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対人援助に悩んでいる時に読んだ本

仕事で初めて相談支援をしたときに、大学院との違いや自分のスキルのなさに悩んでいました。相手のニーズがうまく汲み取れなかったり、認知行動療法にこだわりすぎたりなど…。当時は、「仕事で話を聞くとはこんなにも違うんだ」と落ち込んでいました。今思うと、自分を大きく見せようと背伸びしていたように感じます。当時の上司のSVや研修で教えてもらった本でだいぶ楽になったので、今後の自分のためにも記録しておこうかなと思います。

対人援助に正解はない

大学〜仕事を通して1番自分を困らせた言葉です。その通りの言葉だと思いますが、じゃあどうしたらいいんだよといつも考えていました。「あっこうすればいいんだ」「いや、結局良くなかった」とぐらぐらと思考が揺れたり、「じゃあなんのために対人援助があるんだ」と悩んだ時期もあります。

対人援助の技法 著作:尾崎新

研修の時に紹介された本です。相談技法や学んだことに注力し続けて、それに合う人と合わない人がでて、どうしようか悩んでことについてバシっと書かれている本です。

この本で自分にとても響いたことが2つあるので、書かせていただきたいとおもいます。

①対人援助の技法:「お世話」と「大きなお世話」

これの本の中で「お世話」について書かれている項目があります。

「お世話」は援助者がクライエントの抱える困難を理解し、クライエントを支持ないし保護しようとする関わり方である。この関わり方も古くから援助の領域で採用されてきた。(中略)このようなお世話の関わり方において援助者はクライエントに「寄り添う」「共に歩む」などの態度を形成することが特徴である。
                    引用:対人援助の技法 尾崎新

自分はこれが苦手で、クライエントにどこまで手助けをしたらいいのかがわからず、すごく冷たく見られていたりエンパワーメントを奪っていたと思います。

また、お世話の限界について言及されており、それを超えてしまうと「大きなお世話」になることも書いてありました。

(略)つまり、援助者は「お世話」したいという善意、熱意のあまり援助やクライエントを混乱させることになる。このようなかたちで「お世話」の有用性を損なう援助者の態度が「大きなお世話」である。
                    引用:対人援助の技法 尾崎新

相談を受けていくと自分が無能に見られたくない、自分はクライエントに役に立つ存在でありたいという気持ちが先走ることがよくあります。それは今も相談を受けている時に湧き出る気持ちがあります。それを自覚させてくれる言葉だと思います。

②対人援助の技法:面接場面における「自然体」

相談を受けている時に、クライエントに対して自分はどのような態度をとればいいか悩んでいました。緊張した態度で面談したら相手も緊張するし、じゃあリラックスする態度とはどのような態度なんだろう?そのままの自分を見せるわけにもいかないし…。自然体で接しろと言われても、自然体とは何だろう?などなど頭の中が混乱しており、もちろん面談も不自然なものでした。

この本には自然体の定義が下記のように書いてあります。

「自然体」とは援助者が援助を進める際に、ある偏った感情や意気込みだけに縛られず、また、一面的な先入観に固着せず、そのために無理のない自然な構えによって、あるいは柔軟な姿勢で相手と関わる姿をさしている。
                                                            引用:対人援助の技法 尾崎新

この文章はあんまり、ピンと来ずに結局自然体とはなんぞや?と思っていました。この文章には続きがあります。

(略)以上の過程を経てやがて、援助者は自分の「自然発生的な自然体」を活用することができるようになる。スーパービジョンでは、その活用の仕方をともに検討し、吟味する。そして、援助者が自力で「自然発生的な自然体」を活用することができるようになれば、スーパービジョンは終結を迎える。
                    引用:対人援助の技法 尾崎新

だから、初学者の自分は経験豊かな相談支援からSVを受ける必要があるのだなと感じました。当時はとてもいい上司がいたため、積極的に面談についての相談をしたり、意見をいただいたりしていました。今は面談の中で自分の感情を見つめたり、自分の状況を少し冷静に見れるようになりました。当時はよく上司から「偉そうに見える」との言葉をいただいており、今でもかなり気をつけています。

この本は、技法というよりも根本を教えてくれます。自分の文章力では魅力が全く伝えられないのが残念だと思う次第です。

ケアのフォークロア ー 対人援助の基本原則と展開方法を考える ー 著:結城俊哉

この本はケアをする時にどのように考えるといいかを教えてくれる本です。

目次を見ていただけるとわかると思いますが、中身は濃く幅広いものです。今回はこの中で、とても印象に残っていることを記載したいと思います。

ケアのフォークロア:援助者としてどうあるべきか

クライエントと関わっている時に、役に立とうと思うことは多々あり決してそれが問題だとは考えていません。ただ、援助を行う際にどのようなスタンスを持つ必要があるかと悩んでいた時に、とても楽になった言葉です。

援助者が目指すべき位置は、まず「無害な存在であること」を基本に、クライエントに対して「害」を及ぼさないことに最善の注意を払うべきだと考える
               引用:ケアのフォークロア 著:結城俊哉

当たり前だと思いますが、害を与えないということはとても大事だと思います。さらに有能を目指す前に、無害を考えることは自分の中では新しい考え方でした。当時は、どうすれば有能に見えるか・見せることができるかに注力をしていましたが、この本ではそれはただの自己満足であることを指摘しており、とても反省したことを覚えています。

この本は対人援助を行う際に陥りやすい援助者の問題・課題を適切に記載しています。自分はこの本を読むことがなければとても傲慢な援助者になっていたと思います。

この後の記載には有能で信頼される援助者になるためにはどうしたらいいかが書かれています。

まとめ

記載させていただいた本は、決して福祉・心理の業種についている人だけに役に立つものではないと思っています。今後、自分が人に関わる仕事をしていく以上この2冊は何度も読み続け自分の血肉にしたいと思っています。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

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