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「港区女子」と「足立区男子」は出会えるのか?

2040年には、独身者が人口の5割になり、既婚者(64歳まで)は3割になる─。
この衝撃的な数字を見て、みなさんはどのように感じたでしょうか。
これからの日本は「一人で生きる」ことが当たり前の社会になる、という予測をテーマに据えて、独身研究の第一人者・荒川和久さんと気鋭の脳科学者・中野信子さんに対談をしていただきました。
その内容をまとめた12月18日発売の『「一人で生きる」が当たり前になる社会』より、第1章「「ソロ社会」化する日本」を無料公開いたします。

独身男女の住むエリアの壁 ─「港区女子」と「足立区男子」は出会えるのか?

荒川: 
日本は昔からずっと東京一極集中なのかと勘違いしがちですが、この65年間の人口移動を表したのが次の図7です。

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1960年代から90年代前半にかけて、ぐっと人口が増加している②の線は埼玉・千葉・神奈川です。つまり、東京以外の3県が増えるドーナツ化現象。

中野:
いわゆるベッドタウンですね。

荒川: 
そうです。通勤ラッシュをつくったのもベッドタウンの人たちです。グラフを見ると、今は全然増えていないですが。逆に、当時の東京は人口が減っていたんですよ。

中野: 
都心に住めないからでしょうか?

荒川: 
そうです。東京の人口が減り3県は増加という現象が、今は逆転しています。東京が増えて、周りが減りました。東京に人が移ってくるようになったのは最近なんです。

中野:
利便性とか老後の足とかを考えたら、都内は便利ですからね。

荒川: 
ちなみに若い女性でも、恵比寿のような家賃の高いエリアに住んでいる人が多いです。特殊な例かもしれませんが、新入社員なのに家賃15万円のワンルームとか。

中野: 
それは、シェアハウスや「パパ活女子」というケースではないんですか?

荒川: 
違います、普通の若い人です。給料の構成比50%を家賃にあてると聞いて驚きました。ただ、彼女たちからすれば、家賃が高くてもセキュリティー(安全面)がしっかりしたところに住みたいという理由もあるんです。
以前、僕がこの件で記事を書いたら、『月曜から夜ふかし』というテレビ番組に取り上げられましたけど、独身女性と独身男性では住む区が違うんですよ。区が違うというよりも、住んでいる男女比が全然違います。比率でいうと、港区・中央区・渋谷区とかは女性が圧倒的に多い。
逆に男性が多く住んでいる区は、20代から60代までで1位、2位、3位がほぼ同じです(※2015年国勢調査より単身世帯の男女比で男性のほうが多いランキング)。つまり、江戸川・葛飾・足立の3区は独身男性の一人暮らしが非常に多い。

中野: 
家賃が安いからですか?

荒川: 
そうです。もはや完全に男はダウンタウンに住み、女はアップタウンに住むという状況。この状況なら、未婚男女はもう永遠に出会わないよね、と思うんです。

中野: 
「港区女子と足立区男子」、面白いですね。住むエリアを色分けできてしまう、と。

荒川: 
男町、女町というわけです。治安やセキュリティーにお金をかける女性と、安全面はさておき、ごはんや遊びにお金をかける男性とに分かれます。

中野: 
なるほど。家賃という固定費をどれだけ払えるかというマインドの差がそうやって表れるんですね。

荒川: 
そう思います。葛飾区とかはずいぶん安いですから。

中野: 
可処分所得が固定費に取られない分を、男性はどういうところに使うんですか?

荒川: 
飲んだり食ったり、要するに飲食です。家計調査で見ると、一番お金をかけているのは食費だとわかりました。

12月29日公開の 【欲望の時代】結婚は経済活動という考え方 に続きます。


著者紹介

荒川和久
独身研究家/マーケティングディレクター。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。韓国、台湾などでも翻訳本が出版されるなど、海外からも注目を集めている。著書に『結婚しない男たち―増え続ける未婚男性「ソロ男」のリアル』(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会―「独身大国・日本」の衝撃』(PHP新書)など。

中野信子
1975年、東京都生まれ。脳科学者、医学博士、認知科学者。東京大学工学部応用化学科卒業。同大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。フランス国立研究所ニューロスピン(高磁場MRI研究センター)に勤務後、帰国。現在、東日本国際大学教授。著書に『ペルソナ』(講談社現代新書)、『サイコパス』(文春新書)、『キレる!』(小学館新書)、『悪の脳科学』(集英社新書)、『空気を読む脳』(講談社+α新書)ほか。
テレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。

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