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【大阪篇②】日本全国の支援団体と就労支援で繋がりたい「全国出張プロジェクト」

プロジェクトの背景

こんにちは。
NPO法人ダイバーシティ工房で、アウトリーチ事業部マネージャーを勤めています、さとゆーこと佐藤です。

ダイバーシティ工房では、今年度の7月から3月にかけて「全国出張プロジェクト」と称して、
全国各地の子ども若者支援に取り組まれている団体さんの活動を直接見に行く取り組みを開始しました。

プロジェクトを通して、全国の団体さんの活動を勉強して私たちの本拠地・市川市の地域づくりへ還元したり、
むすびめに来られる全国の利用者さんへの情報提供・連携に活かすことが目的です。

「むすびめ」とは
こどもと家族の総合相談LINE窓口です。
生活をする上でのちょっと誰かに話したいこと、知りたいことどこに相談していいかわからないことについて、情報をお伝えしたり、一緒に考えたりする無料のLINE窓口です。内容や年齢にかかわらず、だれでもつかうことができます。
誰かの手を借りたいなと思った時に、ちょっと相談してみると、新しい繋がりが見つかるかもしれません。
生活の困りごと、悩みごとを、ちょっと話してみませんか?

今後こちらで記録を公開しながら、日本全国の支援団体から得た学びを共有したいと思います。


過去のレポートはこちらです。


業務を細分化し、得意を見つける

前回に引き続き、10月の大阪市の視察レポートをお届けします。
訪問した合計5団体11拠点の内、前半の1日目と2日目は前回でお伝えしています。

今回大阪篇②は後半、3日目、4日目のレポートです。

1日目「認定NPO法人こどもの里」
2日目「NPO法人HELLOlife」
3日目「株式会社TECTEC」「認定NPO法人D×P」
4日目「NPO法人み・らいず2」


3日目に訪問させていただいたのは、株式会社TECTECさん。

「不自由」を「自由」に変えていく、ということを理念に活動をされている企業さんです。
障がい福祉サービス「TECTECスクール」を視察しました。

障害を抱える方を対象に、DTPやゲームデバッグ(※)、WEBデザイン・コーディングなど、業界で実用的なクリエイティブスキルを学べる場を提供しています。

※ゲームデバッグとは・・・テストプレイを繰り返し、バグをチェックしてゲームの品質を保つためにバグを発見する作業のこと。その仕事をする人のことをゲームデバッガーと呼びます。

説明してくださった平安名さんは、福祉の現場での仕事にバックグランドを持つ方で、放デイなどについての鋭い視点と思いがある方でした。

講師はプロのデザイナーやプロジェクトマネージャー。本業を抱えながらでも、オンラインでつなぐことで、TECTECスクールの授業も受け持つことができるしくみです。

スクールの3階。兼業する講師がコワーキングスペースとしても使うことができる

TECTECさんでは、このスクールを就労移行支援やB型の事業所ではなく、自立訓練という形態を取っています。
就職しなきゃというバイアスがある就労移行支援や、工賃が発生するB型事業所よりも、
一人ひとりのフェーズに合わせてやっていくことや、本人の行き先を考えると自立訓練という形があっているという判断だそうです。
利用者さんにも様々な方がいて、状況が一人ひとり異なる中でも、何か成長につなげてもらえたら、という思いも。

デザイナーを育てること自体が目的ではなく、制作、請求、納品管理、全て1人でやるのは大変だけれど、その中でも、納期通りに仕上げるのが得意だな、とか、書類作成が得意だな、というのを見つけていき、楽しく自信につなげてほしい。
そのために、その業務をどれだけみんなで細分化できるかに注力しているとのこと。
自分の作った名札や作品を持ち帰ることができるのも、他と違う所です。

著名なゲームクリエイターさんが、特別講師として来校していることも

支援につながりづらい若者に接点を持つ活動に敬服

認定NPO法人D×Pさんの視察では、 事務局にお伺いをしてさまざまな形で行われる若者支援活動についてお話を伺いました。
はじめにお話を伺った「生徒と社会をつなぐ事業部」マネージャーの野津さんは、いわゆる「グリ下」での活動を始めようとされていらっしゃいます。

SNS上で「グリ下」と呼ばれる場所に、互いに見知らぬ少年少女が集まる現象が起きている。大阪・道頓堀の観光名所であるグリコの看板のたもとだ。新型コロナウイルス禍で、飲食店や商業施設が時短営業や休業を余儀なくされていた今年の夏頃から、若者たちの「居場所」となっている。一方、未成年の飲酒やけんかなど、トラブルにつながるケースもあり、大阪府警は見回りの強化などに乗り出している。

読売新聞オンライン 2021/11/29
https://www.yomiuri.co.jp/national/20211128-OYT1T50087/

東京でいう「トー横」が大阪になると「グリ下」。子どもたちは学校とか家庭に居場所がなくて集まっています。ただ、もともと繁華街で搾取の対象になってしまうなど危険とも隣り合わせです。
D×Pさんが週に1回、夜の時間帯に実施している「フリーカフェ」のテントでは、パン、飲み物、充電できるコンセント、生理用品、避妊具も置いています。

お話を伺った後、夜の「グリ下」の様子も見に行きました。とても明るい

D×Pさんでは、定時制高校内で、出張カフェも実施されています。
通信制高校や定時制高校向けに「クレッシェンド」という対話プログラムである授業を実施していたところ、定時制高校で食の支援をしてほしいというニーズが上がったことから、食支援を兼ねて居場所カフェを始めたのだそうです。
現在は始業前と放課後の時間に、カフェがオープンしている状態です。

見学させていただいたカフェでは、高校生たちとスタッフが楽しそうにおしゃべりしたり、気軽に立ち寄っている様子がうかがえ、継続して関係性を築いているのだと感じました。

10代~20代の若者の居場所カフェのきっかけが「食支援」というのは、私たちの担当エリアでも同じです。定時制高校に通う生徒たちの生活の厳しさを改めて感じた部分でした。


そして、むすびめのサービス開始にあたってとてもお世話になった「ユキサキチャット」の担当の皆さまと情報交換会をしました。共感することが多くて、時間がいくらあっても足りない!アツい思いが溢れました。

ユキサキチャットでは、LINEでのやり取りから、生活が不安な場合は、食べ物や給付金も届けています。
時間をかけてかかわるケースや、直接会いにいくケースもあるとか。

LINE→リアルな支援(現金や食、実際に会いに行くなど)につなげていく部分には、様々なハードルや難しさもあるだろうと思うので、それを実践されていることは本当にすごいことだと感じます。

パートさん3人と一緒に発送作業をしているそうで、事務所が入るビルの一階に並べられた食べ物の量を見て、本当に多くの人が食べ物を必要としているんだなと切実に感じました。

10代の子ども・若者が自力で行政などの相談窓口に行くハードルはとても高い一方で、ある程度自力で動くことができるようになってくる10代半ば以降の年齢になると、行政などの支援機関も低年齢の時ほど積極的に動いてくれなくなってくるという実感があり、ジレンマです。LINEや学校内でのカフェという形で、まず支援につながりづらい層に接点を持つことができていること、そしてそこから実際に支援につなげていることには尊敬の思いです。

どのように就労につなげていくかの試行錯誤

最終日にNPO法人み・らいず2さんを訪ねました。
大阪を拠点に生活支援、就労支援、学習支援などを展開されています。

特徴的なのは、久遠チョコレートを製造する工場「M's FACTORY(エムズファクトリー)」と連携してトレーニングを行っていることです。

M's FACTORYの入り口にあった看板。かえるがかわいい

M's FACTORYでは就労移行の実習としてプロのショコラティエと一緒に仕事をしています。
本格的な企業実習に行く前のスモールステップを踏み自信をつけたり集団に入る経験を積んでらえる環境になっています。

チョコレートは失敗しても溶かして作り直しができるから安心して仕事に取り組めるというお話を伺い、はっとさせられました。

就労支援では、同じ食品でもパンやクッキーの製造というイメージも強かったのですが、あまり目にしたことがなかったチョコレートを自分の目で見ると、自分の固定概念が覆される思いがしました。

とてもおいしそうなチョコ。実際、とてもおいしかった。

み・らいず2さんでは、「働きたい!を実現してもらうための就職予備校 み・らいずワークス」を運営されており、これは、福祉サービス(就労移行支援・自立訓練(生活訓練))を活用して実施されています。
もともとの就労移行支援が2年では足りないと感じ、自立訓練を組み合わせて、「基礎クラス」「実践クラス」「就活クラス」の3クラスにわけ就職までのサポートを行なっています。

就労移行に来る前前の段階(学生の段階)で、様々な傷を抱えていて今まであまり経験をしてこれなかった人も多いため、働くまでの準備段階が必要。学校をもう一回やるようなイメージも重ねて、3年間にしたそうです。

デイサービスはどのように就労までつなげていけるかを工夫しながら試行錯誤されているようで、現在は対象により、
・人間関係でのやりとりをSST(ソーシャルスキルトレーニング)でサポート
・虐待や貧困、障がいなどにより自分の意思表明がしづらい子どもたちのサポート
・公共交通機関の使い方や、外出して将来の選択肢を広げるサポート
の3つのサポートを柱にしています。

お店にもお伺いしました。綺麗に並べられているチョコ

この点は特に私たちも、自分たちの事業を通してなるほどと感心しました。
ダイバーシティ工房でも、スタジオplus+では個別の学習支援や土曜日の外出企画、地域の学び舎「プラット」では生活困窮家庭への支援を経験していますが、
たしかに就労支援につなげていける子どもたちへのアプローチ方法と、生活状況が厳しく、生活支援からスタートする子どもたちへのアプローチ方法は異なるし、外出プログラムもまた別の支援スキルが必要だな、と感じていたからです。
3つにタイプを分けるという方法だと、子どもたちの状況や段階に合わせ、より質の高い支援を届けられるのだろうなと感じました。

「発達障がい・不登校など、学びづらさを抱えるお子さまのための個別学習塾 ラーンメイト」は、大学生中心で運営されていました。

み・らいず2さん全体での学生の関わりはかなり深くて、150人以上が関わっているそうです。大学生向けのパンフレットを授業で配ったり、毎週説明会をオンラインでやっているとのこと。

ラーンメイトでは「"何を学習するか"よりも"誰と学習するか"」を大事なポイントとして、大学生講師にこだわり、講師はガイドヘルパーも居場所支援も経験して育つしくみになっています。
毎月の研修では、教材の作り方から不登校への理解など、講師としてのスキルだけでなく子どもたちを取りまく状況などについても勉強しているそうです。
4回生はリーダー的存在で、お互いのやっていることをシェアする時間を設定しており、次はこうしてみようなど自発的に改善を重ねるしくみがあります。
支援や、社会課題に興味がある学生が多いというのも特徴の一つだそう。

圧倒された大阪の民間の力

大阪では、「何のために」「誰のための」活動なのかを深く思考し、軸を持って活動している民間の力強さを実感しました。

そして訪問させていただいたどの団体さんも、本当に必要とされていることを、必要としている相手に届けるため、細部にまでその軸を浸透させ、どんな工夫もそのうえに施されていることが印象的でした。

大阪は電車で数駅離れるだけでだいぶ町の雰囲気が変わり、千葉や東京と比較しても地域ごとの特徴がよりはっきりしているように感じたことも、大阪を自分たちの足で歩いたことでの発見でした。

そんな地域の特色を感じながら、では翻って千葉で、市川で、私たちは何ができるだろう?と、たくさんのヒントを受け取りながら、市川での日常に戻った今も考えています。

次回の出張記は石川篇を予定しています!
引き続き学びを共有させていただきたいと思います。どうぞお楽しみに。


「全国出張プロジェクト」は認定特定非営利活動法人育て上げネットとREADYFOR(株)による休眠預金活用事業の支援を受けています。


ダイバーシティ工房は「制度の狭間で孤立しやすい人たち」が、困った時にいつでも相談できる地域づくりを目指し活動するNPO法人です。

SNS相談むすびめのほか、学習教室、コミュニティカフェ、保育園、食料支援、シェルター運営など地域の0歳~20歳の子ども・若者とその家族を主な対象に活動を行っています。

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