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集める愉しみ:皮革編

「香木」の他にも好きなことがある。皮革製品。特にバッグには目が無い。この傾向は女性に多いと聞くのだが、思い当たる節がある。私は男性だが、心は女性的な方だと常々思っていて、私たち夫婦はどこか、性別逆転の傾向がある。妻の名誉の為に書き添えておくが、彼女は大変女性的だ……。

皮革と言っても色々あるが、その中でもエキゾチックレザーには強烈な興味がある。クロコダイルやオーストリッチ……これも祖父の影響が多分に含まれている。私は諸事情あって、22歳の時に大学に入学したが、その時の入学祝いはブックカバーだった。「読書の虫」を自負していた祖父らしいプレゼントだった。蛇革をなめして作った、手作りのブックカバー。当時75歳くらいのおじいさんが作ったとは思えないほど派手なものだった。恐らくその色合いも、「若者」に合わせて染色した物だと思う。

入学祝いでiPodを買いたかった私は、その時少しだけ落胆したが、素人ながら祖父が一所懸命時間をかけて作ったブックカバーを使わずにいられなかった。以降、学生時代は常に本を持ち歩き、時間を見つけては読書に励んだ。私も「読書の虫」になった。

祖父はある革職人の方の作品を特に気に入り、自分が身につけるバッグや小物は、すべてその人の作品を身につけていた。その職人とは祖父が亡くなった今でも交流があり、今度は私がその方の作品を購入するなどしている。彼ももう80歳近いと思うが、彼に会うと毎回祖父の話をしてくれる。

革というものは、経年変化も大変楽しい。きちんと手入れすれば、綺麗に表面が照り、自分色になっていく。祖父のバッグを引き継いだ時の色から、だんだんとその色が変化してきている。この自分色を祖父は気に入ってくれるだろうか。

【連載】香木研究所
「敷居が高い」と思われがちの香木・香道ですが、私は単純に香木の香りに魅了され過ぎて、その敷居を感じる間もなく不躾に接してしまったと今さらながら猛省しています。しかし、香木・香道を通じて私と関わっていただいた方々は、皆様素晴らしい人間力をお持ちでした。この連載は若輩者である私にご指導・ご鞭撻下さった諸先輩方、そしてこれから香木に触れることになる方に向けて、これまでの感謝とともに、香木を通じた心の変化を綴っていきたいと考えています。いつの日か、この連載を読まれた方と香木について語り合える日が来たらと夢見ております。
前回の記事:家と香木
【著者】
学生時代に多くの外国を訪問。特にオーストラリアとネパールには並々ならぬ思い入れを持つ。海外での経験を重ねるごとに日本を顧みる機会を得て、約9年前に香木に出会い、一生の友とすることを誓う。その友を知ってほしく日々紹介するものの、伽羅以外を受け付けない妻に孤軍奮闘中。いつの日か好きな香木と香りを通じて知り合った仲間と一緒に、純粋に香木を楽しめる空間を持つことが夢。「香りで繋がりたい」と心底願っている、語学教育総合企業に勤務する35歳。

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