば、近所の親子連れが来てくれるのでは?ドックランを作れば、近所の人が散歩しに来てくれるのでは?という風にいろんなことが発展してきたとか。

施設内には、なんとアルパカも…!

また、福祉施設は色々な決まりがあって、(例えば、幅6m以上の公道に面していないといけない、同じ敷地内に入所施設とグループホームは建てられないなど。)やりたいことを実現するためには、制度の勉強もかなりされたそうです。


人々が交流し、混ざりあうことで障害への理解も深まる

視察したどの施設も「ごちゃまぜ」をテーマにデザインされていて、見事にそれが実現されていました。
福祉施設だと、どうしても支援者と利用者に分かれてしまいがちですが、佛子園の施設ではそれを全く感じませんでした。
障害を抱える方がスタッフとして働き、お年寄りが子ども達を見守り、近所の方々がその中でご飯を食べている…そんな空間が自然にありました。
佛子園ではどこまでも人が中心。


これまで施設を作る際には、地域の人から反対の声もあったそう。「迷惑施設だ」と。
でも、今は地域の人が自然に訪れ、障害を持つ方々と過ごしている風景があります。

人々が交流し、混ざりあうことで、子どもを見守る目が増え、お年寄りの孤独もなくなり、障害への理解も深まる。
誰かが地域から隔離されることなく、みんなが地域の中で生き生きと暮らしていける。

「ごちゃまぜ」の発想で、色々なものを掛け合わせて空間をデザインしている佛子園さんを見て、市川ではどうだろう?どんな場所がある?どんな人がいる?と、改めて活動拠点である市川に目が向きました。これからは地域を歩く時、近隣の方々と話をする時の視点が変わってくると感じました。

「地域と一体化した福祉」「地域づくりという文脈で捉える支援」といった点で、本当に学びの多い視察でした。

視察中、その様子を報告したSlackのチャンネルには、今回出張には行っていないメンバーから「こんな場所が作りたい!」というメッセージをはじめ、たくさんの反応がありました。

私たちはどうやろう?そう考える日々がすでに始まっています。

無添加手づくりの西圓寺味噌

次回の出張記は中国地方篇を予定しています!
引き続き学びを共有させていただきたいと思います。どうぞお楽しみに。


「全国出張プロジェクト」は認定特定非営利活動法人育て上げネットとREADYFOR(株)による休眠預金活用事業の支援を受けています。


ダイバーシティ工房は「制度の狭間で孤立しやすい人たち」が、困った時にいつでも相談できる地域づくりを目指し活動するNPO法人です。

SNS相談むすびめのほか、学習教室、コミュニティカフェ、保育園、食料支援、シェルター運営など地域の0歳~20歳の子ども・若者とその家族を主な対象に活動を行っています。

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