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集める愉しみ:香木編

「香木との出会い」については前に書いた。強面からいただいた「木」について、その後にもう少し触れたい。

ピンセット香道を続けているうちに、必然であろうが「香道」にも興味が湧いてきた。こんなにも良い香りがするものが他にもあるのか!手元にある木は、何に分類されるものなの?教えてもらいたい気持ちが強くなっていった。

仕事にかこつけて、強面を訪問。商談は早々に切り上げ、早速香道について話を聞いた。すると、強面は「ボクは香道は分からん」と。ただ、「お前に奪われた香木は名前が附いていて【若草】という伽羅だ」と教えてくれた。ご存知の方ばかりだろうが、私がピンセットで夜な夜な聞いていた香木は、あの【若草】だった。今考えれば、相当恐れ多いことをしていたものだと猛省する。それは良い香りのはずだ。私の伽羅の基準は【若草】。

恐れ多い聞き方をしたが、誰よりも聞き込んだ自負もある。興味が強すぎて、食べてみたことだって何度もある。私の所感だが、噛んだ時に広がる風味は伽羅そのもの。後味に少しの酸味と苦みが来る。食前の味は後味が違う。甘いのだ。

こんなことをしていると、「香道」というものを嗜んでみたくなる。インターネットで、あらゆるサイトを調べ上げた。どうやらその時住んでいた家の近所にある古美術店で、香木が売られているらしい。早速行った。それまで古美術店など、全く縁がなかったので、入店するまで何度も自転車で店先を行き来した。勇気を振り絞って入店すると、まるで仙人みたいな店主らしき方が出てきた。その時点で「やっぱりまだ僕には早かった…」と感じた。しかし香木に興味があります、教えてくださいと尋ねると、4時間かけて丁寧に教えてくれた。

香道に必要な道具がどういうものなのか、そしてどう使うのか、歴史・流派など。新入社員で小遣いも少ない私には、寸門多羅を1g購入するのが精一杯だったが、帰り際におススメの伽羅をおまけとして分けてくださった。嬉しかった。香道に携わる方は、こんなにも親切なのかと感じた。以降、香道に対する興味も加速して高まっていく。やはり、ピンセット香道は間違っていたのだ。

【連載】香木研究所
「敷居が高い」と思われがちの香木・香道ですが、私は単純に香木の香りに魅了され過ぎて、その敷居を感じる間もなく不躾に接してしまったと今さらながら猛省しています。しかし、香木・香道を通じて私と関わっていただいた方々は、皆様素晴らしい人間力をお持ちでした。この連載は若輩者である私にご指導・ご鞭撻下さった諸先輩方、そしてこれから香木に触れることになる方に向けて、これまでの感謝とともに、香木を通じた心の変化を綴っていきたいと考えています。いつの日か、この連載を読まれた方と香木について語り合える日が来たらと夢見ております。
前回の記事:集める愉しみ:皮革編
【著者】
学生時代に多くの外国を訪問。特にオーストラリアとネパールには並々ならぬ思い入れを持つ。海外での経験を重ねるごとに日本を顧みる機会を得て、約9年前に香木に出会い、一生の友とすることを誓う。その友を知ってほしく日々紹介するものの、伽羅以外を受け付けない妻に孤軍奮闘中。いつの日か好きな香木と香りを通じて知り合った仲間と一緒に、純粋に香木を楽しめる空間を持つことが夢。「香りで繋がりたい」と心底願っている、語学教育総合企業に勤務する35歳。

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