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2024.4.29明日の叙景@渋谷WWW X

ご無沙汰しております。

いつだったかの渋谷サイクロンでのワンマンぶりに、我が愛しのブラックメタル指定文化財、明日の叙景を見てきました。

WWW Xってイケてるラッパーがワンマンするデカ箱と認識していたのですが、そんな所で近しい大好きなバンドが見れるのはとても嬉しい。

そして、そんなバンドにありがたいことにライブレポを頼まれたので書かせていただこうと思います。

素人の拙文ですが、良かったら読んでいってください。
よろしくお願いします。

kokeshi

先ずは、ゲストアクトのkokeshiから。
和琴の音色のSEでメンバーが登場して、スタート。
今回初めて見たのですが、サウンドは僕も大好きな90s~00sのニューメタルをベースとしている印象で、個人的にはKoRnやmudvayneなどから影響を受けてそうだなと思いました。

クリーンと歪の切り替え、STOP&GOのスラッジーなリフ使い、展開の中に不協和音と仄かに「和」を感じさせるメロディなど、大好物です。
メロディが控えめなのが、最高に理解ってるな…という感じでした。

楽器隊はシンプルなのですが、その上で邪悪な大輪の花を咲かせていたのがボーカルの亡無さん。

出せない声なくね?というようなグロウル、中音域のシャウト、不穏を募らせる囁くようなメロディ、そしてDIR EN GREYフリークとしては無視できない超高音のホイッスルボイスまで…。

この曲の終盤とか人間離れしていました。
ダニ・フィルスばりにマイクを離して絶叫してるとことか悪魔的にかっこよかった。

これね。

ずっと気になっていたので、この機会に見れてよかった。
なお、音源も素晴らしいのですが私は怖すぎて夜一人ではおいそれと聴けません…。

大丈夫な諸氏はこちらから。(素晴らしいので、お昼とかに聴こう!)



明日の叙景

客電が消え、坂本龍一の「A flower is not A Flower」が流れる中、先ずは楽器隊が入場し、インスト曲である穏やかな小品「見つめていたい」が始まる。

この静かな繋ぎが、違和感なく流れていく様子は、この国が誇る大家と明日の叙景の創作力の親和性を感じるようで、これからの未来にワクワクしてしまう…というのは言い過ぎでしょうか。

そんなことを考えているうちに布くん(Vo)が登場し、ポツリと一言
「明日の叙景」と呟きました。

この始まり方かっこいいよな〜、布くん髪サラサラだな〜とか思っている中、空間を切り裂く爆音で「土踏まず」から本編がスタート。

この曲は名曲揃いの彼らの最新アルバム「アイランド」のなかでもメタル然とした曲の中では一際キャッチーな魅力を持った曲で、目に見えないもの、自分とは直接関わりのないもの、けれど確実に存在していて、誰かにとっては欠けがえのないものかもしれないということを
タイトルの「土踏まず」に例えて表現しているのが面白い。

「土踏まず」が終わり、次の曲は「アイランド」のオープナーである
臨界」。
この曲のムックの「アカ」やwhite pony期のDeftonesに通じるようなイントロが僕は大好きです。

というか「アイランド」の中で一番好きな曲もこれ。

なにより終盤の歌詞がたまらなくて。

「アイランド」以前の彼らなら、薄暗い部屋の中で死を迎えるような結末が待っていそうなものなのに、この曲は暗闇の中から再起を感じられるような終わり方になっているんですよね。

この変化が自分の中では本当に胸が熱くて、彼らというか布くんの歌詞が昔から好きだったんですが、その内容が少しずつ外向きに変わっていっている気がして。

それが勝手な僕の感想なんですが、少しずつ人間性を取り戻していっているような気がしています。
(違っていたらすみません、あと初期のどうしようもなく救いの無い歌詞も好きです。)

この曲が終わった後に布くんから
こんにちは、明日の叙景です!」と挨拶がありました。

今まで頑なに喋らなかったのに!?と驚いてると
楽しんでいきましょう!」と最早本当に同じ人?誰?
と疑問符が湧きそうになっている中、現在の彼らのアンセムの一つ
歌姫とそこにあれ」が始まり、お客さん皆んなが手拍子で応えていました。

曲のイメージね

この曲は本当に盛り上がりますね…。お客さんも皆んなニコニコしてた気がする、大好きすぎる。

歌詞は一見、アイドルだったり、"推し"という文化への礼賛のように見えて、その中で生まれる物についての疑問だったり、虚無性を表現している内容なんですが、このお客さんの盛り上がり的にsmashing pumpkinsの「Today」のような年月が経っていくことで楽曲の意味が変わっていくような、そんな光景を目の当たりにしているようでした。

次曲はフレンチブラックを思わせる「青い果実」を挟んで、彼らの中ではオーソドックスなブラックメタルである「忘却過ぎし」へ。

荒涼なトレモロリフの応酬と徹頭徹尾走り抜けるドラムが気持ちいい。
そして、この曲のブリッジパートの歌詞も素晴らしい。

思い出にすらなれなかった束の間たちに誘われて
頭上には往来
足元は青天井
私も忘却一つ手前だ

ここ意味わかると怖いけどかっこいいよね。布くんがこめかみに銃を突きつけて撃ち抜くような仕草をしてて、それがまた似合っててイケてました。

その後、ミドルテンポのタム回しから始まり、怪奇的曲展開へ繋げていく「影法師の夢」へ。
この曲もライブだと展開がクッキリして、自分の中でカッコ良さが増してました。

曲が終わり、うやうやしくお辞儀をして、一度ギターの等力くん以外が退場。

しばし休憩かな?と思っていたらここで等力くんからライブの告知とESPに作ってもらったというギターとピックを披露していました。

たぶん初めて長々とMCしていたような気がするんですが、全く緊張している様子がなくて、ちょっと笑いもとっててすごいなと思いました。(小学生並みの感想)

自らトークイベントを開催したことにも触れていて、
明日の叙景のモードが今そういう外向きの状態になっているんだなと思いました。
MCの流れで過去作の話になり、1st Albumの中から「たえて桜のなかりせば」へ。

この曲聴けると思ってなかったから、最高でした。
これライブで聴いたのいつ以来なんだろ…と思ったんですけど、たぶん1stのリリースショーの新大久保アースダムとかかな…?

クラシックギターの爪弾きのイントロから展開していくこの曲ですが、既に当時から彼らの非凡さを表しているような楽曲だなと思いつつも、布くんが吸いのガテラルボイスを出していたり、最近のストレートな楽曲の展開とはまた違った感触だったりと過度期っぽさを感じました。

でももっと昔の曲もやってくれたらいいな。
「過誤の鳥」の曲とかめっちゃ好きだから…。


最後のアルペジオの静かな雰囲気から、間髪入れずに激早イントロ曲
私はもうは祈らない」へ。

中盤の静かで美しいパートで、布くんが悲痛さを湛えて絶叫するところがあるのですが、僕は「表現力や…」となってました。語彙力が無い。


曲が終わり、語彙力が無くなっていると、ベースの物悲しいタッピングが聞こえてきて、これは何かのライブアレンジかな?と思っていると彼らの楽曲の中で一番ブルータルな大作「甘き渦の微笑」へ。

この曲が個人的に今回のライブのハイライトでした。
凄まじいですよ、これは。
半端じゃない。

平山夢明氏の傑作短編「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」にインスパイアされたこの曲は愛する者を自ら手にかけてしまった男が、その苦しみを延々とループするという地獄のような内容なのですが、負けず劣らず楽曲的にもすごい。

鬼気迫るイントロの絶叫から、メタルコアのようなバスドラユニゾンのギターの刻みパート、不穏なベースソロパートを挟んで、苛烈さを増しながら、自らを破壊していくようなラストスパートまで…7分強の間ずっと圧倒されてしまいました。

この後、一度布くんが退場し、快活なリムショットが鳴り響きインスト曲「潮騒は子守唄」へ。
改めて、ミュージシャンシップの高さを感じさせてくれます。

曲が終わると布くんが再び帰ってきて、

こんにちは
こんにちは
初めましてかな?
初めましてだね

と呟いて、「アイランド」の最後を飾る「遠雷と君」へ。

この曲の開放感と晴天に突き抜けていくようなアッパー感はすごい。
特に齋藤くんのドラムはもう狂い咲いているんじゃ無いかという感じで、
等力くんが流麗なギターソロを弾いてる後ろで、1人でトライアスロンしてるんじゃ無いかと思うくらいの手数のブラストビートを炸裂させていて、
この曲の無敵感を強めていました。

手数がこれで

先ほどの「甘き渦の微笑」のダークさから、この「遠雷と君」の温度感が違いすぎて、改めて明日の叙景の振り幅の広さを再認識していました。

そしてそして、ライブも終盤に差し掛かり、
最後はみんな歌ってもらえますか?」と布くんが煽ってからのお待ちかねの彼らの一番のアンセムである
キメラ」へ。

この曲は一種、画期的な発明品のようなものだと、僕は思っていて、ブラックメタルにダンサンプルな四つ打ちを入れてくるセンスに脱帽してしまいます。

四つ打ちを入れた曲はlifeloverのように先駆者はいるんですけど、彼らは不穏さを際立たせたアプローチをしているのに対して、明日の叙景は軽快なカッティングリフとメロディアスなリードギターで全く違った印象に仕上げています。


その一方で中盤にブラストビートのパートを入れてきて、ブラックメタルとしてのマナーも忘れていないところが憎いと個人的に思います。

お客さんにとってもこの曲はやっぱり特別で、一気にバンドと客席の距離が近くなるのを感じます。

明日の叙景のように壮大なサウンドやミステリアスな雰囲気を持つバンドは良くも悪くも演者と客席の間に一線を引いて、その上での魅せ方を考えていることが多いと思います。

だからこそ、こんな風に歩み寄ってくれる瞬間がファンにとってはたまらなく嬉しい。

大盛況のうちに本編が幕を閉じ、バンドが退場していくとすぐにアンコールの声が客席から起こりました。

程なくして、メンバーがステージに戻ってきて、等力くんから
新曲をやります!」と嬉しい報告が。
「いい曲なんですよ、これが~」と自分で言っていて可愛かった(笑)。

いや~、待ってました!
僕はこの為に東京までわざわざ足を運んだと言っても過言では無い…!

布くんから「コバルトの降る街で」というタイトルコールがあり、新曲が披露されました。

未だ聞いたことの無い方に伝えるのは難しいですが、とりあえず半端なくかっこよかった!

「キメラ」や「歌姫」で使われたブラックメタルにJ-POP的な四つ打ちを持ち込んだ方法論を、今回は疾走感あふれる8ビートをベースにブラストビートを交えながら進行していく曲調だったと思います。

メロディの質感としては、僕らが小さいころにロックバンドに感じたストレートにかっこいいヒロイックな感じ…そんな印象を受けました。

ていうか

LUNA SEAじゃない?これ…?

って感じでした。
(あまりこういう時に安易にLUNA SEAだ!とか言いたくないのですがメンバーも好きなこと公言してるし、間違いじゃないと思いたい。)

等力くんが途中のMCでライブの企画の趣旨に触れていた時に言っていた
J-POPの再解釈」、このテーマを地で行くような曲でしたね。
これは音源化を楽しみに待とうと思います!

曲が終わり、今度こそ本当に終演。
ゲストで出ていたkokeshiの面々も交えて写真撮影して締めていました。

今回久しぶりに彼らのライブを見たんですけど、印象的だったのが多種多様なお客さんに愛されているバンドだな、と思ったこと。

例えば僕の前にはTHRASH DOMINATION(スラドミ)の出演バンドがズラリとバックプリントに並んでいるTシャツと迷彩の軍パンを履いているマッチョメンがいたり。

横の方にはセンターパートにお洒落な眼鏡とストライプのシャツを着こなしていたハンサムお兄さんがいたり。

あとはメタラーカップルみたいな人たちもいました。うらやましいですね。

全体的に若いお客さんが多かったと思うんですけど、純粋に音楽を愛している層に支持されているような、そんな印象を受けました。
根拠はないけれど、多分そうじゃないかな。オタクが多いバンドはいいぞ。


今回、明日の叙景は80分セット(!?)をやり切ったそうなんですが、最早ライブのクオリティや内容の濃さを見ても国内外の大物と引けを取らないレベルに成長していて本当にすごい。新宿ANTIKNOCKのブッキングイベントに出ていたころからすると考えられないね…。

という痛い古参アピールは置いておいて、新曲も聞けたし、次作が今から本当に楽しみだなと思っています。

「アイランド」は爽やかな夏のイメージだったから、次作は寒々しい冬のアルバム、なんて如何でしょうか。密かに期待しております。

これから気候的にも暑くなってくるし、また今年も彼らを沢山聴きそうです。

彼らも自身のアカウントでライブレポートを更新しているので、そちらも合わせてどうぞ。



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