マガジン

  • OKOPEOPLE - お香とわたしの物語

    • 115本

    OKOCROSSING が運営する、香りにまつわる「わたしの物語」を編み集めるプロジェクトです。https://oko-crossing.net/okolife

最近の記事

集める愉しみ:香炉編

香道への興味が高まってくると、あらゆる香道関連の書籍を読み漁った。歴史のある香道には、手に入る書籍とそうでないものとがある。 貴重な文献は、国立国会図書館に行ってコピーして読んだ。古文のような文章も多く、読むのにかなり苦労した。通勤中は小説を読むのが常だったが、当時は香道関連の書籍を読んでいた。自分の勉強のためということもあるが、香道を知る誰かが話しかけてくれないかという下心もあった。生の情報が欲しかったのだ。 香雅堂さんに初めて足を運んだのはその頃だ。その時には、奥様に

    • 集める愉しみ:香木編

      「香木との出会い」については前に書いた。強面からいただいた「木」について、その後にもう少し触れたい。 ピンセット香道を続けているうちに、必然であろうが「香道」にも興味が湧いてきた。こんなにも良い香りがするものが他にもあるのか!手元にある木は、何に分類されるものなの?教えてもらいたい気持ちが強くなっていった。 仕事にかこつけて、強面を訪問。商談は早々に切り上げ、早速香道について話を聞いた。すると、強面は「ボクは香道は分からん」と。ただ、「お前に奪われた香木は名前が附いていて

      • 集める愉しみ:皮革編

        「香木」の他にも好きなことがある。皮革製品。特にバッグには目が無い。この傾向は女性に多いと聞くのだが、思い当たる節がある。私は男性だが、心は女性的な方だと常々思っていて、私たち夫婦はどこか、性別逆転の傾向がある。妻の名誉の為に書き添えておくが、彼女は大変女性的だ……。 皮革と言っても色々あるが、その中でもエキゾチックレザーには強烈な興味がある。クロコダイルやオーストリッチ……これも祖父の影響が多分に含まれている。私は諸事情あって、22歳の時に大学に入学したが、その時の入学祝

        • 家と香木

          特に隠していたつもりはないが、香木が好きだということを特に言わずにいた。 周りに知られたのは結婚式がキッカケだった。会場入り口に、電子香炉と、当時持っていた香木の中で好みのものをすべて展示して、聞香ができるようにしたのである。それが元で、妻の友人には、式の最中に不安な眼差しで「なんか変な木が好きなんですね」と言われた。隣の妻は大笑いするだけで弁明せず。初めて会った妻の友人に必死で説明し、「良いご趣味ですね」とご理解いただいた。夫としての面子は何とか保てた……と信じている。

        集める愉しみ:香炉編

        マガジン

        • OKOPEOPLE - お香とわたしの物語
          115本

        記事

          香木と妻

          2016年に10年以上お付き合いを続けてきた中学校の同級生と結婚した。中学の頃から「私は看護士になる」と宣言してきた妻は、その夢を叶え、現在もその仕事を続けている。誇り高く仕事をし、家事もそつなくこなす妻には本当に頭が上がらないのだが、一つだけ大きな不満があった。 それは、私の大好きな「香木」を「そこら辺に落ちているような木じゃん」と一蹴すること。これに関しては私も黙っていられないと、言い争いを申し込もうと鼻を鳴らすのだが、ふと我に返って手元の香木を見ると、その昂ぶりは冷め

          香木と妻

          祖父母の香りと“去来”

          私は自他ともに認めるおじいちゃん・おばあちゃん子である。大好きだったふたりは、もうこの世にはいない。しかし、今でも私の心の大きな支えである。だから、どんなに仕事が忙しくても、1カ月に必ず1回は墓参りに行く。 祖父母の墓石には、祖父の字で「去来」という文字が書かれている。祖父母とはあれほどたくさん話をしてきたのに、なぜ「去来」なのか知らずじまい。祖父の血を色濃く継いだと親戚中に言われるが、やはりその理由はわからない。 祖父は、昔の関所近くで手広く旅館を営む家の生まれで、幼い

          祖父母の香りと“去来”

          ピンセット香道

          あの時の衝撃は、いつになっても鮮明に思い出せる。本当に良い香りだった。「におい」と「香り」がどう差別化されているかは知らないが、あれは確実に「香り」だった。 どれほど時間が経っただろう。長く陶酔していたかもしれないし、とても短い時間だったかもしれない。とにもかくにも目を開けると強面がニヤニヤしていた。湧き上がってくる疑問はただ一つ。 「な・ん・だ・こ・れ・は??」その疑問を思い切り強面にぶつけた。これが香木? どこで手に入るの? どういう木なの? 極めつけは「それ頂戴!」

          ピンセット香道

          香木への招待

          まさかこれほど愛しく思うものと深い付き合いになるとは、その時は思いもしなかった。今でこそ香木が持つ精神的な、そして経済的な価値は理解しているつもりだが、その時の私には悪魔の誘惑とも言える、あまり良い出会いではなかったかも知れない。 今から9年ほど前の、神楽坂の会員制Barが「香木」との出会いの場だった。もう終電もない深夜、仕事でご一緒させていただいている、高齢の強面に1対1で誘われて入った。映画でしか見たことのない、店が来る人を選ぶような、まさに大人のBar。その圧倒的な雰

          香木への招待