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ウィズコロナ下のダイバーシティ&インクルージョン

昨年、初めて新型コロナの感染者が急増した時、世界各国でロックダウンが見られ、主要なイベントがキャンセルされ、リモートワークがニューノーマルな働き方として推進される等、同時並行で多くのことが取り組まれました。各企業のビジネスリーダーは、これらの取り組みが企業文化に影響を与え、今後のダイバーシティ&インクルージョンを決定づける重要な要素と考え、D&Iの戦略とイニシアチブの再考、更新、および刷新を検討・実践しています。今回はウィズコロナ下のダイバーシティ&インクルージョンのトレンドを紹介したいと思います。

2021年のダイバーシティとインクルージョンのトレンド

2021年のダイバーシティ&インクルージョンの傾向として、以下の10個が挙げられます:
① 進化するリモートワーカー
② 多様なジェンダーのアイデンティティとジェンダー表現
③ 多世代の労働力
④ 職場での無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)の排除
⑤ 体系的な変化に向けた準備
⑥ 多様性、公平性、包括性
⑦ 多様性の専門家の雇用
⑧ 目標の透明性の向上
⑨ 従業員のメンタルヘルス支援
⑩ 形だけの平等主義を超えた施策

① 進化するリモートワーカー

昨年の新型コロナの発生により、企業は在宅勤務モデルを採用せざるを得なくなりました。新型コロナが収束する頃には、従業員は徐々に職場での勤務に戻ってくるでしょうが、リモートワークモデルは、今後も多くの企業で継続されるでしょう。
東京都労働局によると2021年2月時点のリモートワーク普及率は58.7%ですが、8割の企業が今後もテレワーク継続もしくは『ハイブリッド』型勤務体制へ移行を検討しているそうです。
リモートで作業する場合、従業員ごとに生活条件が異なります。例えば、働く女性は家庭と仕事のバランスをとることが期待され、医療施設へのアクセスはインターネット施設や地理的な場所によって異なり、従業員が仕事に集中するための専用の静かなスペースが不足している可能性があります。ビジネスリーダーやマネージャーは、これらのギャップを埋める方法を見つけ出し、リモートワークならではの課題を最小限に抑える必要があります。

② 多様なジェンダーのアイデンティティとジェンダー表現

近年、多様なジェンダーのアイデンティティやジェンダー表現に対する意識が高まっています。海外企業では、ジェンダーニュートラルなトイレを提供する等、包括的な取り組みを採用したり、性転換する従業員の医療補助を行ったり、ノンバイナリージェンダー*1やトランスジェンダーの従業員を差別しない用語を使用することで、全従業員の意識を高めたりする等、活動に最善を尽くしています。

*1 ノンバイナリージェンダーとは、自分の性認識が男女という性別のどちらにもはっきりと当てはまらないという考えを指す。いわゆる「第三の性」と呼ばれるジェンダークィアや、Xジェンダー、ジェンダー・オーサム(Gender awesome)と同じ意味である。例えば「女に生まれたけど自分は男と女どちらの時もある」など、性別を固定しない立場をとる人々はノンバイナリーとされる。

③ 多世代の労働力

現在の労働力の世代構成には、最大5つの異なる世代が含まれます。
・サイレントジェネレーション(1928-45年生まれ)
・団塊の世代(1946-64年生まれ)
・ジェネレーションX(1965-80年生まれ)
・ミレニアル世代またはジェネレーションY(1981-96年生まれ)
・最新世代のZ世代(1997年以降生まれ)
世代毎の違いが、会社にさまざまな人生経験、意見、スキルセットをもたらします。ビジネスリーダーやマネージャーは、各世代の属性と能力を認識することが重要です。リーダーは、あらゆる世代の従業員に対応し、賞賛するさまざまな戦略を使用する必要があります。

④ 職場での無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)の排除

無意識の偏見とは、個人またはグループに対する無意識または固有の偏見や偏見に基づいて、情報を処理し、意思決定を行う傾向を指します。過去の記事でも紹介させていただきましたが、無意識の偏見は、私たちが人々と持つ関係の種類に影響を与え、職場での意思決定の方法を指示します。
さまざまなバックグラウンドや経験を持つ人々と真に包括的な労働力を構築するには、ビジネスリーダーは、これらのバイアスが一貫してチェックされ、最小限に抑えられるようにする必要があります。

⑤ 体系的な変化に向けた準備

昨年は、社会全体の体系的な不公正と欠陥を浮き彫りにする重要なできごとが目撃されました。白人警官に殺害された黒人男性のジョージ・フロイド氏、就寝中に警官に射殺された黒人女性のブレオナ・テイラー氏、そして非常に多くの無実の有色人種の殺害は、人種差別主義者と不当な社会の厳しい現実を暴露しました。
組織は、社会や職場の機能に同様に影響を与える、根本的で切望されている体系的な変化に備える必要があります。ビジネスリーダーは、社内で過小評価されているグループに対する差別がある場合、闘うために最善を尽くす必要があります。職場がすべての従業員にとって安全な場所となるような制度を設定する必要があります。

⑥ 多様性、公平性、包括性

アメリカを中心に、近年はダイバーシティ&インクルージョンではなくDEIに重点が置かれています。DEIは、多様性(Diversity)、公平性(Equity)、包括性(Inclusion)の略です。
職場での公平性とは、会社の各個人の公正で公平なプロセスと結果を指します。公正で公平なプロセスと結果を確実にするために、ビジネスリーダーとマネージャーは、すべての人にとっての課題、障壁、および利点に注意する必要があります。公平性は、すべての人が同じレベルの競争の場から始めるわけではないことから取り入れられている概念です。DEIを実現した職場を構築するには、迅速かつ慎重な行動が重要です。

⑦ 多様性の専門家の雇用

現在、ダイバーシティ&インクルージョンを実現可能な職場を作るというビジョンと使命に取り組んでいる多様性の専門家を採用している企業があります。これらの職務は、人事、採用、リーダーシップの役割と責任を組み合わせたものです。
ダイバーシティの専門家は、ダイバーシティとインクルージョンに関する教育セッションの開催と開催、職場でのインクルーシブな文化の創造、職場でのダイバーシティ&インクルージョンを改善するための新しいアイデアの導入、インクルーシブな言語の使用の応援と推進、管理したり、ハラスメントや職場での差別などに関する苦情対応したりする等、多くのタスクを実行します。

⑧ 目標の透明性の向上

企業の多様性が増しても、必ずしも公平性と一体性が増すとは限りません。ダイバーシティへの取り組みは増えるかもしれませんが、インクルージョンへの取り組みについては必ずしもそうとは限りません。
2021年に増加するダイバーシティ&インクルージョンのトレンドは、企業が透明性のある具体的な成果、長期的な目標、およびダイバーシティ&インクルージョンのイニシアチブを設定することです。これにより、指導的立場にある人々の説明責任が高まり、従業員と上司の間の正直な会話が促進され、アイデアや解決策を共有するように促されます。

⑨ 従業員のメンタルヘルス支援

前例のない世界的なパンデミックとその余波は、多くの人々のメンタルヘルスに打撃を与えました。従業員のメンタルヘルスとウェルビーイング(心身ともに良好な状態)に関する関心度は過去2年間で既に勢いを増していますが、在宅勤務というニューノーマルに順応せざるを得ないことや、新型コロナウイルスに感染するかもしれないという健康への恐怖は、健康なメンタルヘルス維持を妨げる要因となり得るものでした。その結果、多様な従業員のメンタルヘルスをサポートするために意図的な措置を講じる企業が増えています。効果的な制度の導入だけでなく、ビジネスリーダー、マネージャー、同僚がお互いに話し、行動し、共感するといった取り組みも重要です。

⑩ 形だけの平等主義を超えた施策

ダイバーシティ&インクルージョンは、一人の担当者を雇用すること、または男性ばかりの組織や職場に一人の女性を含めること以上のものです。企業は最低限のことだけでなく、充実した施策をしっかりと実施する必要があります。ダイバーシティの利益や政治的な意図が透けて見えるダイバーシティでは、成功につながりません。今こそ、組織がその多様性と包括性の目標と戦略について、より注意深く、意図的になる時です。

ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みは、従業員が高く評価される、または評価されていると感じる機会の増大や、平等で包括的な職場の生成につながります。これは企業の成長を後押します。ダイバーシティ&インクルージョンは、今や「進歩的なアイデア」や概念以上のもので、世界中の組織にとって必須なものになりつつあります。
弊社も従業員の増加に伴い労働力の世代が拡大したり、リモートワークの浸透による「雑談」の減少により、1on1等によるコミュニケーションが活発化したり、これらのトレンドに該当するものがいくつもあります。従業員の満足度が高めていけるよう、これからも継続してダイバーシティ&インクルージョンの取り組みを進めていきたいと思います。

執筆者
小河原 尚代
株式会社Dirbato(ディルバート)
コンサルティンググループ パートナー

大学卒業後、大手SIerに入社。その後、日系総合コンサルティングファーム、外資系金融企業に参画。DX推進、プロジェクトマネジメントを得意テーマとし、DX推進の一環で、IT組織変更も多く支援実績を持つ。組織改革やシンプル化・自動化といった業務改革のマネジメント経験を豊富に有する。クロスボーダーな課題解決が求められるグローバルプロジェクトの責任者も歴任。2020年4月1日株式会社Dirbatoに参画。

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