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褒めることをバカにしないスタートアップは強くなる

前回の記事が予想外の反響を呼び、多数のお問い合せを頂いております。その数、なんと、178件!本当にありがたいことです。返信にお時間がかかっており申し訳ありません。もちろん、スタートアップの経営者でもありますので、疎かにならぬように邁進して参ります。

結論

1. この note が役に立つ読者
 ・スタートアップ経営者
 ・スタートアップで働く人
 ・中小企業の経営者
 ・中小企業で働く人
 ・大企業で働く人(管理職も含む)
 ・部活動、サークル、町内会、PTAなどの組織に携わる人

2. 伝えたいこと
良いと思ったことを素直に褒めること&称賛することが良いのは当たり前。褒め合うことが出来る組織は良い組織。しかし、最も肝心な事は「褒めることをバカにしない」ことである。その結果、失敗を自ら発信する組織に変貌するから強い、という話。

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いつも、組織は悩みのタネ

さて、今回の note では、成功するスタートアップの組織を作る方法について記しています。組織論ではなく、精神論を取り除いた実践的な方法について紹介するものです。

今日、組織に関する書籍はとても多く執筆されています。組織論なら『ティール組織』、実例なら『NETFLIX の最強人事戦略』、ミクロな視点なら『1超ドルコーチ』などが話題です。働き方や考え方が変革する社会において、組織というモノは、人類の永遠のテーマなのかもしれません。

ところで、組織というものを想像すると、企業や官公庁を連想しがちですが他にも数多く存在します。部活動、サークル、町内会やPTAなど、ありとあらゆる組織が存在します。そして、存在する組織の数だけ、組織について悩んでいる人々がいるのです。

僕自身、スタートアップの組織づくりに失敗したこともあれば、成功したこともあり、現在進行系でメタモという会社で組織を作っている最中です。

スタートアップの組織に関する本を読むと、文化がいかに大切であるのかというエピソードが必ずと言ってよいほど出てきます。制度や仕組みよりも、文化(カルチャー)を優先して作るというものです。

一方で、サクセスストーリーとして綴られた「完成したカルチャー」に再現性はあるのかという点については、僕は極めて懐疑的です。

では、どのようにして、自らが理想とするカルチャーを目指し、醸成してゆけば良いのでしょうか。

褒めるではなく、褒め合う組織を目指す

結論から述べると、兎にも角にも、良いことは良いと褒め合うことです。僕がそのことを学んだ原点は、夢と魔法の国でした。

重要なことなので、少しだけ僕の昔話をします。僕は大学時代に、東京ディズニーランドのアトラクションでアルバイトをしていました。アトラクションキャストの役割は、ゲストの誘導、列形成、乗り物の操作など、アトラクションを運営する上で必要なすべての事を担当します。

僕がキャストになった理由は明白であり、「なぜ、およそ2万人ものアルバイト従業員が、最高と言われるおもてなしができるのか知りたい」というものでした。他にも、パーク運営のノウハウやアトラクションの仕組み知りたかったという理由もあります。もちろん、知的好奇心だけでなく、それらに携わりたかったのです。

一見すると気味が悪い

その当時は、現在のように『ディズニー本』が殆ど出版されておらず、キャストに関する実像があまり知られていませんでした。

僕がキャストになって1日目。まだ、OJT(現場トレーニング)の最中です。初日から驚いたのが、褒める人がとにかく多いことです。

まだ名前も覚えていない先輩達が、互いの仕事振りについて「ありがとう、助かったよ」という一般的なものだけでなく、「ゲスト対応が良かったよ」「朝からずっと見つからなかったゲストの落とし物を見つけたんだって?すごいじゃん!」といった具合に、とにかく褒める。いや、褒め合っているのです。

第三者から「気味が悪い、妄信的なものを感じる」と評される位には、褒め合っていました。

失敗を自ら発信する文化

毎日行われる終礼では、マネージャークラスのキャストが「今日、何かあった人!」という問いかけをおこない、勤務中に起きたあらゆることの共有を促します。一見すると、計画性が無い漠然とした質問のように見えますが、実はそれが大切なのです。

「何かあった人!」という問いかけなので、もちろん挙手制。良いことや気付きが詳細に共有されることはもちろんですが、なんと、失敗談を自ら挙手して発信することが当たり前なのです。この文化には、慣れないうちは戸惑いました。

キャストには完璧なゲスト対応を求められますが、そこにはマニュアルは存在しません。人間なので失敗することもあります。そんな失敗談を躊躇なく発信できる文化がそこにあり、その失敗談を基にして、改善する方法を皆で考えるからサービス・クオリティが向上するという仕組みなのです。だからこそ、失敗を発信してくれた仲間に称賛が贈られ、自然と失敗を発信する文化が構築されていました。

それはまるで、ソフトウェア・エンジニアリングのベスト・プラクティスを見ているようです。

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安心感は普段のちょっとした事から生まれる

組織に限らず、生きる上で大切なことは「サクセスストーリーだけでなく、失敗から学ぶこと」だと僕は思います。だから、下の記事も書きました。

上司が褒めることの効果はたびたび紹介されますが、水平的に褒め合うことはもっと大切です。褒められると「自分は周囲から認められている、尊重されているという自己肯定感が育つ」と書けば、流行の表現でしょうか。

僕は、褒められる回数が増えれば増えるほど、心理的安全性が構築されてゆくと考えています。心理的安全性が担保されると発言が増えます。コミュニケーションも促進されますが、自ら提案や行動をしても大丈夫であるという安心感に行き着きます。なにせ、チャレンジに失敗しても安心なのですから。それは無責任とは異なり、チャレンジしやすい環境があるということを意味します。

そして、その行き着いた先が「失敗を自ら発信する」ということなのではないかと思うのです。東京ディズニーリゾートでは、それが当たり前のように行われていました。

褒め合うことは、受け入れ合うこと

僕が二つ目に起業したメタモでは、褒め合うことを当然のように推奨しています。もはや呼吸するかの如く行っているので、意識的に行っていると表現すると語弊がある程です。

チームメンバーの皆が、互いの良い点を「素晴らしい」「素敵」「Good!!」「Nice!」と言った具合に、良いことは良いと褒め合うのです。時折、ここは南欧か?と思うことがあります。

なお、メタモはリモートワーカーも多いため、Slack を使ったコミュニケーションも活発です。発言に対して「リアクション(絵文字を付ける)」が自然と集まり、言葉でも伝える文化が醸成されています。それらの結果として、雑談チャンネル(randam)が活発になります。

オススメとしては、Slackの独自絵文字に、称賛や感謝を伝えるものを沢山追加することです。適度な賑やかさは、画面を通じても "人間らしい何か" を伝えてくれるものです。

僕たち自身もまだまだ改善の余地はありますが、褒め合う組織であり続けたいと思っています。

まずはトップダウンでも良いので、褒めることを当たり前にするのはいかがでしょうか。1ヶ月かからずとも、2週間で組織は良くなると思います。

コミュニティの健全性を定量的に測る方法としては、Slackを使っているのであれば、統計機能を活用してみるのも一つの手段かもしれません。または、SlackのAPIを利用して、リアクションの数や種類を集計し、ランキングやポジネガ判定をしてみるのも面白いと思います。

以上、褒め合うことで強くなるスタートアップの作り方でした!

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余談

褒めた人をバカにしてはいけません。
組織の死を早めるだけです。
照れるかもしれませんが、恥ずかしがって褒めないでください。
褒めることは恥ずかしい事だと周囲に伝わります。
良いと思ったことは素直に良いと褒めてあげてください。
それはチームのためになり、自分にも繋がります。
みんなで褒め合えるスタートアップは強いのです。
あなたがスタートアップの経営陣なら、すぐにはじめましょう。
なぜなら、金銭的コストはゼロだからです。やらない理由はありません。

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ところで、航空機の安全は、過去の痛ましい航空機事故を検証した歴史の上に成り立っています。事故調査にあたっては、関係当事者を批判せずに、ただ目の前の物証を基にして、バイアスを取り除いて検証を行なうのです。その結果、失敗が共有されるようになり、航空機の安全性が高まりました。

上記は、人類のエンジニアリング史における成功事例であり、失敗の共有がいかに大切であるかを教えてくれます。だからこそ、失敗を共有できるスタートアップは強く、その文化を構築するために褒め合うのです。

たった一言で良いのです。「それ良いね!」から、はじめてみませんか。

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