株式会社プログリットCTO就任のご挨拶
こんにちは! プログリットの島本です。
この度、2024年6月1日付けで株式会社プログリットのCTO(Chief Technology Officer)に就任させていただきました。
プログリットでは「世界で自由に活躍できる人を増やす」をミッションに、より良い英語学習体験を提供しており、それをテクノロジーの領域から事業成長をリードするべく、今までにも増して尽力してまいります。
就任に当たり、プログリットがCTOを置くことになった背景と、今後のプログリットにおけるテクノロジー戦略について紹介させていただきます。
CTOという役割について
技術系のブログをお読みの方には馴染みがあるかもしれませんが、CTOについて簡単にご説明します。
CTOはChief Technology Officer(最高技術責任者)の略で、企業における技術のトップを指します。開発方針、技術選定、開発組織の体制、開発人材の採用など、テクノロジーに関する方向性を示し、責任を負う役割です。
プログリットにおいても自分も同じように考えております。
プログリットがCTOを置く背景
今回プログリットがCTOを置く最も大きな理由は
プログリットの成長にテクノロジーが欠かせないものとなった
からです。
創業から7年半が経ったプログリットですが、今までもテクノロジーが重要でなかったわけではありませんが、その程度は大きく変わってきたと感じております。
当社が創業時から提供している英語コーチング「プログリット」では元々お客様の学習進捗管理でGoogleスプレッドシートを活用してきておりましたが、本格的にアプリなどの開発を内製し始めたのは4年前からになります。当時開発したサービスは英語コーチング事業をサポートするもので、学習管理アプリ、学習アプリ、お客様の学習状況を把握するためのWebサービスから構成されておりました。ただ、当時は「サポートする」と書いているようにCTOを置くほどテクノロジーが事業の核という位置づけではありませんでした。
しかし、その後、シャドテンやスピフルなどの技術中心のサービスをリリースし、テクノロジーの重要性が大きくなっています。直近でも、AIを活用したサービスのリリースを予定しており、テクノロジーの役割はますます重要になります。
また、AIの発展に顕著に見られるように既存の業務においてもテクノロジーの存在感は日に日に大きくなっており、会社経営のあらゆる場面でテクノロジーの観点も含めた意思決定が重要になっております。
この状況を鑑み、プログリットの経営層においても業界をテクノロジー面でリードできるようなCTOを置くべきだと判断し、僭越ながら、自分がCTOに任命された次第です。
CTOとして大事にすること
まず、意気込みと言うか、自分がCTOとして大事にしたいと思っているスタンスについて書かせてください。
自分がCTOとして大事にしたいのは
経営層の中で誰よりもテクノロジーを理解している
テクノロジーに携わるメンバーの中で誰よりも経営を理解している
ということになります。
1の「経営層の中で誰よりもテクノロジーを理解している」というのは直感的に分かりやすいものかと思いますが、前述の通り、経営判断をする際にテクノロジーの視点を取り入れるためのCTOであり、経営メンバーの中では最もテクノロジーを理解していなければ、この役割は果たせないと考えています。
2についてはもう少し解説させてください。CTOは一般的にはエンジニア出身の方が多く、最も優れたエンジニアという印象を持ちがちですが、自分はそうである必要はないと考えています。テクノロジーの幅と深さが日々広がる中で、日々テクノロジーに携わっているメンバーよりも全方位で上のレベルを維持するのは現実的ではありません。むしろ、組織において上司の方が部下よりも優秀という状態は健全ではないと考えています。事業会社におけるテクノロジーは事業成長のための方法の1つに過ぎず、テクノロジーにおいても経営視点を持って適切な判断をすることが重要です。そのため、エンジニアとしての気持ちが強い自分でも、必ずしもエンジニアが喜ぶ判断をしない場面も多く出てくると考えています。また、そのような場面でエンジニア、デザイナー、PdMなどに納得してもらえるような説明をする責任があります。
少し余談ですが、上記に関して、自らの言葉のように偉そうに語っておりますが、上記1と2は、元同僚であり現在UPSIDERのVPoEを務める泉さんの言葉を引用させていただいています。聞いた当初は「まあ、そうかな」と軽い気持ちで受け止めておりましたが、キャリアを積み、事業経営のことを少しずつ理解するにつれ、その言葉の重みを感じるようになりました。
以上の2点を意識し、経営、テクノロジーの両面で常に進化するようなCTOを目指していきたいと思います。
まだまだ英語学習はテクノロジーの力で大きく成長する余地があると考えており、まずはプログリットの売上をテクノロジーで1000億にし、英語と言えばプログリットと言われるような企業にしていきたいと考えております。
プログリットのテクノロジー戦略
次に、プログリットのテクノロジー戦略についてお話しします。すべて書こうとすると、長くなってしまうので、開発プロセス、組織、技術の各面の主な戦略を1つずつ取り上げます。
開発プロセス:週1リリースが可能な体制へ
開発プロセスに関してですが、現在プログリットでは月1回のリリースをしているのを週1回のリリースが可能な体制にすることを目指しております。
Webサービスとしては少ないのでは、と思われる方もいらっしゃると思いますが、元々「英語コーチングのサポート」という位置付けで始まっていたこともあり、頻繁にリリースを行ってしまうと、コンサルタントとお客様の間の信頼関係を損ねてしまう可能性があったため、あえて1ヶ月にしておりました。アプリを利用するお客様と毎日のようにコミュニケーションを取るコンサルタントが準備などができないまま、お客様から質問などをされ、コンサルタントが対応できないというような状況を避けるためです。
ただ、この点においてもシャドテン、スピフルのような人が介在しないサービスにおいては、上記のようなリスクは少なく、むしろ週1回のリリースでより早くお客様に価値提供を試みて、より早くフィードバックを得ることがサービスの存続につながると考えています。
エンジニア視点ではCI/CDなどを組めば良いという考え方もできますが、プロダクト開発というより大きなフローにおいては、機能の起案、デザイン、開発、テスト、リリースなど変更しないといけない部分は多く、また関わるメンバー個々人の意識も変えないといけません。
簡単な仕事ではありませんが、この幅広い範囲を変更させる動きをできるのがCTOという立場だと考えており、この方向性を推進していきます。
組織面
次に、組織面の戦略についてですが、ここでは マトリックス組織 を導入し、各メンバーがプロダクトへの貢献をしやすい環境を整え、プロダクトの成長スピードを加速させます。
マトリックス組織とは、各メンバーが事業や部署の縦のチームと、各職能(例:PdM、デザイナー、iOSエンジニア、サーバサイドエンジニアなど)の横のチームを持つ構造です。この構造により、事業の方向性を理解しやすくなり、職能ごとの技術共有や成長が促進されます。
従来のプログリットでは、エンジニアは「エンジニアグループ」、PdMとデザイナーは「サービス企画グループ」という形でまとまっており、PdMは1つのプロダクトに専任ですが、エンジニアとデザイナーは、そのときどきの状況で担当が変わる状態でした。元々2〜3アプリで、かつ機能が重なる部分もあったため、この形でも個々人が全プロダクトに携わりつつ高いパフォーマンスを出すことが可能でした。むしろ、それぞれのプロダクトのそれぞれの機能の重要性が定まりにくい状況の中では、この柔軟な形の方が適していたとも思えます。
しかし、現在ではプロダクト数でも4〜5つあり、各メンバーが全プロダクトに携わることは現実的ではありません。認知負荷が大きく、そもそも頭に全部抱えられなかったり、タスクを変えるときのコンテキストスイッチのコストも少なくなく、開発スピードが遅くなる要因となっています。そこで、マトリックス組織を導入し、プロダクトごとに専任のチームを持つことで、開発効率を向上させます。
こちらの完成は当然ながら採用も必要になります。最低でも今の人数の2倍は必要だと考えており、積極的に採用を進めていきますので、ご興味のある方は是非お声がけください!
技術面
最後に技術面についてです。エンジニア出身として改善したい点は多々ありますが、特に影響が大きいものとして、サーバサイドの共通部分のサービス化を進めます。
現在、各プロダクトのクライアント(モバイルアプリやWebアプリ)とサーバサイドのシステムが1対1で対応しています。英語コーチングの学習アプリに対しては学習サーバが、シャドテンアプリに対してシャドテンサーバが、というような感じになっております。歴史的経緯から、一部独立して開発が進んでいたのが主な理由なのですが、初期のフェーズではそれぞれが独立して進められるメリットも大きく、この構成でも大きな課題感があったわけではありませんでした。
ただ、どのサービスも発展していく中で、各サーバで提供される機能が重複し始めており、必然的にコード重複によるメンテンナンスコストや、仕様確認時に変更箇所の検討コストが増えてしまっており、開発スピードの足かせになってしまっております。そこで、まずは
アカウント認証の管理(ログイン等)
決済や課金の管理
の2つを別サービスとして切り出し、各サービスのサーバもこちらの共通の基盤を利用する形を取るように変更していきます。
これにより、上記のコード重複やコストの課題を改善しつつ、将来、新しいサービスを開発する際の立ち上げにかかるコスト削減や期間の短縮を目指します。
現段階では、既に開発スピードの鈍化やリスクの高まりを感じている部分に関して行いますが、今後も同様に課題と感じたところを都度都度対応していく予定です。
AI/LLMに対する取り組みについて
技術面の一環として、大規模言語モデル(LLM)などのAI技術に対するプログリットとしての考え方や取り組みについても触れておきます。
プログリットはAI技術を積極的に取り入れており、スピフルや直近リリース予定のプロダクトなどの核となる部分でも使用しております。また、それ以外にも、コンサルタントやバックオフィスの業務効率化においてもChatGPTなどの利用を促しております。
ただ、現在の段階ではOpenAIやAnthropicなどのAPIを利用することを前提としており、自社でモデルを構築することは考えておりません。理由は、自社でモデルを構築した場合の費用対効果が良いとは考えておらず、また、今後もAI技術は進化し続けるため、それに追従することが難しいと考えているためです。また、既存のモデルの利用方法(プロンプトエンジニアリングやファインチューニング)についても、プログリットとしても、世間一般としても発展途上であり、まずはそこに注力することが重要だと考えています。
以上、プログリットのテクノロジー面での戦略を簡単に紹介させていただきました。
最後に
以上が、プログリットのCTOとしての就任に関するご挨拶と、今後のプログリットにおけるテクノロジー戦略について書かせていただきました。最後までお読みいただき、ありがとうございます。
1周目にとりあえず形のあるものを書こうと思い、ざっと書いた際には内容が薄いもので、少し肉付けをしようと気付いたら、そこそこのボリュームになり、自分が今まで書いたブログの中でも最長のものになりました 😄。
まだまだ未熟な部分が多いかと思いますが、これからもプログリットのテクノロジー戦略を推進していきますので、何卒よろしくお願いいたします。
プログリットについて少しでも興味が湧いた方、英語学習におけるテクノロジーの活用について話したい方、是非カジュアルにお話しましょう!お声がけください!
P.S. CTOになるまでに実は別途コーチングも受けておりました。その際、コーチの方にも大変お世話になり、そのお礼の意味も含めて、次回、書かせていただきたいと考えております。