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【北海道篇】日本全国の支援団体と就労支援で繋がりたい「全国出張プロジェクト」

プロジェクトの背景

こんにちは。
NPO法人ダイバーシティ工房で、アウトリーチ事業部マネージャーを勤めています、さとゆーこと佐藤です。

ダイバーシティ工房では、今年度の7月から3月にかけて「全国出張プロジェクト」と称して、
全国各地の子ども若者支援に取り組まれている団体さんの活動を直接見に行く取り組みを開始しました。

プロジェクトを通して、全国の団体さんの活動を勉強して私たちの本拠地・市川市の地域づくりへ還元したり、
むすびめに来られる全国の利用者さんへの情報提供・連携に活かすことが目的です。

「むすびめ」とは
こどもと家族の総合相談LINE窓口です。
生活をする上でのちょっと誰かに話したいこと、知りたいことどこに相談していいかわからないことについて、情報をお伝えしたり、一緒に考えたりする無料のLINE窓口です。内容や年齢にかかわらず、だれでもつかうことができます。
誰かの手を借りたいなと思った時に、ちょっと相談してみると、新しい繋がりが見つかるかもしれません。
生活の困りごと、悩みごとを、ちょっと話してみませんか?

今後こちらで記録を公開しながら、日本全国の支援団体から得た学びを共有したいと思います。

第1回「全国出張プロジェクト」7月沖縄篇はこちら。


今回、9月に訪問したのは北海道!

実はむすびめには一時期、北海道から多くの利用者さんがいらしていました。
利用者さんから話をお伺いすると、同じ北海道でも地域によって違いがあるようで、社会資源の有無にもかなり差があるようでした。

そういったこともあり、今回は北海道にてご縁のあった2団体さんにお願いして、北海道のうち札幌市・釧路市の視察に行くことになりました。

1日目「公益財団法人さっぽろ青少年女性活動協会(通称SYAA)」
2日目「NPO法人地域生活支援ネットワークサロン」


「アウトリーチ」「学習支援」に関わるシニア・新卒スタッフ混合の3人が参加しました

今年度入職したばかりの新卒スタッフA。
「新卒の自分が手を挙げていいのか悩んだけど、こんな機会なかなかないから」と、今回の出張プロジェクトに真っ先に手を挙げてくれました。
彼女が、2泊3日の研修を終えた時にどんな感想を話してくれるのか楽しみだな...そんなことを思いながら出発しました。

最初の訪問地は札幌市。
成田空港から飛行機で向かい、札幌に着いた時の第一声は、「涼しい〜〜!」さすがは北海道です。
陽の当たるところに出るとまだまだ汗が出ますが、それでも蒸し暑い関東に比べてよっぽど過ごしやすい環境でした。

昼食の海鮮丼にイクラを追加トッピングして感動し、時計台や大通公園やすすきののニッカの看板でいちいち盛り上がるなどしながら、目的地へ向かいます。


何気ない交流から大切なつながりを生み出す

まずお伺いしたのは「公益財団法人さっぽろ青少年女性活動協会(通称SYAA)」の皆様の拠点です。

SYAAは、札幌市において児童館・学習支援・居場所支援など、子ども若者支援にとても幅広く取り組まれている団体さんです。
法人内では「定山渓自然の村」のようなキャンプ場や、「こども人形劇場こぐま座」といったような劇場も運営されており、
拠点は400ヶ所以上、職員は2000名以上!
以前、私たちの運営する地域の学び舎「プラット」のことについてお問合せいただいたことが縁となり、今回訪問が実現しました。

◯若者支援の拠点「札幌若者支援総合センター」
◯札幌市で一番最初に作られた児童館「中島児童会館・こぐま座」
◯子どもと家庭向けの居場所支援拠点「いとこんち」「ひとてま」
といった施設を見学させていただきながら、
私が何より感じたのは地域とのつながりの強さでした。

特にびっくりしたのが「みんなの休憩所・ひとてま」の成り立ち。
もともと民泊施設を借りて始めた「いとこんち」で、ある日利用していた子どもが、窓の外のご老人に手を振っている様子を見たスタッフさんが、ご老人に声をかけたところ、
なんとその方は周辺の地域の地主さん!
活動趣旨をお伝えすると、快く協力をお引き受けくださり、近くの空き家を「ひとてま」の拠点としてご提供くださったのだそうです。

その地主さんは家庭菜園もされており、「いとこんち」「ひとてま」を利用するお子さんたちに野菜を収穫する体験をさせてくださったりもしているそうです。

地域の皆様との何気ない交流から生まれるつながりを本当に大切にされていることが伺えるエピソードでした。
今回案内をしてくださった子ども若者支援事業部長(「いとこんち」の「お風呂部」部長!)・松田さんをはじめとしたスタッフの皆様のお人柄も本当に素敵でした。
夜は一緒にジンギスカンを食べて盛り上がり、楽しい時間を過ごさせていただきました。


「利用者」「支援者」という壁を超えてだれもが一人の人間として尊重される光景

2日目の夜からは釧路市。
漁港が近く、繁華街がとっても広い!かつては新宿歌舞伎町よりも栄えていたというので驚きです。
しかしながら最近は御多分に洩れず少子高齢化の煽りを受けているようでした。
期間限定のビアガーデンを横目に、ホテルで一泊。

ところで、出張期間中はスタッフ3人で毎晩振り返りを実施したのですがこれがまた白熱しました。
日中歩き通しでヘトヘトなのに2時間も3時間も話すので、なんだか青春!しているようでした。

さて訪問したのは、「NPO法人地域生活支援ネットワークサロン」の拠点です。

こちらも幅広い活動に取り組まれている団体さんですが、「ネットの居場所ポータルサイト 死にトリ」というサイトも運営されており、
リアル空間にとどまらずネットの中でも若者支援に取り組まれていらっしゃいます。

代表の日置真世さんには、ダイバーシティ工房で研修を実施いただいたりイベントで登壇していただいたりして、以前からたくさんお世話になっていました。
遠く釧路でなかなかお会いする機会も作れませんでしたが、今回初めて、リアルでお会いすることになりました。

当日は「まなざし」というイベントが開催されており、私たちも一参加者として参加しました。
「自己へのまなざし・他者へのまなざしについて対話を行う」というプログラムでしたが、
そこで驚いたのは、支援の現場にありがちな「利用者」「支援者」という壁がほとんど感じられなかったということでした。

実はイベント前夜、ある拠点でおいしいスープカレーをいただいたのですが、私たちがその頃から薄々気づき始めていたことは、
「とにかく皆が分け隔てなく互いに気を使わずに過ごしている」ということでした。

食べるも自由、語らうも自由、寝っ転がるも自由。
しんどいときに使える「保健室」スペースもありました。
まるで我が家のように過ごされている方に話を聞くと「今日初めてここに来ました」という方だったり...!!

本当に?こんな感じでいいの?と最初は面食らい、戸惑っていた私たち3人でしたが、利用者の方と話を重ねるうちにだんだん居心地の良さを感じるようになっていきました。

また、ネットワークサロンのホームなどを利用されている利用者の方が、自らの体験談をベースにして「今後どうすればよいか」を語り合う(「事例検討会」と呼んでいました)場では、
利用者の方が、壮絶な体験をまるで隠すことなく明朗に話されていたことが印象的でした。

私たちが同じような経験をされてきた方にお会いするとき、多くの方は話すことを拒んだり、話した後でそれを後悔したり。
そういった姿を見ていたからこそ、だれもが一人の人間として尊重されながら、自分の価値観でもって対話に臨まれていたのは圧倒的な光景でした。

私たちの法人で、利用している皆さんと同じことができるのだろうか?できるとしたら、どのようにすればいいのだろうか?何が必要なのだろうか?
そんなことを考える機会になりました。


「自分が動く」のではなく、「どうすれば周りの人が動くのか」

出張を終えて振り返りを実施しているときに、以前地域支援団体で働いていたスタッフBが、こんなことを言いました。
「前の職場で、『私たちは黒子の存在であるべき』と教わった。地域とはみんなで作るもので、自分達だけが作ろうとするものでは無いと。
そして松田さんや日置さんの姿を見ていると、『自分が動く』という発想ではなく、『どうすれば周りの人が動くのか』という視点が常にあるように感じられた。
地域のことをこんなに考えられている方がいるなんて思わなかった。」

私はこの言葉から気づいたことがありました。
一つは、地域で活動している同じ支援団体同士の「横のつながり」を「地域づくり」へとつなげていくことの難しさです。

地域で活動するとき、「横のつながり」という言葉はとてもよく聞かれます。
しかしながら、日々現場での業務量に忙殺されてしまっていると、次第にその言葉はお題目のようになっていき、
自分の担当以外の地域に目を向けることができなくなっていってしまうことは少なくありません。
そんな状態が、スタッフBの「いるなんて思わなかった」という発見に現れているのかもしれません。

もう一つは「自分が動く」という発想ではなく、「どうすれば周りの人が動くのか」を考えること。
目の前のことに忙殺されて短視眼にならず、ときにフィールドに出て、他の人がどう動いているかを知ること。
そして自分の地域の周りの人が動けるにはどうしたら良いかをよく見ること。
それが、地域と共に暮らしやすさを作り出すことを目指す我々が大事にしなければいけないことだと感じました。
スタッフBも、「もっと自分たちが地域に出ていくことができるのかもしれない」と、今後を見据えていたようでした。

そして新卒スタッフA。
出張中は本当に楽しかったようで、幾度となく「帰りたくない〜」と話していましたが(笑)、
彼女もたくさんのことを学んで帰ることができたようでした。

「この先のダイバーシティ工房の未来、こういうこともやれたらいいよね、ああいうこともやれたらいいよねというワクワク感が生まれた」
と振り返りで話していた彼女は、帰ってきてから早速同僚に出張での出来事を話して、「こんなことをやってみたい」をアピールしているようです。

新卒スタッフAのフレッシュなアピールが、今年10周年を迎えたダイバーシティ工房の、次の10年を生み出していくのかもしれません。
そんなスタッフたちの姿に私も刺激を受けつつ、今後具体的にどういったことに活かしていけるのか考えていきたいと思います。

次回の出張記は10月ごろ、大阪・神戸を予定しています!
引き続き学びを共有させていただきたいと思います。どうぞお楽しみに。



「全国出張プロジェクト」は認定特定非営利活動法人育て上げネットとREADYFOR(株)による休眠預金活用事業の支援を受けています。


ダイバーシティ工房は「制度の狭間で孤立しやすい人たち」が、困った時にいつでも相談できる地域づくりを目指し活動するNPO法人です。
SNS相談むすびめのほか、学習教室、コミュニティカフェ、保育園、食料支援、シェルター運営など地域の0歳~20歳の子ども・若者とその家族を主な対象に活動を行っています。

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