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異職種からマーケティング責任者へ~ゼロからのマーケティング組織立ち上げエピソード~

「Discover CMO(ディスカバーCMO)」は、最前線で活躍する「マーケティング責任者の仕事を追体験する」をコンセプトとしたメディアです。CMOを目指すマーケター、これからマーケティング組織を立ち上げる経営層の方々にとってのヒントを発信していきます。

曖昧に使われやすいマーケティング・マーケターのイメージをつかむ参考にしていただけたら嬉しいです!

今回は、株式会社コスモスモアのマーケティング責任者として活躍する中村正典さんにインタビューをしました!

株式会社コスモスモア
マーケティング統括部・部長
中村正典
2005年、株式会社コスモスモア入社。
入社後は現場管理を経てオフィス構築事業に異動しコンサルティング、プロジェクトマネジメントおよびデザイン部門の管理職を経験。
現在は広告運用や広報を始め、PESOの4要素を統括するマーケティング統括部の部長。

Twitter:@ma_nakamura

中村さんプロフィール
中村さんインタビューのグラレコまとめ

■一級建築士からマーケティング責任者になるまで

-まず、中村さんのお仕事について教えてください

コスモスモアは、働く場をつくるオフィス構築事業や総務アウトソーシング事業、建物の企画・設計・施工を展開する建築会社です。

今の役割は、
1. マーケティング統括部の部長
2. ファシリティーサービス部の部長
3. 新規事業mobica(モビカ)推進室の室長
この3つを兼任しています。

その他には、社内の委員会も4つ掛け持ちをしています。

-かなり広い領域で役割を担われているのですね。
中村さんの経歴を拝見すると、元々マーケティングが専門ではないと思います。どのようなキャリアを歩まれてきたか教えてください。

いまの会社は、2005年に入社して18年目となります。マーケティング統括部を立ち上げたのが2021年4月です。
入社して3年ほどは、現場の施工管理を行なっていました。その時は、現場への直行直帰をしていましたね。
一級建築士の資格を27歳のときにとっていて、29歳のときには、グループ会社のコスモスイニシアに出向をしていました。

マーケティングとは一切関係がない領域でキャリアを歩んできています。

-マーケティングとは無縁だった中村さんが、マーケティング組織立ち上げに至った経緯を教えてください。

コスモスモアには、1年に1回、職場活性度調査と自身の現状や将来の考えを伝えることを目的としたアンケートがあります。その中に「部署異動の希望」と「今後のキャリアの方向性」を記載することになっています。
そこに、次のように記載をしました。

異動希望:マーケティング組織を立ち上げたい
キャリアの方向性:CMO

このように記載をし、マーケティング組織立ち上げに至りました!

■ゼロからのマーケティング組織立ち上げの裏側

-いや、そんな簡単にいかなくないですか?(笑)もう少し裏側を教えていただきたいです。元々マーケティング部署は存在していたのでしょうか?

マーケティング組織は、ありませんでした。
広報という言葉は社内で使われていましたが、「マーケティング」は社内に浸透していませんでしたね。

当時の社内の認識は、マーケティング=リサーチと捉えられていた印象です。最低限の集客のために広告運用を月額で数十万円の予算で回していただけ、といった状態でしたね。

曖昧にマーケティングという言葉は使われていて、このままで良いのか…と問題意識をもっていました。
具体的には、マーケティングの前に、"戦略がない"ことが課題だと考えていました。

-マーケティングの定義が曖昧、戦略がないことに対してどのようなアクションをとられたのでしょうか?

PEST分析や5Forces分析などから戦略仮説や現状課題をまとめて、役員に伝えました。

いま振り返ると、その時の分析はかなり甘かったのですが…
「このように課題を整理し、戦略をつくっていくことが重要ですよね!」と共通認識をとる資料としてまとめ、共有をしました。

こちらが当時につくった資料です。
※中村さんより共有をいただいた一部の画像です。

外部環境分析から打ち手を整理した図(中村さんより提供)
業界構造分析から現状課題を整理(中村さんより提供)
ビジネスモデル全体像と課題を整理(中村さんより提供)

上記のようなやり取りを何回か繰り返し、役員とマーケティング戦略における重要性の認識をあわせて組織立ち上げに至りました。

立ち上げ当初は、自分含めて3名の体制でスタートしましたね。

-上流の戦略から提言していかれたのですね。その後、どのようにマーケティング戦略や計画をつくられたか教えてください。

マーケティング統括部を立ち上げてから、全社のリブランディングプロジェクトを動かしました。

まずは「自分たちが何屋なのか」の定義が重要だと考えて、役員を巻き込み、パートナーを探して、根底を整える動きをつくりました。

また、会社の5ヵ年計画に連動させて、マーケティングの5ヵ年計画を作成しています。

将来のあるべき姿から逆算して現状のやるべきことを考えるようにしています。
現在のマーケティング統括部は4名体制ですが、事業計画に合わせてマーケティングに関わる人員も増やしていく予定です。

-マーケティング組織、マーケターの役割をどのように定義していますか?

マーケティングといった言葉を使っていますが、上位概念にはブランディングがあると考えています。
そのため、自分たちの仕事を「ブランドコミュニケーター」と定義しています。
ブランドコミュニケーターとは、マーケティングコミュニケーションのPESO全体設計ができる人のことです。

PESOとは?(マーケティングイネーブルメント資料より引用)

PESOの全てを動かせる人になろうという目標は、メンバーにも伝えていますね。一つの領域だけでは、ブランド価値を高めることに貢献ができないと思っているので。

※マーケターの役割について中村さんのツイートが参考になります。

■経営-マーケティング-実行をつなぐために

-役員とマーケティングの認識を合わせるために工夫してきたことはありますか?

重要課題の認識合わせは大切にしています。

最初に認識を合わせたのは、ブランドが第一想起されることの重要性です。

ブランドの想起に関して(マーケティングイネーブルメント資料より引用)

「自分たちが何屋なのか?の共通言語が社内外にないことは大きな課題ですよね?」
と問題を提起し、露出を増やす・認知を形成することが重要だと伝えてきました。

-役員とのコミュニケーションで意識していることはありますか?

一番重要なのは経営層との信頼関係だと考えています。

相手がこの人からの話は聞きたい…といった態度になってないと、どれだけあるべき論を話しても伝わりません。

まずは「提案を聞いてもらえる関係性を構築する」ことはとても大事です。

経営層に進言しても変化がおきない、と言う話も時々耳にしますが、変化をつくるなら一歩踏み出してみるべきです。
丁寧に伝えて進めていくのみだと思います。
戦略で会社を動かそうとするなら、経営層に恐れず自身の考えを伝えていかないといけないと思っています。

-中村さんが役員から信頼をしてもらえている理由を教えてもらえますか。

キャリアの中で「今ある場所で花を咲かせること」=その時の仕事で成果を出すことは意識してきていて、その積み重ねが信頼につながっているのかもしれません。

新卒でコスモスモアに入って最初の3年間は、施工管理として現場も経験しています。
朝5時に協力会社の人から電話がかかってきて、眠い目をこすりながら(なんとか)応対する、なんてこともありました。

その後の営業時代は成果を上げて社内表彰を受賞をすることもできました。

今の経営層は当時の上長だったりするので、関係性は既にできていました。

役員との信頼関係がない中で、綺麗な戦略だけを提案しても、組織は立ち上がらなかったと思いますし、実行フェーズでも経営層と認識が合わないといったリスクはあったと考えています。

信頼ってそんなに簡単に生まれるものではないと思うんですよね。

-戦略を実行していくために、営業やCSなど関連部門とのコミュニケーションで工夫されていることはありますか?

部門や階層を横断して共通認識をとることは意識して行っています。

各事業部が行なっている部会(部内の共有会)で5分程度時間をもらい、その場でマーケティング統括部が考えていることや実施施策の共有をするようにしています。
例えば、今月は広報活動としてオープン社内報を2本出しました、マーケティングの仕掛けとして○○を行い、指標の○○が動きましたといった内容です。

■マーケターはOSを鍛えること

マーケティング組織を強くしていく上で大切にされていることがあったら教えてください。

一つの専門性を磨くことも大切ですが、思考のOSを鍛えることが重要だと考えています。

私は、仕事力を考える際に、OSとアプリケーションの例えを使っています。

OSとは、思考力や処理能力などのベースになる知識やスキルのことです。
もう一つのアプリケーションとは、特定の職種や業務を遂行していく専門の知識やスキルのことです。

いくつかのアプリケーションを同時に動かしたり、特殊なアプリケーションを動かしたりするためには、高い能力のOSが必要になります。ビジネスも同様に高い専門性には、それに見合ったOSが必要です。

-具体的にOSを磨く方法はあるのでしょうか?

すぐに外部パートナーに委託するのではなく、まずは自分自身がやってみることです。
新しい知識やスキルがつけば、既に持っている知識やスキルと掛け合わせることができ思考の幅も広がります。
さらに視座を高めれば視野が広がり必要なモノが見えてくるので、視座を高めることも重要だと思います。

また目的・手段・結果の因果関係を正しく理解することは意識しています。
自分たち(コスモスモア)の仕事に置き換えると、
・目的:「良い場」をつくる
・結果:売上が向上する
・手段:目的を達成するために○○をする

チーム内でもこの因果関係を整理するための会話をよくするようにしています。
この目的・結果・手段の関係がバラバラになっていると、小手先のテクニック(アプリケーションに頼る)に走ってしまうことが多いと感じています。

-中村さんがキャリアの中でOSを鍛えてきたからこそ、経営全体における課題定義をし、関係者とコミュニケーションをとりながら必要なアクションを取れてきたのだと理解できました。

-最後にこれからマーケティングを強化しようと考えている読者の皆さんに一言お願いします!

「この商品やサービスがあったら本当に自分は利用したいか?」

中村さんよりいただいた言葉

この問いと向き合うことが大切だと考えています。

信念と熱量と覚悟を持ち続けることが、新規事業を立ち上げる時もマーケティングをする時も必要だと感じています。

顧客や市場の動きが大切なのですが、自分がやりたいと本気で考えられていなかったら組織も顧客も動かないですよね。

このやりたいことを実現する信念と熱量と覚悟をもって仕事に取り組めると、何かを判断したり処理したりするOS力を鍛えることにも繋がるのではないでしょうか。

マーケティングに関わる人は、綺麗に考え過ぎずに、「信念と熱量と覚悟をもって取り組めているか?」の問いと向き合えると良いと思います!

-中村さん、貴重なお話をありがとうございました!

マーケティング組織立ち上げポイントまとめ

中村さんのお話しから、マーケティング組織立ち上げのポイントをまとめます。

  1. 必要であれば経営・事業戦略に関する提言をする
    中村さんの参考アクション
    =ビジネスモデルや戦略課題をまとめ、経営層に伝える

  2. マーケティング組織・マーケターの役割を定義する
    中村さんの参考アクション
    =ブランドコミュニケーターとしてマーケターの役割を定義する

  3. 経営層・関連部署との認識合わせを丁寧に行う
    中村さんの参考アクション
    =戦略の認識合わせて、実行したことの報連相をする場を定期的につくる

ぜひ、自社のマーケティング組織づくりにも活かしていただけたら嬉しいです!

中村さんインタビューのグラレコまとめ

今後も「Discover CMO」ではマーケティング組織立ち上げ時のヒントになる情報を発信していきます。

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次回もお楽しみにお待ちください!

また、マーケティング組織立ち上げ・Next CMO育成をコンセプトにした「マーケティングイネーブルメント」では、CMOを増やすためのコンテンツを公開しています。

ぜひ無料公開しているホワイトペーパーも参考にしていただけましたら幸いです!

最後まで読んでくださいありがとうございました!

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